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第5章 いらっしゃい南国パナマナ
第76話 これぞ本物のおふくろの味
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台所をあさると、芋が出て来た。
特徴的な縦長の芋を数個手に取り、私は慣れた手つきで調理用の小型ナイフで皮をむく。
四歳の小さな手では、小型ナイフも大きな包丁と同じになるのだが、刃の根本を使って芽をくりぬいて、サラサラと皮をむいては、ザルにぶち込んで水につける。
剥き終わってナイフを台にゴトンと置くと、声を掛けられビクリとなった。
「アーリーは器用だね。その歳でそんなに上手にできるはずがないから、きっと前世のお陰だね」
「び、びっくりしたでしゅよ!」
「ふふっ、実はさっきから器用だなと見てたんだ。刃物を持っている時は危ないからと、黙って見てたんだけど、それでもやっぱり万が一があったらダメだから、次からはお兄ちゃんがいる時にしなさい」
「見てたならわかるでしゅ、私は扱いに慣れてるでしゅよ」
「アーリー、するなと言ってない。ただ、小さい体なんだから力も弱い。万が一が怖いから、保護者や大人がいる場所でと言っているんだ」
「でしゅ……」
壺をトンと作業台に置いて、チラリと私が使っていた先ほどの小型ナイフを手に取った。
「自分でしたいのかい? それともお兄ちゃんが代わりにしても?」
「見本みせるでしゅ。ではこうして欲しいでしゅ」
私は一つの芋に手をかざす。
「短冊に切れるといいでしゅ、しゅらしゅしゅしゅ~」
シュシュッと細やかな風の切れる音と共に、ジャガイモは短冊切りに綺麗に形を変えた。
少し目を見張った兄が、うんうんと頷いた後に、小型ナイフを使って同じようにトントンと切っていく。
やはり、兄の手からすると小型なナイフだ。自らの小ささを思い知る。
そして、私の兄は案外器用だ。
「小さくたっていいんでしゅ」
「そうだよ、小さくたっていいんだよ。だから力を使えば疲れるし、小さな体は体力も少ないんだから、もっと私やアールなんかの大人を使いなさい」
「あいでしゅ」
「ゆっくり大人に、なりなさいアーリー」
そうなのだ。この後もまた私の力を使う予定があるのだから、できるだけ体力気力は温存しておかないと、また電池切れになってしまうだろう。
兄が剥いた芋のすべてを、細かくしてくれた。
それを水でさらして、ザルで水切りする。
大きな鍋を探して貰い、そこにたっぷりの水を入れて貰った。
「サラサラーサラサラーかつおぶっしーでしゅでしゅ♪」
ノリノリで鼻歌を歌いながら、茶こしのような小さな網をみつけて、その網に削り節を入れて鍋の中に沈めておく。
けっして温めてはイケナイ。香りが飛んでしまうからだ。
「アーリー、そういえば先ほど手に入れた魚の身は、何かに使うかい?」
「ロコの釣った、イシダイの身でしゅね」
そして兄が、身をホジホジしたやつ。
兄に頼んで、卵を貰ってきてもらう。
近くの戸棚を漁ると、片栗粉を発見した。
ゴリゴリと兄が確保していたイシダイことマオマオのほぐし身を、ねちょねちょになるまですりつぶし、卵を入れて滑らかにした後に、片栗粉と卵で練り上げる。
「そろそろ、いい感じでしゅよ」
「火にかけたらいいんだね」
カツオ節がしっかりと染み出た水を、弱火にかけてもらう。
作った魚のつみれを、ボトボトと落とし入れ、短冊切りの芋も全て入れた。
コポコポと静かに湯の温度があがり、中の具が煮えていく。
外に出たみんなは、まだ帰ってこない。
「醤油!」
「はい、アーリー」
スッと細長い保存容器も、我が国から持ち出してきた貴重な物だ。
醤油は香りづけ程度で、魚のつみれの臭みを取るために、数滴でいい。
この微妙さが大事なのだ。
がやがやと、外に釣りの追加に言っていた面子が戻って来た。
兄と二人で作った鍋を見て、アールが小躍りする。
「っしゃーっ! 飯だ飯!」
「まゆまゆーカツオが二匹とれたよー」
「ありやとでしゅー、ともかく今はちょっと待てぇーい」
今まさに鍋の世界は、クライマックスを迎えているのだ。
真剣な表情の私に、皆がゴクリと唾をのむ。
グツグツと小さな泡をたてる鍋の中には、プカプカと魚のつみれが浮き、芋が底にはゴロゴロと煮込まれている。
透明だった水は、ダシが効いて白濁となり、私は兄に手を差し出した。
「味噌でしゅ」
「どうぞ妹よ」
神聖なる儀式のように、兄はスプーンが添えられた味噌壺を両手で差し出した。
スッとスプーンをとり、味噌を削り節が入っていた網でこして溶いていく。
中の味噌が交じり合い、黄金色に変えていく。
懐かしい匂いが漂い始め、これこそが目指すべき和食の頂点!!
「完成でしゅ! 味噌スープでしゅ!」
「おおおおおーっ!」
こいつら、既にお椀を持って並んでやがる。
どや顔のロコと、スプーンを各自に配給するしゅーさんのコンビネーションは最高だ。
いつのまにか仲良くなったみたいで、男同士というのは本当にわからない。
手を合わせて、皆で一斉に頂きますだ。
「いただきまーす!」
皆があまりの美味しさに、夢中で食べている。
アールが速攻で、おかわりに来て、よそうと無言でまた去っていく。
エバなんか、一口食べる度にむせび泣きしてる。
ちゃっかりロコが連れて来た亀のショージは、お椀から顔をあげなくなった。
皆か皆でそれぞれに、極上の本物味噌スープを心から堪能したのだった。
「まゆまゆ、おいしいね」
「美味しいでしゅけど……」
「けど?」
「白米が欲しいんでしゅよ~っ!」
味噌汁が美味しすぎて悔しい……。
特徴的な縦長の芋を数個手に取り、私は慣れた手つきで調理用の小型ナイフで皮をむく。
四歳の小さな手では、小型ナイフも大きな包丁と同じになるのだが、刃の根本を使って芽をくりぬいて、サラサラと皮をむいては、ザルにぶち込んで水につける。
剥き終わってナイフを台にゴトンと置くと、声を掛けられビクリとなった。
「アーリーは器用だね。その歳でそんなに上手にできるはずがないから、きっと前世のお陰だね」
「び、びっくりしたでしゅよ!」
「ふふっ、実はさっきから器用だなと見てたんだ。刃物を持っている時は危ないからと、黙って見てたんだけど、それでもやっぱり万が一があったらダメだから、次からはお兄ちゃんがいる時にしなさい」
「見てたならわかるでしゅ、私は扱いに慣れてるでしゅよ」
「アーリー、するなと言ってない。ただ、小さい体なんだから力も弱い。万が一が怖いから、保護者や大人がいる場所でと言っているんだ」
「でしゅ……」
壺をトンと作業台に置いて、チラリと私が使っていた先ほどの小型ナイフを手に取った。
「自分でしたいのかい? それともお兄ちゃんが代わりにしても?」
「見本みせるでしゅ。ではこうして欲しいでしゅ」
私は一つの芋に手をかざす。
「短冊に切れるといいでしゅ、しゅらしゅしゅしゅ~」
シュシュッと細やかな風の切れる音と共に、ジャガイモは短冊切りに綺麗に形を変えた。
少し目を見張った兄が、うんうんと頷いた後に、小型ナイフを使って同じようにトントンと切っていく。
やはり、兄の手からすると小型なナイフだ。自らの小ささを思い知る。
そして、私の兄は案外器用だ。
「小さくたっていいんでしゅ」
「そうだよ、小さくたっていいんだよ。だから力を使えば疲れるし、小さな体は体力も少ないんだから、もっと私やアールなんかの大人を使いなさい」
「あいでしゅ」
「ゆっくり大人に、なりなさいアーリー」
そうなのだ。この後もまた私の力を使う予定があるのだから、できるだけ体力気力は温存しておかないと、また電池切れになってしまうだろう。
兄が剥いた芋のすべてを、細かくしてくれた。
それを水でさらして、ザルで水切りする。
大きな鍋を探して貰い、そこにたっぷりの水を入れて貰った。
「サラサラーサラサラーかつおぶっしーでしゅでしゅ♪」
ノリノリで鼻歌を歌いながら、茶こしのような小さな網をみつけて、その網に削り節を入れて鍋の中に沈めておく。
けっして温めてはイケナイ。香りが飛んでしまうからだ。
「アーリー、そういえば先ほど手に入れた魚の身は、何かに使うかい?」
「ロコの釣った、イシダイの身でしゅね」
そして兄が、身をホジホジしたやつ。
兄に頼んで、卵を貰ってきてもらう。
近くの戸棚を漁ると、片栗粉を発見した。
ゴリゴリと兄が確保していたイシダイことマオマオのほぐし身を、ねちょねちょになるまですりつぶし、卵を入れて滑らかにした後に、片栗粉と卵で練り上げる。
「そろそろ、いい感じでしゅよ」
「火にかけたらいいんだね」
カツオ節がしっかりと染み出た水を、弱火にかけてもらう。
作った魚のつみれを、ボトボトと落とし入れ、短冊切りの芋も全て入れた。
コポコポと静かに湯の温度があがり、中の具が煮えていく。
外に出たみんなは、まだ帰ってこない。
「醤油!」
「はい、アーリー」
スッと細長い保存容器も、我が国から持ち出してきた貴重な物だ。
醤油は香りづけ程度で、魚のつみれの臭みを取るために、数滴でいい。
この微妙さが大事なのだ。
がやがやと、外に釣りの追加に言っていた面子が戻って来た。
兄と二人で作った鍋を見て、アールが小躍りする。
「っしゃーっ! 飯だ飯!」
「まゆまゆーカツオが二匹とれたよー」
「ありやとでしゅー、ともかく今はちょっと待てぇーい」
今まさに鍋の世界は、クライマックスを迎えているのだ。
真剣な表情の私に、皆がゴクリと唾をのむ。
グツグツと小さな泡をたてる鍋の中には、プカプカと魚のつみれが浮き、芋が底にはゴロゴロと煮込まれている。
透明だった水は、ダシが効いて白濁となり、私は兄に手を差し出した。
「味噌でしゅ」
「どうぞ妹よ」
神聖なる儀式のように、兄はスプーンが添えられた味噌壺を両手で差し出した。
スッとスプーンをとり、味噌を削り節が入っていた網でこして溶いていく。
中の味噌が交じり合い、黄金色に変えていく。
懐かしい匂いが漂い始め、これこそが目指すべき和食の頂点!!
「完成でしゅ! 味噌スープでしゅ!」
「おおおおおーっ!」
こいつら、既にお椀を持って並んでやがる。
どや顔のロコと、スプーンを各自に配給するしゅーさんのコンビネーションは最高だ。
いつのまにか仲良くなったみたいで、男同士というのは本当にわからない。
手を合わせて、皆で一斉に頂きますだ。
「いただきまーす!」
皆があまりの美味しさに、夢中で食べている。
アールが速攻で、おかわりに来て、よそうと無言でまた去っていく。
エバなんか、一口食べる度にむせび泣きしてる。
ちゃっかりロコが連れて来た亀のショージは、お椀から顔をあげなくなった。
皆か皆でそれぞれに、極上の本物味噌スープを心から堪能したのだった。
「まゆまゆ、おいしいね」
「美味しいでしゅけど……」
「けど?」
「白米が欲しいんでしゅよ~っ!」
味噌汁が美味しすぎて悔しい……。
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