転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第9章 魔界と聖女

第122話 ドラちゃん、お手

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「ふむ、確かにお前ならば……ふむふむ、色も似ているし」
「色ってなんでしゅか?」
「金色の光だ。お前は魂まで染まっているな」
「聖女もそうなんでしゅか?」
「かつてはな。今はもう、300年ほど前から確実に漆黒に染まっていっている」

 竜が牙を見せた。

「このまま人の世界を破壊するは良し。それに伴って、再びあの世界に我らが降り立つもよし。だが、あの女の破壊の衝動は、最終的には全てを飲み込むことになるだろう。その時は、我が今度こそあの女の息の根を止めるつもりであったが……ふむふむ」
「色々、考えてたんでしゅねぇ」
「そら、その竜がもともとの魔界の主やしな」

 ずっと黙っていたデブの言葉で、皆が存在を思い出す。
 竜は口から、小さな煙を吐き出しながら、首をあげた。

「お前は確か……邪魔をするなら、今ここでお前を……」
「ワイも覚悟のうえで帰ってきてまんねん」

 デブは私たちに土下座した。

「最後にもう一回だけ、馬鹿な事をたくらむなと説得させて欲しいんや」

 暑苦しいジャングルみたいな湿気の中で、暑苦しいデブが暑苦しい事をしている。
 頭を地べたにすりつけて懇願するが、誰よりも先に竜が動いた。

「それでダメだった時は、どうするつもりだ」

 デブ……ゼンはガクガクと震えて、ゆっくりと顔をあげた。
 その答えは既に決めていたと、彼の目が語る。

「そん時は、命をかけて、あの子の責任はワイがとる」

 ゼンの目から光が消える。迷うことなく、この男は魔界の生き物なのだ。
 もう人とは遠い、暗い闇を抱えた生き物は、どう責任をとるつもりなのか。
 ……まあ、馬鹿が馬鹿な事を考えても、ロクな事にならないんでしゅけどね。

 後ろからデブの頭をガツーンと叩く。

「だから、答えなんてあとからついてくるでしゅ!」

 そして今度は竜を指さした。

「ドラちゃんも、嫌みな事いってないで、とっとと近道を教えろでしゅ」
「ドラ……我のことか? 近道? あの女の城か?」
「でしゅ!」

 お前はともかく、私は腹減ってるんだよ。
 とっとと次に進んで、ご飯食べたい。

「ていうか、背中乗りたい」
「「「まてまてまてーっ!!」」」

 だって食べれないなら、ほかの使い道考えたいじゃん?
 とりあえず、乗り物活用しようよ、楽そうだし。

「飛べないんでしゅか? 城までひとっ飛び出来ないんでしゅか?」
「我に言っておるのか?」

 コクコクコクと高速でうなずいてみた。
 周囲は固まっているが、私は追撃の手を休めない。

「運べでしゅ! 背中乗りたいでしゅ! ダメなら願いのかなう玉よこせでしゅ」
「お前は何を言っているんだ?」
「乗りたいでしゅ、楽したいでしゅ!」
「どうして我が?」
「ごはんあげたでしゅよ!」

 だからいう事を聞けよと、ビシッと指摘してやった。
 タダ飯じゃねーんだよ、きっちりお代は払って貰うぜ。

「タダより高いものはないでしゅ! アタチをのぞいて!」

 私はいいんだよ、私は。
 えっへんと胸を張ると、なぜか私の愉快な手下どもが、大きなため息をついていた。

「アーリー、可愛いけれど、もう少し人に対して物の頼み方とか……」
「竜でしゅ」
「うっ」
「人じゃないでしゅ」

 説教なんかきくもんか。

「おっきいからこそ、いいんでしゅ!」
「謙虚な気持ちを大事にしなさい!」

 珍しく当たり前の事をいう兄は、スルーだスルー。
 竜に乗りたい、ただそれだけだ。

「ドラゴンステーキはあきらめたでしゅ。代わりに乗せろいっ!」

 黙って聞いていた竜は、上を向いて大きく羽ばたいた。
 大きな羽が風のうねりを産む。

 ゴォオオオーッ!
 巨大な影が私たちの上に覆いかぶさった。
 そして天から、再び響き渡る大音量の笑い声が空を引き裂いた。

「ガハハァァーッ!! 本当に、お前は本当に面白い生き物だ!」

 その巨体をドサリと地におろした衝撃で、大きな地響きと砂煙が立ちのぼる。
 長い首をドタンと地につけ、私たちの前にその大きな口元を向けた。

「いいだろう。乗せていってやる」
「やったでしゅよーっ!」

 嬉しいダンスをクルクル踊る私と、やっと我に返った手下どもが頭を抱えた。
 私は嬉しくて、竜の顔にトタタと走っていく。

「おいこらっ!」
「待ちなさい!」

 兄とアールが止めるのなんざ聞く耳持たず、私は竜の鼻先をいい子いい子してやる。

「よちよち忠誠を誓うといいでしゅよ」
「誰に従う気もないが、お前ならあの女をなんとかしてくれる気がする」
「その為に来たでしゅよ」

 アールがヒョイと私を背後からつまんで、自らの肩に担いだ。

「それで、連れて行ってくれるのか?」

 竜は巨体を震わせて笑う。

「その小さき金色の者は興味深い。初対面で我に肉を要求したり、名づけたり……」
「あの、その……うちの妹が申し訳ない」

 兄が腰を90度まげて謝罪していた。

「さあ乗れ、我の気がかわらぬうちに。ただし人を乗せるなど初めてだ。風の抵抗は魔力で消してやるが、きちんとつかまっていよ」
「感謝する」

 意外と高さのある竜の鼻先から、皆でよじ登っていく。
 ただし、デブは身が重くってジタバタしていたので、アールと兄がひっぱりあげていた。

「ゼェハァ……すんまへん」
「ともかく行くでしゅ! ドラちゃんレッツラ・ゴー!」
「我に名をつける意味を理解していないのだな、ガーッハッハッハ!!」

 笑い上戸の竜は羽を羽ばたかせて、周囲の緑をなぎ倒しながらグォンと空に飛び上がった。
 グングンと景色が曇天の空に向かっていった。
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