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第八話
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「弱観測か」
椿は、ぽつりと呟く。
おれはくくっと、喉の奥で笑う。
「そう、負の存在確率に落ち込んだ存在を、可視化することができる。ここではね」
椿の目が、少し細められた。
「場の性質が、狂ったということか」
おれは、頷く。
「結局のところ人間の頭の中と量子コンピュータの中でおきているのは、よく似たことといってもいいんだ。つまりはこういう事だ。どちらも量子的重なり合い状態が存在し、そこから収縮することで思考を行う」
椿は片方の眉をあげる。さっさと話をすすめろということか。まあ、そうしよう。
「あんただって、シュレディンガーのニアダイキャットくらい知ってるだろう。量子的重なり合いとは、つまり死んでいる猫と生きている猫が重なり合っている状態。収縮するというのは、生か死が決定されるということ。だが決定されたときに失われた猫は、消え去ったのではなく負の存在確率に落ち込んだとういことだ」
「単純化しすぎた説明だが、いいたいことは判る」
椿は薄く笑った。
「あんたの恋人、斉木美奈子は負の存在確率となった側のシュレディンガーの猫というわけだな」
「そうだ。量子的重なり合いから収縮へ向かうには、ある力が介在する。その原理は不明だけれど、某かの力が介在するのは間違いない。カオスから秩序へ向かう複雑系として表象されるような力。エランヴィタールとでも喩えるしかないような」
椿は笑った。
「そんな喩えじゃ、ベルクソンが泣くぞ」
「泣かしとけ。おれたちの相手にしているは、哲学者ではなく悪魔だ。エランヴィタールを食い尽くし、量子的重なり合いからの収縮を疎外する悪魔」
「量子コンピュータも、悪魔に食われたというのか」
「そうだ」
おれは椿の右手を見る。
「で、頼んだものはできてるよな」
椿は頷くと、アタッシュケースを開いて見せる。そこに収められては、ノートパソコンだ。
「心霊的なロジックを持ったワクチン。私にしても初めて作ったものだ。保証はできないが」
おれはノートパソコンを起動すると、ソースコードをざっとチェックする。
「十分だ」
椿は、ぽつりと呟く。
おれはくくっと、喉の奥で笑う。
「そう、負の存在確率に落ち込んだ存在を、可視化することができる。ここではね」
椿の目が、少し細められた。
「場の性質が、狂ったということか」
おれは、頷く。
「結局のところ人間の頭の中と量子コンピュータの中でおきているのは、よく似たことといってもいいんだ。つまりはこういう事だ。どちらも量子的重なり合い状態が存在し、そこから収縮することで思考を行う」
椿は片方の眉をあげる。さっさと話をすすめろということか。まあ、そうしよう。
「あんただって、シュレディンガーのニアダイキャットくらい知ってるだろう。量子的重なり合いとは、つまり死んでいる猫と生きている猫が重なり合っている状態。収縮するというのは、生か死が決定されるということ。だが決定されたときに失われた猫は、消え去ったのではなく負の存在確率に落ち込んだとういことだ」
「単純化しすぎた説明だが、いいたいことは判る」
椿は薄く笑った。
「あんたの恋人、斉木美奈子は負の存在確率となった側のシュレディンガーの猫というわけだな」
「そうだ。量子的重なり合いから収縮へ向かうには、ある力が介在する。その原理は不明だけれど、某かの力が介在するのは間違いない。カオスから秩序へ向かう複雑系として表象されるような力。エランヴィタールとでも喩えるしかないような」
椿は笑った。
「そんな喩えじゃ、ベルクソンが泣くぞ」
「泣かしとけ。おれたちの相手にしているは、哲学者ではなく悪魔だ。エランヴィタールを食い尽くし、量子的重なり合いからの収縮を疎外する悪魔」
「量子コンピュータも、悪魔に食われたというのか」
「そうだ」
おれは椿の右手を見る。
「で、頼んだものはできてるよな」
椿は頷くと、アタッシュケースを開いて見せる。そこに収められては、ノートパソコンだ。
「心霊的なロジックを持ったワクチン。私にしても初めて作ったものだ。保証はできないが」
おれはノートパソコンを起動すると、ソースコードをざっとチェックする。
「十分だ」
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