12 / 12
第十二話
しおりを挟む
ジゼル女王は、ライゴールに伝わる伝説の女王だ。
自ら先頭に立ちライゴール兵を率いて、蛮族の軍勢を蹴散らしたと伝えられる。
最後は、ダンジョンで消息を絶ったらしい。魔神と刺し違えたとも聞く。
多分。
リリベッドがポーションを使ったときに思い描いたのは、ジゼル女王だろう。
やったね、リリベッド。
この称賛は、あなたのためのものだ。
わたしは顔をあげ、改めて旦那様を見つめる。
「もうそろそろ、服を着させてもらえませんか?」
旦那様は、落ち着いた顔になり満足気に頷く。
金髪に碧眼で玲瓏と輝く白皙の顔を、貴族らしい気品に満ちた笑みで満たして頷く。
餓鬼みたいに爆笑していたひととは、別人のようだ。
その落差に、わたしはまた頬を染めてしまう。
「無茶を言って、すまなかった。服を着てくれ」
そう言うと、旦那様は腰を降ろす。
わたしはチュニックやサーコートを身につけると、旦那様の前に座る。
「肉が焼けましてよ。どうぞ、お食べになって」
旦那様は頷くと、巨大な骨付き肉の骨の部分を握って齧り付く。
その目が、キラリと輝いた。
「おお、凄えな。滅茶苦茶に旨い」
大げさなとは思うが、じっくりとスパイスとハーブを染み込ませた新鮮な肉だ。
何よりブリスケットのレシピを参考にして、スパイスを配合してる。
まずくは無い、はず。
「ニコライ隊長も、どうぞ」
わたしに促され、傭兵隊長は困った顔を旦那様に向ける。
「おう、ニコライ。喰ってみろ、感動するぞ」
ニコライ隊長は困惑しながらも、肉を手に取ってくれた。
「なるほどこれは、結構手がこんでる」
いや、おおげさだし、と思うがまあ、気を使って褒めてくれたんだと思う。
そうして肉を楽しんでいただいた後に、レモングラスを使ったハーブティーを空間収納から出して旦那様とニコライ隊長の前に並べる。
二人とも三分の一も食べられなかったみたいだが、満足げにハーブティーを啜った。
「それで、旦那様。わたくし、思いますの」
旦那様は、問いかける目でわたしを見る。
「旦那様は、多分わたしより弱いですよね」
ニコライ隊長が苦笑するが、旦那様は真面目に頷く。
「おまえは確か、血斧のリリィという二つ名のあるダンジョン探索者だったな」
むう、とわたしは眉間に皺をよせる。
「その呼び名は可愛くないので、気に入りません」
「では、リリィと呼ばしてもらおう。リリィ、おまえはダンジョンでオーガと殴り合って勝ったよな」
わたしは、おほほと笑う。
「ひとがそんなこと、できるわけ無いですわ」
旦那様は、首を横に振る。
「バフと身体強化ポーションで、できるだろ。しかし」
旦那様は、真面目に語る。
「ベースとなる身体が、しっかりしてないといくらバフをかけても無理だ。おれでは、駄目だな」
自ら先頭に立ちライゴール兵を率いて、蛮族の軍勢を蹴散らしたと伝えられる。
最後は、ダンジョンで消息を絶ったらしい。魔神と刺し違えたとも聞く。
多分。
リリベッドがポーションを使ったときに思い描いたのは、ジゼル女王だろう。
やったね、リリベッド。
この称賛は、あなたのためのものだ。
わたしは顔をあげ、改めて旦那様を見つめる。
「もうそろそろ、服を着させてもらえませんか?」
旦那様は、落ち着いた顔になり満足気に頷く。
金髪に碧眼で玲瓏と輝く白皙の顔を、貴族らしい気品に満ちた笑みで満たして頷く。
餓鬼みたいに爆笑していたひととは、別人のようだ。
その落差に、わたしはまた頬を染めてしまう。
「無茶を言って、すまなかった。服を着てくれ」
そう言うと、旦那様は腰を降ろす。
わたしはチュニックやサーコートを身につけると、旦那様の前に座る。
「肉が焼けましてよ。どうぞ、お食べになって」
旦那様は頷くと、巨大な骨付き肉の骨の部分を握って齧り付く。
その目が、キラリと輝いた。
「おお、凄えな。滅茶苦茶に旨い」
大げさなとは思うが、じっくりとスパイスとハーブを染み込ませた新鮮な肉だ。
何よりブリスケットのレシピを参考にして、スパイスを配合してる。
まずくは無い、はず。
「ニコライ隊長も、どうぞ」
わたしに促され、傭兵隊長は困った顔を旦那様に向ける。
「おう、ニコライ。喰ってみろ、感動するぞ」
ニコライ隊長は困惑しながらも、肉を手に取ってくれた。
「なるほどこれは、結構手がこんでる」
いや、おおげさだし、と思うがまあ、気を使って褒めてくれたんだと思う。
そうして肉を楽しんでいただいた後に、レモングラスを使ったハーブティーを空間収納から出して旦那様とニコライ隊長の前に並べる。
二人とも三分の一も食べられなかったみたいだが、満足げにハーブティーを啜った。
「それで、旦那様。わたくし、思いますの」
旦那様は、問いかける目でわたしを見る。
「旦那様は、多分わたしより弱いですよね」
ニコライ隊長が苦笑するが、旦那様は真面目に頷く。
「おまえは確か、血斧のリリィという二つ名のあるダンジョン探索者だったな」
むう、とわたしは眉間に皺をよせる。
「その呼び名は可愛くないので、気に入りません」
「では、リリィと呼ばしてもらおう。リリィ、おまえはダンジョンでオーガと殴り合って勝ったよな」
わたしは、おほほと笑う。
「ひとがそんなこと、できるわけ無いですわ」
旦那様は、首を横に振る。
「バフと身体強化ポーションで、できるだろ。しかし」
旦那様は、真面目に語る。
「ベースとなる身体が、しっかりしてないといくらバフをかけても無理だ。おれでは、駄目だな」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
世話焼き幼馴染と離れるのが辛いので自分から離れることにしました
小村辰馬
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、エリス・カーマインに転生した。
幼馴染であるアーロンの傍にに居続けると、追放エンドを迎えてしまうのに、原作では俺様だった彼の世話焼きな一面を開花させてしまい、居心地の良い彼のそばを離れるのが辛くなってしまう。
ならば彼の代わりに男友達を作ろうと画策するがーー
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
私に義弟が出来ました。
杏仁豆腐
恋愛
優希は一人っ子で母を5年前に亡くしていた。そんな時父が新しい再婚相手を見つけて結婚してしまう。しかもその相手にも子供がいたのだった。望まない義弟が出来てしまった。その義弟が私にいつもちょっかいを掛けてきて本当にうざいんだけど……。らぶらぶあまあまきゅんきゅんな短編です。宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる