空を飛ぶ少女、引きこもりの少年、破壊を求めるおとこ

ルサルカ

文字の大きさ
17 / 77

第17話「彼女自身よく判っていないことを、話そうとしている」【アキオ】

しおりを挟む
ナツは、暫く沈黙した。

僕は、何も言わずにナツを見つめる。

ナツはやがて、照れたような笑みを浮かべた。

「何も憶えてないのよね、それが」

「3年前の記憶がないの?」

「いやいや」

ナツは、目の前で手をひらひらさせる。

「むしろ変わらぬ日常が続いていた記憶が、くっきりとあるの」

「うーん」

僕は、腕組みをする。

「もしかすると、君のその日常というのは、捏造され頭に無理やりインプットされた偽りの日常なんじゃないの?」

ナツは、大きく口を開けて笑う。

「そんなSF小説みたいなこと、あるわけないじゃん」

「えーと」

僕は、笑い声をあげるナツをじっと見つめる。

「ひとがF14の形をした飛行機に変形するのと、どっちがありえないと思う?」

「はあん?」

ナツは、なぜな不敵な笑いを見せる。

「じゃあさ、わたしはどこかの実験室から脱走した改造人間で、過去の記憶を組織の手によって改編されているってこと?」

「まあ、その可能性は否定できない」

「メイド・イン・オッカムの剃刀を出したほうがいいと思うけど、わたしの言ってることを検証する方法がひとつあるわね」

ナツは、腰に手をあて相変わらず自信たっぷりの表情で僕をみている。

「どうするの?」

ナツは、勝利宣言をする口調で言った。

「わたし、5年前からずっと同じ職場で働いているの」

ほう、と僕が口にしたのをみてナツはにやりとした。

「もし、わたしの記憶が捏造されていれば、その職場のひとはわたしの妄想の中に住むひとということになるよね」

「まあ、そうだね」

ナツは、大きく頷く。

「アキオがわたしの職場にきて、確かめればいいんじゃないかな。妄想かどうかを」

なるほどと僕が頷いた時、急にナツは遠くを見る目になった。

それは突然ナツが、見知らぬひとと入れ替わったのではないかと思うほど、こころがどこかにいってしまった表情だ。

数十秒その状態が続き僕が不安のあまり声をかけようとした時、ナツが突然もとの表情に戻り話をはじめる。

「そういうえば、丁度3年前くらいからはじまったことが、ひとつあるの」

「へぇ」

ナツは、不思議に謎めいた表情をしている。

多分、彼女自身よく判っていないことを、話そうとしているのだ。

僕は、自分の鼓動が少しはやくなるのを感じる。

「3年前から見続けている夢があってね」

「夢?」

僕は、少しがっかりしたような安堵したような感じを味わった。

「どんな夢なの?」

「うーん、少しばかり奇妙なんだけれど、ひとつの世界、同じ登場人物が出つづける連続した夢なんだよね」

そうしてナツは、夢の話を語りはじめた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...