空を飛ぶ少女、引きこもりの少年、破壊を求めるおとこ

ルサルカ

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第19話「ここにはわたしにとって、とても大切なものがある」【ナツ】

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夜空はあまりに美しく、そのことでわたしはそれが現実のものではないことに気づいたの。

七色に輝く鉱石の結晶を無造作に散りばめた煌めきに、夜空は彩られている。

けれど、それらの乱雑に撒き散らされた光の破片は、精密機械の持つ正確さで動いていることがわたしには判る。

なんだかわたし、涙をこぼしそう。

そんな気持ちで、わたしは夜空を見ている。

そこがどこかって言われても、判んないのよね。

まあ、夢の中の話だからしょうがない。

全く知らない場所といえばそうなんだけれど、こころの奥底ではとても馴染み深い場所だと思ってる。

きっと生まれる前に、住んでいた場所なんだろうね。

そんなふうにも、思う。

豪華な色彩が乱舞する夜空の下には、黒い海が広がっているの。

海は夜空と違って、静寂の中に沈んでる。

けれど、それは波をおこして白い波紋を定間隔で黒い海に描く。

わたしは、それって呼吸みたいだと思う。

その場所全体が、生命の中のようだともわたしは思ってた。

その場所にいたのは、わたしひとりかっていうと、そうじゃなくて。

わたしの他に、ふたりのひとがいた。

ひとりは幼いおんなの子。

まだようやく、幼児から子供になったていうくらいの年齢。

その子の肌は、目の前にある海と同じくらいに黒い。

その子の髪と瞳は、夜明けの空が持つ金色をしていた。

わたしは、そのおんなの子をよく知っている。

なんでかって聞かれても、よく判らないけれど。

でも、本当に自分の身体の一部じゃないかと思うくらいの親密さを感じていたし、こころと身体を溶け合わせたいと思うような愛おしさを感じていたの。

名前だって、ちゃんと知っている。

その子の名前は、フユカといった。

もうひとり、おとこのひとがいる。

そのひとは、少しばかり奇妙な姿をしていた。

白い毛皮で全身を、被われている。

なんだか長毛種の犬を連想させるのだけれど、獣とは思えない知的な雰囲気と気品を纏っていた。

まあ、なんだか哲学者か老賢者って感じかな。

わたしは、そのひとのこともよく知っている。

そのひとといると、泉から水を飲むようにこころの渇きが癒されていく感じがあった。

ここにはわたしにとって、とても大切なものがある。

そう、思う。

おとこのひとは、海の遠くを指差す。

漆黒の海面の、とても遠いところ。

赤い光が、瞬いていた。


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