26 / 77
第26話「まさか、記憶喪失だとは思わなかったよ」【アキオ】
しおりを挟む
「いやあ、わたし忘れっぽいんだけどさ」
僕は、ナツの職場をたずねたその夜、またナツの住むビルの屋上に来ていた。
夜空に星々が瞬く下で、僕らはパイプ椅子に座りコーラを飲みながら話しあう。
「まさか、記憶喪失だとは思わなかったよ」
普通は一年分の記憶が飛んでいると知れば、不安になるだろうと思う。
けれど、ナツは殊更に気楽な調子を装っている。
多分不安なんだろうとは思うけれど、僕の前では強がってみせているのかと思う。
しかし、ただの天然みたいに思える笑顔を、見せていた。
僕には、ナツの真意は判らない。
しかし、変に考えても仕方がないと思っているのは確かなようだ。
「多分その記憶を失った一年で、何かがあったのは間違いないけれど」
僕はフライトジャケットのポケットに手を突っ込み、そこにいれていたガバーのナイフを弄びながらゆっくりと考えた。
僕は、手詰まりになったような気がしている。
ナツは友達が、どうやら皆無といっていい。
両親や親戚も、いないようだ。
引きこもりに限りなく近い生活なので、消息を絶っても気にするひとがいない。
ただ、記憶には残っていないがおそらくその一年の大半は、普通に生活していたと思う。
記憶を失うような出来事があったのは、数日程度なはずだ。
ナツがその一年生活していた痕跡は、あちこちに残ってはいる。
銀行の通帳やクレジットカードに使用された形跡が、残っていた。
ネットで履歴を検索すれば、確認できる。
特別な使い方は、されていない。
「明日、役所に行ってみようか」
僕の言葉に、ナツはきょとんとした顔になる。
「なんで?」
「結婚してたなら、配偶者の記録が残ってるでしょ」
ナツは、ぽんと手を打つ。
「なるほどね」
けれど僕はそれは望み薄だと、思っている。
なんとなく、籍は入れていないような気がした。
突然、ナツが不思議そうな顔をする。
眼差しが、遠くを見るふうになり夜空を見ていた。
僕は、ナツの目線を追って夜空を見る。
暗い空に溶け込むように、とても奇妙な形をしたヘリコプターが飛んでいた。
「なんだ、あれは」
僕は、思わず呟いていた。
オフブラックに塗装されているらしいボディは、平面を組み合わせて組み上げられている。
立方体を変形させたような、独特なスタイルを持つヘリだ。
そして、驚くほど静かにホバリングしている。
結構近いところを飛んでいるはずなのに、ローターが風を起こす音が聞こえなかった。
僕は、ナツの職場をたずねたその夜、またナツの住むビルの屋上に来ていた。
夜空に星々が瞬く下で、僕らはパイプ椅子に座りコーラを飲みながら話しあう。
「まさか、記憶喪失だとは思わなかったよ」
普通は一年分の記憶が飛んでいると知れば、不安になるだろうと思う。
けれど、ナツは殊更に気楽な調子を装っている。
多分不安なんだろうとは思うけれど、僕の前では強がってみせているのかと思う。
しかし、ただの天然みたいに思える笑顔を、見せていた。
僕には、ナツの真意は判らない。
しかし、変に考えても仕方がないと思っているのは確かなようだ。
「多分その記憶を失った一年で、何かがあったのは間違いないけれど」
僕はフライトジャケットのポケットに手を突っ込み、そこにいれていたガバーのナイフを弄びながらゆっくりと考えた。
僕は、手詰まりになったような気がしている。
ナツは友達が、どうやら皆無といっていい。
両親や親戚も、いないようだ。
引きこもりに限りなく近い生活なので、消息を絶っても気にするひとがいない。
ただ、記憶には残っていないがおそらくその一年の大半は、普通に生活していたと思う。
記憶を失うような出来事があったのは、数日程度なはずだ。
ナツがその一年生活していた痕跡は、あちこちに残ってはいる。
銀行の通帳やクレジットカードに使用された形跡が、残っていた。
ネットで履歴を検索すれば、確認できる。
特別な使い方は、されていない。
「明日、役所に行ってみようか」
僕の言葉に、ナツはきょとんとした顔になる。
「なんで?」
「結婚してたなら、配偶者の記録が残ってるでしょ」
ナツは、ぽんと手を打つ。
「なるほどね」
けれど僕はそれは望み薄だと、思っている。
なんとなく、籍は入れていないような気がした。
突然、ナツが不思議そうな顔をする。
眼差しが、遠くを見るふうになり夜空を見ていた。
僕は、ナツの目線を追って夜空を見る。
暗い空に溶け込むように、とても奇妙な形をしたヘリコプターが飛んでいた。
「なんだ、あれは」
僕は、思わず呟いていた。
オフブラックに塗装されているらしいボディは、平面を組み合わせて組み上げられている。
立方体を変形させたような、独特なスタイルを持つヘリだ。
そして、驚くほど静かにホバリングしている。
結構近いところを飛んでいるはずなのに、ローターが風を起こす音が聞こえなかった。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる