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第53話「抱き合ったまま、世界の終わりを迎える」【ナツ】
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わたしとフユカは、波打ち際に座っている。
ふたりの、世界。
世界には、ふたりだけがいる。
それはまるで、蜜の中に閉じ込められたかのような、甘やかな時間なの。
わたしとフユカは、互いの腰に手をまわしあう。
フユカの黒い肌は、ひやりと冷たいようで内にそっと燃える熱を秘めている。
わたしは、互いの肌が溶け合ってしまえばいいと思う。
ふたりが、ひとつになってしまえばいいと思うの。
フユカは、その考えを読んだように、わたしに向かって穏やかに笑いかけてくれる。
きっと、フユカも同じ考え。
このまま、世界が終わりを迎えてしまってもいい。
そんなふうに、思う。
そして、世界はさっきまでより、さらに不吉な様相を深めつつあった。
足元に打ち寄せる波は、もう蒼ざめた感じじゃない。
いつの間にか、血の赤を潜ませてる。
それが、よく判った。
そして、空。
ああ、なんて雲なのかしら。
それは、黒い岩盤が空に浮いている様に見えた。
その重苦しい黒雲は、赤い亀裂が血管のように縦横へ走っている。
中で焔が、燃え上がっていた。
苦しみ、なのかしら。
哀しみ、なのかしら。
そんな、張り裂けそうな情念が焔となって、重苦しい黒雲に閉じ込められている。
わたしは、そう思う。
その雲は、生き物の動きを見せていた。
空全体に、その支配を伸ばしていってる。
黒い雨がふっているけれど、それは実は灰であることがわたしには判った。
ああ、あれはもうすぐこの世界を覆ってしまうのね。
でも、いい。
わたしはフユカとこうして抱き合ったまま、世界の終わりを迎えるの。
それでいいから。
それで十分だから。
そうしてわたしとフユカは、互いに笑みを交わす。
そう、世界が終わるまで、わたしたちはこうして抱き合っている。
きっと、そうなると思う。
何か大切なことを忘れていることを、わたしは知っていた。
思い出さなくちゃいけない、大事なこと。
でも、このふたりでいる時間の甘やかさは、全てを忘却へ溶かし込んでしまう。
それに抗うなんて、わたしには考えもつかなかった。
ふたりの、世界。
世界には、ふたりだけがいる。
それはまるで、蜜の中に閉じ込められたかのような、甘やかな時間なの。
わたしとフユカは、互いの腰に手をまわしあう。
フユカの黒い肌は、ひやりと冷たいようで内にそっと燃える熱を秘めている。
わたしは、互いの肌が溶け合ってしまえばいいと思う。
ふたりが、ひとつになってしまえばいいと思うの。
フユカは、その考えを読んだように、わたしに向かって穏やかに笑いかけてくれる。
きっと、フユカも同じ考え。
このまま、世界が終わりを迎えてしまってもいい。
そんなふうに、思う。
そして、世界はさっきまでより、さらに不吉な様相を深めつつあった。
足元に打ち寄せる波は、もう蒼ざめた感じじゃない。
いつの間にか、血の赤を潜ませてる。
それが、よく判った。
そして、空。
ああ、なんて雲なのかしら。
それは、黒い岩盤が空に浮いている様に見えた。
その重苦しい黒雲は、赤い亀裂が血管のように縦横へ走っている。
中で焔が、燃え上がっていた。
苦しみ、なのかしら。
哀しみ、なのかしら。
そんな、張り裂けそうな情念が焔となって、重苦しい黒雲に閉じ込められている。
わたしは、そう思う。
その雲は、生き物の動きを見せていた。
空全体に、その支配を伸ばしていってる。
黒い雨がふっているけれど、それは実は灰であることがわたしには判った。
ああ、あれはもうすぐこの世界を覆ってしまうのね。
でも、いい。
わたしはフユカとこうして抱き合ったまま、世界の終わりを迎えるの。
それでいいから。
それで十分だから。
そうしてわたしとフユカは、互いに笑みを交わす。
そう、世界が終わるまで、わたしたちはこうして抱き合っている。
きっと、そうなると思う。
何か大切なことを忘れていることを、わたしは知っていた。
思い出さなくちゃいけない、大事なこと。
でも、このふたりでいる時間の甘やかさは、全てを忘却へ溶かし込んでしまう。
それに抗うなんて、わたしには考えもつかなかった。
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