空を飛ぶ少女、引きこもりの少年、破壊を求めるおとこ

ルサルカ

文字の大きさ
73 / 77

第73話「聖人の血を、地獄の焔へ撒き散らす」【リディア】

しおりを挟む
海が赤く、泡立ちはじめる。

海水の中に閉じ込められた燃え盛る焔が、出口を求めて蠢いていた。

泡立つ赤い焔の奥に、漆黒の塊が動いている。

いよいよ、黒竜式たちが上陸をはじめる時が来た。

無数の稲妻が、海底から岩盤のように重く立ちこめる雲に向かって、放たれていく。

白い灰が降り注ぐ中で、真紅の閃光が地上を蹂躙する。

空気が、研ぎ澄まされるように思えた。

廃墟のような街で、死の放射能を含んだ風が巻き起こる。

わたしは海岸からヘリを再び遠ざけていくが、機体は風に揺さぶられていた。

世界を終わらせる破壊槌の鳴らす轟音が、動くものの消え失せた街に轟く。

百一体のゴジラサウルスが放つ、咆哮である。

赤く染まった海が盛り上がり、真紅の閃光を放ちつつ黒竜式たちがゆっくりと上陸した。

もう、彼らの前に立ちふさがるものは、いないようだ。

そこにあるのは、空っぽになった街だけである。

随所で放棄された自動車が、黒竜式たちに踏み潰され火焔をあげていく。

先頭のゴジラサウルスが、首都高速にたどりついた。

放棄された高架道路は、黒竜式の放ったプラズマ放射によってあっさり破壊される。

ゴジラサウルスたちは、もはや容赦が無かった。

戦術核兵器によって朽ち果てたようになっている街に対して、追い討ちをかけるようにプラズマ放射で蹂躙していく。

何十本もの光の柱が、随所に立ち並んでいった。

紅蓮の焔が、地上を満たしつつある。

地の底から、地獄が浮上してきたのかとさえ思う。

この世の終わりに、これほど相応しい情景があろうか。

金属が軋むような咆哮を、黒い龍たちは次々に放つ。

破壊音は破滅のオーケストラとなって、街を満たしていく。

上空から見ると、街はもう真紅の焔に包まれ赤い海原と化していた。

その赤い海を泳ぐように、百一体の黒い龍たちがゆっくりと移動していく。

東京全体が同じような焔につつまれるのは、時間の問題に思える。

しかしそれですら、序曲にすぎない。

黒竜式の暴走は、地球全体を太陽にするまで止まらないはずだ。

「おい、リディア。これを、見ろよ」

スミスに声をかけられ、操縦席の向こうに広がる地獄の光景から目を逸らしてヘリの中を見る。

スミスは、いつの間にかナツの死体を抱きかかえていた。

とても奇妙なことが、起こっている。

ナツは、間違いなく死んでいるはずなのに、いつしかその胸から紅い血が流れ出していた。

ちょうど、心臓の真上あたり。

真紅の薔薇を挿したように、紅い血が胸を染めている。

その血は、とどまること無く溢れているようだ。

「何が、起こっている?」

わたしの問いに、スミスは首を振る。

判らないと、いいたいのだろう。

まあ、この状況を説明できるのはカネダなんだろうが、彼は東京湾の底だ。

「リディア、ゴジラサウルスたちの上にいってくれ」

「冗談だろ」

目を剥くわたしに、スミスは肩を竦める。

「ファティマ、第三の予言だ」

わたしは、スミスが狂ったのかと思う。

この状況であれば、誰だって頭がおかしくなるだろう。

「聖人の血を、地獄の焔へ撒き散らすんだ」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...