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第76話「夏が過ぎ去り、冬が訪れる」【リディア】
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黒い天使は、焔の中から完全に離脱する。
暁の輝きを纏った髪は、金色の光を放っていた。
夜の闇より深い黒で染まった肌の中で、瞳は月影の金色に輝いている。
わたしはその姿が、切り取られた宇宙の闇のようだと思う。
だが、その闇には恐怖ではなく優しさが含まれている気がする。
夏の夜が穏やかな冷気で地上の熱を駆逐しながら空を闇で覆うときと同じやり方で、黒い天使は夜の色をした翼を空に広げていく。
夏が過ぎ去り、冬が訪れる。
過酷な死の熱が過ぎ去り、生命の蘇りを孕む冬が持つ夜明けの静寂がやってきた。
ファティマの予言か何かはしらないが、わたしは世界の終焉が回避されたことを理解しつつある。
天使は空を覆い尽くすかと思えるほど大きな翼で、空をビロードの闇で覆った。
その下で、真紅の焔が次第に大地へと飲み込まれていく。
満ち潮が終わり、引きはじめる海のように焔が消えつつあった。
漆黒の天使が、冬の闇で地上の熱を吸い上げて消し去っていく。
天使が緩やかに海へと帰るのに合せて、火もまた廃墟を置き去りにして海へと沈んでいった。
世界は全てを蹂躙する夏の苛烈さから、何もかもが凍りつく冬の静寂へと移り変わっていく。
廃墟の中で立ち尽くしていた黒竜式は、再び動き始めた。
今度は大地の奥へではなく、海へと帰りつつある。
焔が廃墟から消えていくのに合せて、百一体のゴジラザウルスたちが踵を返すと海へと歩んでいく。
わたしは、ため息をついた。
何がおこったのかは判らないが、バギュームの暴走は止まったらしい。
漆黒の天使は、いつしか空の彼方へと姿を消していた。
ゴジラサウルスも、冥界へ向かう死者の足取りで海の中へと沈んでいく。
わたしは、スミスのほうを振り向く。
「助かったのか? わたしたちは」
スミスは、片方の眉をあげる。
「戦術核とプラズマ放射や火焔で都市を蹂躙された状態が、助かったというのならそうだろうさ」
わたしは、スミスの皮肉な言い草に苦い笑みを浮かべる。
この極東にある島国がこの後どうなっていくのかは知らないが、兎にも角にも太陽爆弾は不発に終わったと言えるだろう。
戦術核と焔によって廃墟となったこの街は、ある意味死んだのかもしれない。
しかし、再び蘇るのだと思う。
過去に幾度か、同じように廃墟から復活した時のように。
わたしは最後のゴジラサウルスが海に沈んだ向こうで、太陽が荘厳な輝きで海を染めながら沈んでいくのを見る。
そしてヘリを反転させ、着陸ポイントを廃墟の中に求めて高度を下げた。
暁の輝きを纏った髪は、金色の光を放っていた。
夜の闇より深い黒で染まった肌の中で、瞳は月影の金色に輝いている。
わたしはその姿が、切り取られた宇宙の闇のようだと思う。
だが、その闇には恐怖ではなく優しさが含まれている気がする。
夏の夜が穏やかな冷気で地上の熱を駆逐しながら空を闇で覆うときと同じやり方で、黒い天使は夜の色をした翼を空に広げていく。
夏が過ぎ去り、冬が訪れる。
過酷な死の熱が過ぎ去り、生命の蘇りを孕む冬が持つ夜明けの静寂がやってきた。
ファティマの予言か何かはしらないが、わたしは世界の終焉が回避されたことを理解しつつある。
天使は空を覆い尽くすかと思えるほど大きな翼で、空をビロードの闇で覆った。
その下で、真紅の焔が次第に大地へと飲み込まれていく。
満ち潮が終わり、引きはじめる海のように焔が消えつつあった。
漆黒の天使が、冬の闇で地上の熱を吸い上げて消し去っていく。
天使が緩やかに海へと帰るのに合せて、火もまた廃墟を置き去りにして海へと沈んでいった。
世界は全てを蹂躙する夏の苛烈さから、何もかもが凍りつく冬の静寂へと移り変わっていく。
廃墟の中で立ち尽くしていた黒竜式は、再び動き始めた。
今度は大地の奥へではなく、海へと帰りつつある。
焔が廃墟から消えていくのに合せて、百一体のゴジラザウルスたちが踵を返すと海へと歩んでいく。
わたしは、ため息をついた。
何がおこったのかは判らないが、バギュームの暴走は止まったらしい。
漆黒の天使は、いつしか空の彼方へと姿を消していた。
ゴジラサウルスも、冥界へ向かう死者の足取りで海の中へと沈んでいく。
わたしは、スミスのほうを振り向く。
「助かったのか? わたしたちは」
スミスは、片方の眉をあげる。
「戦術核とプラズマ放射や火焔で都市を蹂躙された状態が、助かったというのならそうだろうさ」
わたしは、スミスの皮肉な言い草に苦い笑みを浮かべる。
この極東にある島国がこの後どうなっていくのかは知らないが、兎にも角にも太陽爆弾は不発に終わったと言えるだろう。
戦術核と焔によって廃墟となったこの街は、ある意味死んだのかもしれない。
しかし、再び蘇るのだと思う。
過去に幾度か、同じように廃墟から復活した時のように。
わたしは最後のゴジラサウルスが海に沈んだ向こうで、太陽が荘厳な輝きで海を染めながら沈んでいくのを見る。
そしてヘリを反転させ、着陸ポイントを廃墟の中に求めて高度を下げた。
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