白百合姉妹

ルサルカ

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第一話

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 その窓の向こうには、大きな湖が広がっている。
 秋のどこか心地よく乾いた空気の中で、その湖は空の夕陽を受け真紅に染まっていた。
 鏡面のように、凪いで静かに澄み渡る湖面は生命そのものを燃やして輝いているかのような夕陽を写し血を湛えているかにみえる。
 そして、その湖面に真紅を与えている空はといえば、本当に燃え盛っているかのような炎の色をみせて輝いていた。
 それは、どこかひとのこころを魅了しつつも、世界の終わりを目のあたりにしているかのような不安をもこころに植えつける色である。

「やめておくれ、わたしはそんな景色は嫌いなのだよ」

 陶器のように白い肌、そしてミルクを流したように白い髪を持つ少女は、ルビーを埋め込んだように紅い瞳を輝かせながら眉を顰めてそう言った。
 もうひとりの、魅入られたように輝く夕陽を見つめていた少女は同じようにアラバスタのような白い肌を持っているが、その瞳はサファイアのように青い。
 青い瞳の少女は、桜色の唇に薄く笑みを浮かべると、紅い瞳の少女に応える。

「どうしてですか、お姉さま。ほら、こんなに世界は美しいというのに」

 青い瞳の少女は、彼女とそっくりな顔をした姉の言葉に逆らうように、燃え上がる夕焼けを見つめつづける。

「ああ、やめておくれ。わたしは、嫌いなのだよ。それに、ほら」

 少女は爪の先まで骨のように白い指を、窓の外へと向けた。
 赤い空に落とされた黒い墨のような、影が飛んでいる。
 その姿は、大きな黒い鳥のようだ。
 それは一羽だけではなく、幾羽も幾羽もあとに続いてきた。

「ごらんなさい、とうとう死の鳥たちがやってきたわ」

 青い瞳の少女はどこか残酷な風に唇を歪め、頷く。

「いよいよ、滅びがはじまりますよ、お姉さま。でもそれは、寿ぐべきことではありませんか」

 赤い瞳の少女は儚げな色をその顔に浮かべると、いやいやとするように首をふった。

「ああそうなのだろうね。この世は深き鉄の牢獄、そこから私たちは解き放たれるのだろうけれど。それでもいやなのだよ、妹よ」

「ああ、お姉さま」

 青い瞳の少女は姉の言葉を無視するように、喜びの笑みを浮かべると眼差しを窓の外へ投げる。

「はじまりますよ」

 燃え上がる赤い空を横切る黒い鳥たちは、その腹から火の塊を落としてゆく。
 おとされた炎の塊は、湖に大きな水柱をあげると、轟音を響かせた。
 そしてその炎の塊は、次第に彼女たちのいる窓へと迫っている。

「さて、そろそろわたしたちは行かなければ、なりません」

「そうだね、妹よ」
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