水曜日の彼は、魔女と出会った

ルサルカ

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第七話

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 その日もまた、わたしは彼女の部屋にいた。

 いつも通りに魔女の工房を思わせるような、薄暗い部屋で。

 わたしたちは、見つめ合っている。

 彼女は美しいけれどあまりその背後に感情を感じさせない、冷めた瞳でわたしを見ていた。

 わたしは少し、首を傾げる。

「ねぇ、あなたは本当のところわたしの話をどう思ってるの? 面白い以外の感想はあるのかしら」

 彼女は、整った顔に少し歪んだ笑みを浮かべる。

 そのアンバランスな感じに、わたしは少しどきりとした。

「そうだね。あなたたち、つまりあなたと水曜日の彼は表裏の関係にも似てるかな」

 うぅむと、わたしは唸る。

「どういうこと?」

 彼女は、落ち着いた声で語る。

「あなたの無意識の象徴が、彼なんだと思う。でも、彼の無意識の象徴がまた、あなたなのだと思う。彼は、あなたの影だが同時にあなたは彼の影でもある」

 何か判ったような、判らない話だと思う。

 彼女はその気持ちを読んだのか、ふふっと笑った。

「あなた達は、互いに表裏の関係だけどメビウスの輪みたいにぐるりと回ってひとつなのよ」

 わたしは、ため息をついた。

 ま、いいかと思い話を続けることにする。



 それは、随分昔の話になるのよね。

 まだ、わたしが水曜日の彼に出会ったりするまえのこと。

 わたしは絵をかくことに没頭していて、もちろんそれでは食べられないから色々バイトもしていた。

 そのころわたしは、おんなのひとと付き合ってたの。

 わたしはそれまでおとこのひととしか付き合ってこなかったけれど、彼女と付き合うようになってみるとその方が自然に感じた。

 どうだろう、よくわからないけれど。

 わたしはまあ、今でもいささかいかれてるところがあると自覚してるけれど、その頃はもう少し酷かった。

 でも彼女はわたしを輪にかけていかれた感じがして、少し怖くなることがあったの。

 彼女は、いつもこんな話をする。

■■

 破壊するの。

 全てを、破壊するのよ。

 そうすることでだけ、わたしたちは真実に到達できる。

 ジョー・ブスケが予め身体に刻まれた傷を見出すような経験をすることで、魂の普遍に到達したみたいに。

 わたしたちの身体には、刻まれているのよ。

 普遍性に至る、深層の傷が。

 そのことでだけ。

 わたしたちの肉体が精神と、邂逅できるのよ。

■■

 ジョー・ブスケはフランスの詩人で戦争で負傷して、半身が麻痺したらしいの。

 で、彼女はその経験が彼を普遍性へと到達させたと言う。

 彼女はブスケのように自分の中に刻まれた傷を見出す必要があると、思っていたみたい。

 まあでも、彼女は自分を傷つけるようなことはしなかったし、戦争に行くなんて言いだしはしなかった。

 あたりまえだけど。

 彼女は、よくわからないことを言ってたわ。

■■

 偶然を、必然に変換するの。

 決まっているのよ、あらゆることが。

 あなたとの出会いもまた。

 その深層にある真実を、表層の破壊で露呈する。

 そうすることで。

 わたしたちの愛は、永遠の普遍へと昇華するのよ。

■■

 彼女は兎に角、壊せば永遠の普遍性を獲得できると思ってたのかも知れない。

 わたしは、そのことの意味を理解していなかったの。

 そう。

 あの日まで。
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