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第七話
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※以下は、その小説からの抜粋
その時のことを、その男はこのように私に話しました。
おれは、扉を開きそこから闇が漏れ出してくるのを見たんだ。
その闇は、その部屋に満たされていた黒い水がどろりと溢れ出してくるように見えた。
そしておれにはその闇が、そう、あたかも生きているように思えたんだ。
おれは、多分それは夢の中の出来事なのであったのだと思うが。
その黒く塗りつぶされた黒い箱のような部屋で、幾度もその娘を抱いた。
ほとんど何も見ることができない闇の中であったから、きっとその娘は白雪のような肌をしていた思うが、抱いている間その娘は闇の一部となっている。
おれは、闇を抱いたのだ。
何も見えぬことで、音や匂い、そして肌の感触がとても研ぎ澄まされる。
娘の下腹の底で開いた襞の花が放つ妖艶で濃厚な香りは、おれのこころの奥底にある獣の部分を刺激した。
それは黒い深淵を内に抱えた、獣であった。
おれはその時人としての己を捨て去り、獣として娘を抱いたのだ。
おれの内の獣は、戦場で生まれ育った獣だ。
おれは幾度も戦場を、渡り歩いてきた。
そこでは陰惨で悲惨な様を、散々見てきている。
高貴な女が無惨にも犯された果てに狂った快楽の声を上げる様や。
略奪や殺戮に淫する男たちの上げる獣の咆哮。
おれはそれらの景色に毒され、いつしかこの世は滅び去ればいいと思うようになった。
おれは全てが戦の業火に焼き尽くされ、あたり一面が焼け野原となり、人の死骸すら灰となり宙に舞うような景色を幻視し、その景色に幾ばくかの安寧を見いだすようになったのだが。
その幻視は、黒い獣となったおれが夢見るものであった。
そして、獣となったおれは闇と同化した娘を抱きながら、その幻視の果てにみる安寧と同じものを感じたのだ。
そう語り終えた男は、まるでしがみつくように私を抱きしめたのです。
※抜粋終了
説明 終了
「それで、どうなるんですか」
「いや、そこでお終いだよ、この話は」
「ふうん」
私はなんとなく拍子抜けして、ため息をつく。
「なんか、余計な時間とっちゃいましたね、すいません水戸さん」
「いやいや、こっちが調子にのって説明したからね。資料に集中してください、藤崎さん」
その時のことを、その男はこのように私に話しました。
おれは、扉を開きそこから闇が漏れ出してくるのを見たんだ。
その闇は、その部屋に満たされていた黒い水がどろりと溢れ出してくるように見えた。
そしておれにはその闇が、そう、あたかも生きているように思えたんだ。
おれは、多分それは夢の中の出来事なのであったのだと思うが。
その黒く塗りつぶされた黒い箱のような部屋で、幾度もその娘を抱いた。
ほとんど何も見ることができない闇の中であったから、きっとその娘は白雪のような肌をしていた思うが、抱いている間その娘は闇の一部となっている。
おれは、闇を抱いたのだ。
何も見えぬことで、音や匂い、そして肌の感触がとても研ぎ澄まされる。
娘の下腹の底で開いた襞の花が放つ妖艶で濃厚な香りは、おれのこころの奥底にある獣の部分を刺激した。
それは黒い深淵を内に抱えた、獣であった。
おれはその時人としての己を捨て去り、獣として娘を抱いたのだ。
おれの内の獣は、戦場で生まれ育った獣だ。
おれは幾度も戦場を、渡り歩いてきた。
そこでは陰惨で悲惨な様を、散々見てきている。
高貴な女が無惨にも犯された果てに狂った快楽の声を上げる様や。
略奪や殺戮に淫する男たちの上げる獣の咆哮。
おれはそれらの景色に毒され、いつしかこの世は滅び去ればいいと思うようになった。
おれは全てが戦の業火に焼き尽くされ、あたり一面が焼け野原となり、人の死骸すら灰となり宙に舞うような景色を幻視し、その景色に幾ばくかの安寧を見いだすようになったのだが。
その幻視は、黒い獣となったおれが夢見るものであった。
そして、獣となったおれは闇と同化した娘を抱きながら、その幻視の果てにみる安寧と同じものを感じたのだ。
そう語り終えた男は、まるでしがみつくように私を抱きしめたのです。
※抜粋終了
説明 終了
「それで、どうなるんですか」
「いや、そこでお終いだよ、この話は」
「ふうん」
私はなんとなく拍子抜けして、ため息をつく。
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