この恋の、成長記録。

紗凪

文字の大きさ
7 / 7

9月

しおりを挟む
8月の遊園地。
ジェットコースターで隣になったり、お化け屋敷で驚いたり…。
「楽しかったな…」
私はふと、その日のことを思い出していた。

文化祭準備で騒がしい教室。
みんなが装飾を作ったり、出し物の話をしている。
その中で私は、少し離れたところで友達と笑っている爽太を見ていた。

(文化祭…一緒に回れたらいいな)

そう思っていると、奈々世の姿が目に入る。
奈々世も爽太の方を見ていた。
胸が少しざわついた。

放課後。
教室にはもうほとんど人がいない。
帰ろうとした璃恋の前に、奈々世が立った。

「璃恋ちゃん。」
「…なに?」
奈々世は少しだけ笑う。
「文化祭、爽太のこと誘おうとしてるでしょ。」
図星で、私は言葉に詰まる。
「やっぱり。」
奈々世は腕を組みながら言った。
「じゃあさ、勝負しない?」
「勝負?」
「文化祭当日、二人で爽太を誘うの。選ばれた方が一緒に回るってことで。」
璃恋の心臓がドクンと鳴る。

奈々世は少し挑発するように言った。
「逃げる?」
私は首を横に振った。
「逃げないよ。」

文化祭当日。
校庭も校舎も人でいっぱい。
文化祭は大盛り上がりだった。
そして——
廊下で爽太を見つけた二人。
璃恋と奈々世は顔を見合わせて、小さくうなずく。
そして同時に声をかけた。

「爽太!」
爽太が振り向く。
「文化祭、一緒に回らない?」
「私と回らない?」
また声が重なった。
爽太は少し驚いた顔をして、二人を見る。

そして少しだけ考えて言った。
「……俺、璃恋と回りたい。」
奈々世は一瞬驚いた顔をしてから、ふっと笑った。
「あーあ負けちゃった。」
そう言うと手をひらひらさせて去っていった。

文化祭を回りながら。
クレープを食べながら歩く二人。
璃恋の心臓はまだ落ち着かない。

「ねぇ爽太。」
「ん?」
「……なんで、私を選んでくれたの?」
爽太は少し笑って言う。
「なんとなく。」
「えー!」
私が少しむくれると、爽太は笑った。
「でもさ。」
「璃恋と回った方が楽しそうだと思った。」

その言葉に、璃恋の顔が一気に赤くなる。
文化祭の騒がしさの中、
二人の距離は少しだけ近づいていた。

夕方になり、文化祭もそろそろ終わり。
校庭では後夜祭の準備が始まっていて、オレンジ色の空が広がっていた。
璃恋と爽太は、クラスの出し物を回り終えて校舎の前に出てきた。

「文化祭終わるの早くない?」
私が少し寂しそうに言うと
「わかる。なんか一瞬だった。」
爽太も同じ空を見ながら答える。
少し沈黙が流れる。

その時——
「ちょっとちょっとー!」
後ろから声がした。
振り向くと、陽奈と晴翔がニヤニヤしながら立っていた。
「せっかく文化祭なんだしさ!」
「記念写真撮ろーぜ」
そう言って陽奈がスマホを構える。

「はい、二人並んでー!」
「え、二人!?」
璃恋が驚くと、晴翔が笑う。
「当たり前じゃん。」
「今日一緒に回ってたんだろ?」

璃恋は少し恥ずかしくなりながら爽太の隣に立つ。
少しだけ距離が近い。
ドキドキして、うまく顔を上げられない。
「はい、撮るよー!」
陽奈の声。

その瞬間——
ふと、爽太の手が璃恋の手に触れた。
びっくりして見ると、爽太も少しだけ驚いた顔をしている。
でも、手は離れなかった。

「……っ」
璃恋の心臓が一気に早くなる。
「はいチーズ!」

パシャ

シャッターの音と同時に、写真が撮られた。
「いいじゃんいいじゃん!」
陽奈が写真を見て笑う。
「青春って感じ!」
璃恋はまだ少し赤い顔のまま、そっと爽太を見る。
爽太も少し照れたように笑っていた。

その瞬間、私は思った。
(この文化祭……一生忘れないかも)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

断罪された薔薇の話

倉真朔
恋愛
悪名高きロザリンドの断罪後、奇妙な病気にかかってしまった第二王子のルカ。そんなこと知るよしもなく、皇太子カイルと彼の婚約者のマーガレットはルカに元気になってもらおうと奮闘する。  ルカの切ない想いを誰が受け止めてくれるだろうか。  とても切ない物語です。  この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。   

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

処理中です...