21 / 65
第一章カトリの街
エピソード21 悪魔の匂い
しおりを挟む
「その話は本当なのかと聞いている」
「だってさ、レミリエルさん」
エリスのお偉いさんの顔は、真剣そのもので本気で事件解決に取り掛かろうとしているのだと分かりました。
「本当ですよ。カムさん次第ですが」
「私にプレッシャーかけないでよ」
他のお偉いさん方は「信用出来るのか」と不信の表情ですが、この方はじっと、私達を見定めるように目を合わせてきます。
「一つだけ聞く。できるのか」
「恐らく」
「できるのか、できないのかだ。曖昧な言葉は不信感しか生まないぞ」
「できるよ!信じて欲しい」
私が口を開くより先にカムさんが言い切りました。その横顔は十四歳かと疑う程に覚悟の決まった顔でした。
「一度きりだ。その一度で必要な情報を全て抜き取れ。遺体は丁重に扱え、これ以上の事を起こしては遺族の方にさらに負担がかかる」
遺族。子供を苦心して産み、幼い頃から手をかけ育て上げたのが不当に奪われたらどんな気持ちなのでしょうか。想像もできない、想像もしたくない程に辛い事でしょう。
「こっちだ。付いてこい」
エリスの方に案内されて本部の長い廊下をコツコツと足音を鳴らして歩きます。
やがて、長い廊下の終わり共に扉が見えました。
「この部屋だ。魔法で冷凍保存されている」
「魔法で殺されて魔法で死体を保たれる。なんかどこまでも魔法だね」
「そう、だな。」
エリスのお偉いさんは力なく頷きます。そして目の下には隈ができています、眠っていないのでしょうか。
「俺の名前はスピール。本来は部外者に許可を出すなんてありえない話だが、そこの白髪のお嬢さんの実績と君のさっきの目を信用します。」
「君だ」とカムさんを指さします。人に指をさしたらいけないんですよーと言いたくなる気持ちを必死に抑えます。明らかに場違いな発言ですから。
「俺は職業柄色んな奴と話してきた。色んな奴の目を見てきた。虚偽の目、絶望の目、大体目を見たら何を考えているか分かる。」
「へえ、それは凄いね。魔法でもそこまではできないし」
「そしてさっき、君の目は決意が固まった目をしていた。そういう奴はやってくれるもんだ。俺の長年の経験からの推測だがな」
「ん、あ、ありがと」
期待されている事を伝えられると少し照れくさそうにカムさんは俯きます。
スピールさんは「頼んだぞ」と告げ私達を扉の中に入れてくれました。
「俺は外で待っている。終わったのなら出てこい」
「分かりました」
スピールさんが扉を閉めると、私達は部屋を見渡します。
「あれ、だよね」
「はい⋯⋯」
作業台の様な物に横たわっている、遺体を見て一気に息を吸うのが重くなります。何故、さっき迄は平気だったのに。
「この人、殺されたんだね」
「そうですね、無念だったでしょう」
私たちの目の前にいる遺体はまだ若い女性のようでした。ドクドクと心臓の鼓動が早くなるのを感じます。
「レミリエルさん、犯人の魔力微かに付着してる」
「それで、何か分かりましたか」
はやる気持ちを抑えて、冷静に、場を乱さないように問います。
「死因は雷魔法。そしてね、魂が奪われているかも」
「と、いうと⋯⋯。」
「悪魔召喚の儀式で使われるかも」
悪魔召喚。
天使が居るということは勿論悪魔もいるわけで、奴等は生贄を捧げると人間界にも顔を出すと天使学校で聞きました。召喚された悪魔が低級の場合は理性がないので召喚者さえも殺し、無差別に暴れまくるといいます。具体的には知りませんが。
「過去に人間界で悪魔が暴れた時はどうなったかと分かります?」
「私が産まれる前にあったみたいなんだけど、確か死者は五百を超えるって」
五百。え、五百?
「レミリエルさん、これ早く犯人見付けないとみんな死ぬかも」
カムさんは乾いた笑いを零しました。それ程までに緊急事態なのでしょう。
天使でありながら悪魔となど対面したことも無いのでイマイチ現実味が湧かず、脳が働きません。
「そ、それで犯人の場所は⋯⋯」
「ごめん。付着した魔力が微弱過ぎて、分からない」
さらに絶望へと陥りました。カムさんを責め立てる訳に行かず、「ありがとうございます」と告げます。
「どういたしまして、なんて言えないよね」
カムさんも暗く沈んだ顔をしていました。掛ける言葉も見付からずに、結果をスピールさんに報告しました。
「悪魔召喚⋯⋯犯人は何考えてんだ」
「案外何も考えていない、くだらない理由かもしれませんよ」
「興味半分ってか」
「ええ、精神が自立していない状態で魔法、普通の人にはない強力な力を得てしまうと善悪の区別がつかなくなりそうですし」
「それはあるな⋯⋯」
私達の会話にカムさんは「え、前の私の事⋯⋯?」と居にくそうに黙りこくっていました。今はいい子ですもんね。
「悠長な事は言ってられない直ぐにエリス全体に知らせて魔法使いの捜査に当たらせる」
「今度は会議、しないんですか?」
「そんな事してる場合じゃねぇだろ。俺たちが会議室で顔つき合わせるだけじゃ何も解決しねぇ」
初めは話の分からない方だと思いましたが、撤回しましょう。
「お願いしますね」
「お願い、するね」
二人で頭を下げ、エリスの本部を後にしました。
「私達は私達で、カトリの街のどこかに居る悪い魔法使いを探しますか」
それから私達は数日間、懸命に犯人を探しました。勿論ただ虱潰しに探すのではなく、魔法も活用して。
ただこの広いカトリの街で一人の魔法使いを探すというのは無理があった様です。
結局、数日間の私達の努力は無駄となって終わりました。
「だってさ、レミリエルさん」
エリスのお偉いさんの顔は、真剣そのもので本気で事件解決に取り掛かろうとしているのだと分かりました。
「本当ですよ。カムさん次第ですが」
「私にプレッシャーかけないでよ」
他のお偉いさん方は「信用出来るのか」と不信の表情ですが、この方はじっと、私達を見定めるように目を合わせてきます。
「一つだけ聞く。できるのか」
「恐らく」
「できるのか、できないのかだ。曖昧な言葉は不信感しか生まないぞ」
「できるよ!信じて欲しい」
私が口を開くより先にカムさんが言い切りました。その横顔は十四歳かと疑う程に覚悟の決まった顔でした。
「一度きりだ。その一度で必要な情報を全て抜き取れ。遺体は丁重に扱え、これ以上の事を起こしては遺族の方にさらに負担がかかる」
遺族。子供を苦心して産み、幼い頃から手をかけ育て上げたのが不当に奪われたらどんな気持ちなのでしょうか。想像もできない、想像もしたくない程に辛い事でしょう。
「こっちだ。付いてこい」
エリスの方に案内されて本部の長い廊下をコツコツと足音を鳴らして歩きます。
やがて、長い廊下の終わり共に扉が見えました。
「この部屋だ。魔法で冷凍保存されている」
「魔法で殺されて魔法で死体を保たれる。なんかどこまでも魔法だね」
「そう、だな。」
エリスのお偉いさんは力なく頷きます。そして目の下には隈ができています、眠っていないのでしょうか。
「俺の名前はスピール。本来は部外者に許可を出すなんてありえない話だが、そこの白髪のお嬢さんの実績と君のさっきの目を信用します。」
「君だ」とカムさんを指さします。人に指をさしたらいけないんですよーと言いたくなる気持ちを必死に抑えます。明らかに場違いな発言ですから。
「俺は職業柄色んな奴と話してきた。色んな奴の目を見てきた。虚偽の目、絶望の目、大体目を見たら何を考えているか分かる。」
「へえ、それは凄いね。魔法でもそこまではできないし」
「そしてさっき、君の目は決意が固まった目をしていた。そういう奴はやってくれるもんだ。俺の長年の経験からの推測だがな」
「ん、あ、ありがと」
期待されている事を伝えられると少し照れくさそうにカムさんは俯きます。
スピールさんは「頼んだぞ」と告げ私達を扉の中に入れてくれました。
「俺は外で待っている。終わったのなら出てこい」
「分かりました」
スピールさんが扉を閉めると、私達は部屋を見渡します。
「あれ、だよね」
「はい⋯⋯」
作業台の様な物に横たわっている、遺体を見て一気に息を吸うのが重くなります。何故、さっき迄は平気だったのに。
「この人、殺されたんだね」
「そうですね、無念だったでしょう」
私たちの目の前にいる遺体はまだ若い女性のようでした。ドクドクと心臓の鼓動が早くなるのを感じます。
「レミリエルさん、犯人の魔力微かに付着してる」
「それで、何か分かりましたか」
はやる気持ちを抑えて、冷静に、場を乱さないように問います。
「死因は雷魔法。そしてね、魂が奪われているかも」
「と、いうと⋯⋯。」
「悪魔召喚の儀式で使われるかも」
悪魔召喚。
天使が居るということは勿論悪魔もいるわけで、奴等は生贄を捧げると人間界にも顔を出すと天使学校で聞きました。召喚された悪魔が低級の場合は理性がないので召喚者さえも殺し、無差別に暴れまくるといいます。具体的には知りませんが。
「過去に人間界で悪魔が暴れた時はどうなったかと分かります?」
「私が産まれる前にあったみたいなんだけど、確か死者は五百を超えるって」
五百。え、五百?
「レミリエルさん、これ早く犯人見付けないとみんな死ぬかも」
カムさんは乾いた笑いを零しました。それ程までに緊急事態なのでしょう。
天使でありながら悪魔となど対面したことも無いのでイマイチ現実味が湧かず、脳が働きません。
「そ、それで犯人の場所は⋯⋯」
「ごめん。付着した魔力が微弱過ぎて、分からない」
さらに絶望へと陥りました。カムさんを責め立てる訳に行かず、「ありがとうございます」と告げます。
「どういたしまして、なんて言えないよね」
カムさんも暗く沈んだ顔をしていました。掛ける言葉も見付からずに、結果をスピールさんに報告しました。
「悪魔召喚⋯⋯犯人は何考えてんだ」
「案外何も考えていない、くだらない理由かもしれませんよ」
「興味半分ってか」
「ええ、精神が自立していない状態で魔法、普通の人にはない強力な力を得てしまうと善悪の区別がつかなくなりそうですし」
「それはあるな⋯⋯」
私達の会話にカムさんは「え、前の私の事⋯⋯?」と居にくそうに黙りこくっていました。今はいい子ですもんね。
「悠長な事は言ってられない直ぐにエリス全体に知らせて魔法使いの捜査に当たらせる」
「今度は会議、しないんですか?」
「そんな事してる場合じゃねぇだろ。俺たちが会議室で顔つき合わせるだけじゃ何も解決しねぇ」
初めは話の分からない方だと思いましたが、撤回しましょう。
「お願いしますね」
「お願い、するね」
二人で頭を下げ、エリスの本部を後にしました。
「私達は私達で、カトリの街のどこかに居る悪い魔法使いを探しますか」
それから私達は数日間、懸命に犯人を探しました。勿論ただ虱潰しに探すのではなく、魔法も活用して。
ただこの広いカトリの街で一人の魔法使いを探すというのは無理があった様です。
結局、数日間の私達の努力は無駄となって終わりました。
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる