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第一章カトリの街
エピソード35 家族が舞い降りた
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暑い夜、身体がじめじめとしてだらしなくひんやりとしか床に寝そべっていた時のことです。
「あの、レミリエルさん」
話しかけてきたのは同居している吸血鬼と人間のハーフ、リルさん。銀髪と緋色の瞳が今日もキュートです。
「リルさんも寝そべりますか?床気持ちいいですよ」
「それはいい」
きっぱりと断られました。その眼には若干の軽蔑を感じたので仕方なく身体を起こしました。
ああ、私のひんやり⋯⋯。
「あのさ、怖い話しようよ」
「ほほう、怖い話ですか」
リルさんが提案してきた怖い話、私は天使で幽霊の類を感じ取ることが出来るし、リルさんは吸血鬼のハーフです。
人間が怖がるような話をしてもつまらないでしょう。
「言いたいことは分かる、だから人間にされた怖い話をしよう」
「人間にされた怖い話ですか、それなら私も幾らか持ち合わせていますよ」
リルさんは私の考える事をお見通しだったようで、事前に別の案を考えていてくれたようです。
「部屋暗くして雰囲気だしたい」
「ああ、それ良いかもですね。やるのなら私も本格派です」
このお屋敷は極僅かな魔力で発光する魔法石というものを使っているので、魔法石への魔力供給をやめれば直ぐに暗闇へと陥ります。
「暗くなった、じゃあはじめようか」
「はい、私から言ってもいいですか?」
リルさんが「いいよ」と言ってくれたので、私はワントーン声を下げて語ります。
「ある日、私が街を歩いていた時です」
「うんうん」
リルさんは興味津々なご様子で相槌を打ってきます。可愛い。
「書店で本を買い漁っていた時に、いきなり体格のいい男性がタックルをしてきたんです」
「ええ、それは怖いね」
「その男性は自分の本を宣伝で手渡したいけれど、話しかけ方が分からなくてタックルしたとの事でした」
これで私の人間にされて怖かった話の一つ目は終わりです。
「その人、中々サイコパス」
「ですよね。私もそう思います」
あの小説家さん、元気にしているでしょうか。別に元気じゃなくても一向に構いませんけど。
「次は私の番、私がまだ小さい頃の話」
リルさんも話に怖みをつけようと精一杯低い声を出して語ります。
「レミリエルさんと会うまでずっと一人で暮らしてきたから、夜中にたまに人間から吸血に行くんだけど」
「はい」
「そこで血を吸おうとした相手が吸血鬼の弱点を知ってて、気絶するまでニンニクの臭いをかがされた」
リルさんは「これで私の怖かった話は終わり」と手をパンと叩き、終了の合図を出します。
「それ普通に人間ヤバいですね。そこまでしますか」
「うん、だから殺されちゃうんじゃないかってとっても怖かった」
再び思い出したのか、シュンと俯くリルさん。
こんなに可愛い生き物に一体どこの誰がそんな事をするのか、人間の考える事は分かりません。
「大丈夫ですよ、今度そんな方があれば速攻地獄に流します」
「そんな簡単に地獄に流しちゃダメだよ⋯⋯」
なるほど、リルさんは天使の優しさも持ち合わせているのですか。
「リルさんは偉いですねぇ」
りるさんの頭を撫でると、「私何もしてない⋯⋯」と困惑されています。成程、謙虚ですか。
「怖い話、いっぱいしましたね」
「いやまだ二つしかしてない」
そういえばそうでした。人間界の怖い思い出と言っても、案外最終的には楽しく終わることが多かったので、あまり印象的な話はもうないかもです。
「ないんだ、もう」
「え、なんで分かったんですか」
「幸せそうだから、思い返してもいい思い出が多いんだろうなって」
誘拐事件の解決に当たった時や悪魔と戦った事など嫌な思い出はそこそこにありますが、何ででしょうね。
言われてみれば確かにそれらを上書きするくらいに楽しい事が多かったのかもしれません。
天界にいた頃は、友人はエリル一人で殆ど他の天使と関わってこない生活を送っていましたから、こちらの生活の事を昔の自分に言っても信じて貰えなかったでしょう。
「確かに、私幸せかもしれません」
「そうか、こちらの方がお前の性に合っているのか」
え、今の声誰ですか?
いきなり謎の声がして、リルさんの方へ視線を流しますが、「私じゃない」と首を振るばかりです。
「驚かせて済まない、私だ」
すると突然、眩い光が暗かった部屋の闇をかき消します。
いきなりの事に何が起こったのか分からずに混乱していると、懐かしい匂いを感じました。
「お、お姉様⋯⋯お母様⋯⋯」
いきなり他人の家に不法侵入してきた輩は、意外にも私の母と姉でした。
私の家族は平気で不法侵入をするのか、眩い光を放てば許されると思ってるんでしょうかと若干失望しつつも、久しぶりの再会を喜びます。
「あ、あの。レミリエルさん?」
「すみません⋯⋯母と姉です」
リルさんはいきなり現れた私の母と姉に一礼をして、「飲み物用意してくる」と気を利かせてくれました。
不法侵入者にも優しいリルさんは天使です。
「あの、本日はどの様なご要件で⋯⋯」
「私の娘が人間界で上手くやれているか、様子を見に来ました。その様子だと心配は無さそうですね」
「レミリエルが誰かと暮らしているとは思わなかった、以前の人見知りのお前とは随分違うようだな」
私の母は、基本温厚で敬語調で話す方です。
私の敬語癖も恐らく遺伝でしょう、知りませんが。
一方の姉は、高圧的と堅苦しいを掛け合わせた表向きは地獄のような方です。
ただ、姉は裏表が激しいので⋯⋯とりあえず裏の方を見て頂きたいです。
ちなみにですが母も姉も私と同じ白髪で翠色の瞳をしています。
似通った見た目をしていますが、違う点としては母は単純に私の加齢後のような見た目で、姉は私がショートヘアになったような感じです、あと目付きが鋭い。
「特に心配することもなさそうなので私は先に帰ります、姉妹で積もる話でもしていて下さい」
そういうと母は眩い光を放ち、光が収まる頃には既に姿を消しました。
天界に帰ったのでしょう。
さて、そろでは私は裏の方の姉と戯れるとしますか。
「あの、レミリエルさん」
話しかけてきたのは同居している吸血鬼と人間のハーフ、リルさん。銀髪と緋色の瞳が今日もキュートです。
「リルさんも寝そべりますか?床気持ちいいですよ」
「それはいい」
きっぱりと断られました。その眼には若干の軽蔑を感じたので仕方なく身体を起こしました。
ああ、私のひんやり⋯⋯。
「あのさ、怖い話しようよ」
「ほほう、怖い話ですか」
リルさんが提案してきた怖い話、私は天使で幽霊の類を感じ取ることが出来るし、リルさんは吸血鬼のハーフです。
人間が怖がるような話をしてもつまらないでしょう。
「言いたいことは分かる、だから人間にされた怖い話をしよう」
「人間にされた怖い話ですか、それなら私も幾らか持ち合わせていますよ」
リルさんは私の考える事をお見通しだったようで、事前に別の案を考えていてくれたようです。
「部屋暗くして雰囲気だしたい」
「ああ、それ良いかもですね。やるのなら私も本格派です」
このお屋敷は極僅かな魔力で発光する魔法石というものを使っているので、魔法石への魔力供給をやめれば直ぐに暗闇へと陥ります。
「暗くなった、じゃあはじめようか」
「はい、私から言ってもいいですか?」
リルさんが「いいよ」と言ってくれたので、私はワントーン声を下げて語ります。
「ある日、私が街を歩いていた時です」
「うんうん」
リルさんは興味津々なご様子で相槌を打ってきます。可愛い。
「書店で本を買い漁っていた時に、いきなり体格のいい男性がタックルをしてきたんです」
「ええ、それは怖いね」
「その男性は自分の本を宣伝で手渡したいけれど、話しかけ方が分からなくてタックルしたとの事でした」
これで私の人間にされて怖かった話の一つ目は終わりです。
「その人、中々サイコパス」
「ですよね。私もそう思います」
あの小説家さん、元気にしているでしょうか。別に元気じゃなくても一向に構いませんけど。
「次は私の番、私がまだ小さい頃の話」
リルさんも話に怖みをつけようと精一杯低い声を出して語ります。
「レミリエルさんと会うまでずっと一人で暮らしてきたから、夜中にたまに人間から吸血に行くんだけど」
「はい」
「そこで血を吸おうとした相手が吸血鬼の弱点を知ってて、気絶するまでニンニクの臭いをかがされた」
リルさんは「これで私の怖かった話は終わり」と手をパンと叩き、終了の合図を出します。
「それ普通に人間ヤバいですね。そこまでしますか」
「うん、だから殺されちゃうんじゃないかってとっても怖かった」
再び思い出したのか、シュンと俯くリルさん。
こんなに可愛い生き物に一体どこの誰がそんな事をするのか、人間の考える事は分かりません。
「大丈夫ですよ、今度そんな方があれば速攻地獄に流します」
「そんな簡単に地獄に流しちゃダメだよ⋯⋯」
なるほど、リルさんは天使の優しさも持ち合わせているのですか。
「リルさんは偉いですねぇ」
りるさんの頭を撫でると、「私何もしてない⋯⋯」と困惑されています。成程、謙虚ですか。
「怖い話、いっぱいしましたね」
「いやまだ二つしかしてない」
そういえばそうでした。人間界の怖い思い出と言っても、案外最終的には楽しく終わることが多かったので、あまり印象的な話はもうないかもです。
「ないんだ、もう」
「え、なんで分かったんですか」
「幸せそうだから、思い返してもいい思い出が多いんだろうなって」
誘拐事件の解決に当たった時や悪魔と戦った事など嫌な思い出はそこそこにありますが、何ででしょうね。
言われてみれば確かにそれらを上書きするくらいに楽しい事が多かったのかもしれません。
天界にいた頃は、友人はエリル一人で殆ど他の天使と関わってこない生活を送っていましたから、こちらの生活の事を昔の自分に言っても信じて貰えなかったでしょう。
「確かに、私幸せかもしれません」
「そうか、こちらの方がお前の性に合っているのか」
え、今の声誰ですか?
いきなり謎の声がして、リルさんの方へ視線を流しますが、「私じゃない」と首を振るばかりです。
「驚かせて済まない、私だ」
すると突然、眩い光が暗かった部屋の闇をかき消します。
いきなりの事に何が起こったのか分からずに混乱していると、懐かしい匂いを感じました。
「お、お姉様⋯⋯お母様⋯⋯」
いきなり他人の家に不法侵入してきた輩は、意外にも私の母と姉でした。
私の家族は平気で不法侵入をするのか、眩い光を放てば許されると思ってるんでしょうかと若干失望しつつも、久しぶりの再会を喜びます。
「あ、あの。レミリエルさん?」
「すみません⋯⋯母と姉です」
リルさんはいきなり現れた私の母と姉に一礼をして、「飲み物用意してくる」と気を利かせてくれました。
不法侵入者にも優しいリルさんは天使です。
「あの、本日はどの様なご要件で⋯⋯」
「私の娘が人間界で上手くやれているか、様子を見に来ました。その様子だと心配は無さそうですね」
「レミリエルが誰かと暮らしているとは思わなかった、以前の人見知りのお前とは随分違うようだな」
私の母は、基本温厚で敬語調で話す方です。
私の敬語癖も恐らく遺伝でしょう、知りませんが。
一方の姉は、高圧的と堅苦しいを掛け合わせた表向きは地獄のような方です。
ただ、姉は裏表が激しいので⋯⋯とりあえず裏の方を見て頂きたいです。
ちなみにですが母も姉も私と同じ白髪で翠色の瞳をしています。
似通った見た目をしていますが、違う点としては母は単純に私の加齢後のような見た目で、姉は私がショートヘアになったような感じです、あと目付きが鋭い。
「特に心配することもなさそうなので私は先に帰ります、姉妹で積もる話でもしていて下さい」
そういうと母は眩い光を放ち、光が収まる頃には既に姿を消しました。
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さて、そろでは私は裏の方の姉と戯れるとしますか。
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