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とはいったものの、特に水族館にいきたかったわけでもなく。
なんとなく口にでてきたデートスポットがそれだっただけだ。
「小学生以来です、水族館なんて」
「魚好きなのか?」
「あー、うん。まぁまぁ好きです」
「お前、魚みたいだもんな。すぐ食われそう」
「はぁ~? 食われませんから! だいたいそれ見た目の偏見でしょ。男がメイクしてんの無理とか、オネエかよとか散々言われたんでっ」
「見た目じゃなくて、性格な。危なっかしいもん、要」
「え? そ、そうですか?」
「ああ、俺がオナニーしろっつったら素直にやっちゃうとことか」
「っ! あ、あれはッ……だって、隼人さんが」
なに、と言いたげにかすかな笑みを浮かべた。
直視するのが恥ずかしくなった俺が視線をそらすと、隼人さんは小さく笑う。
「照れてんのかわい」
「っ……は、はやく行けよ。青になってるし」
「つーか、なんで水族館?」
「う……なんか、いま考えたらデートっぽいすよね。水族館とかジワる~」
「俺らそういうのじゃないだろ」
「っ」
ダメだ、感情は捨てろ。
なにかいえ。なにか。
「わ……わかってますよ、それくらい。体の相性いいっつっても隼人さんは俺の憧れなんで。いわゆる推しみたいな? 見てるだけで尊いんですよ」
「……趣味悪すぎ」
「ひっで。半年前から本気で憧れてるファンの心を一瞬で砕いたよ、この人ー」
「お前、身長は?」
「え、172……」
「バレンタインにチョコをもらう数は」
「えっと……今年は10か20くらい、でしたけど」
「やっぱ趣味悪りい」
「は? え、どういうことですか」
「なんでもねーよ」
褒めれば褒めるほど、隼人さんは俺を軽蔑するような態度を見せる。
それがどうしてなのか知りたくても近づけない。
まるで、俺が悪いことをしているみたいだ。
都内の大型水族館にはすでに多くの観光客が足を運んでいた。
子連れやカップルはもちろん、修学旅行生なのか学生の集団も見える。
「隼人さんは好きですか? 水族館」
「10回以上きてるからなー、新鮮さはない」
「ああ、なんとなく察しました……こんな場所をえらんですみません」
「べつに嫌いじゃない」
「……」
慣れている。ただそれだけのこと。
俺は隼人さんの一番にはなれないし、ノンケの彼に誘われたのは一種の気まぐれだろう。わかっている、のに。
「うわ、かーわい! アクアコスメですって!」
売店の入口にならぶコスメグッズについ釘付けになった。
水槽やアクアリウムをモチーフにしたラメ入りの容器が幻想的できれいだ。
「リップ……発色よさそー」
「やっぱリップしてんのな。しかもそれうちで出してるやつだろ」
「っ! わ、ワセリン入ってるし色味もきれいだったんでっ……」
隼人さんが客に勧めていたのを見て買ったなんていえば、それこそストーカーだと思われそうだ。
この人は宣伝もうまい。
だから客は虜にされる。
「貸してみ」
「えっ、あ」
手を消毒した隼人さんがリップグロスを指にとると、俺の唇にそっと添えた。
「ッ」
「横へ雑塗りするより縦方向につける方が浸透しやすい」
「っ……!」
隼人さんの指が俺の唇をなぞっていく。
呼吸することすら忘れてしまうほど緊張して、鼓動の音が脳内で聞こえてくる。
「いいじゃん、似合ってる」
「ほ、ほんとですか……」
「ああ。色味もツヤ感も要の好みだろ」
「……これ買ってきます」
おれはバカだ。
何度も痛い目を見ているのに少しも学習しない。べつに隼人さんがいったからじゃない。
ただ自分の好みだったからというだけで、そこに隼人さんの的確な意見があったから。
そうだ、本当にそれだけ。
なんとなく口にでてきたデートスポットがそれだっただけだ。
「小学生以来です、水族館なんて」
「魚好きなのか?」
「あー、うん。まぁまぁ好きです」
「お前、魚みたいだもんな。すぐ食われそう」
「はぁ~? 食われませんから! だいたいそれ見た目の偏見でしょ。男がメイクしてんの無理とか、オネエかよとか散々言われたんでっ」
「見た目じゃなくて、性格な。危なっかしいもん、要」
「え? そ、そうですか?」
「ああ、俺がオナニーしろっつったら素直にやっちゃうとことか」
「っ! あ、あれはッ……だって、隼人さんが」
なに、と言いたげにかすかな笑みを浮かべた。
直視するのが恥ずかしくなった俺が視線をそらすと、隼人さんは小さく笑う。
「照れてんのかわい」
「っ……は、はやく行けよ。青になってるし」
「つーか、なんで水族館?」
「う……なんか、いま考えたらデートっぽいすよね。水族館とかジワる~」
「俺らそういうのじゃないだろ」
「っ」
ダメだ、感情は捨てろ。
なにかいえ。なにか。
「わ……わかってますよ、それくらい。体の相性いいっつっても隼人さんは俺の憧れなんで。いわゆる推しみたいな? 見てるだけで尊いんですよ」
「……趣味悪すぎ」
「ひっで。半年前から本気で憧れてるファンの心を一瞬で砕いたよ、この人ー」
「お前、身長は?」
「え、172……」
「バレンタインにチョコをもらう数は」
「えっと……今年は10か20くらい、でしたけど」
「やっぱ趣味悪りい」
「は? え、どういうことですか」
「なんでもねーよ」
褒めれば褒めるほど、隼人さんは俺を軽蔑するような態度を見せる。
それがどうしてなのか知りたくても近づけない。
まるで、俺が悪いことをしているみたいだ。
都内の大型水族館にはすでに多くの観光客が足を運んでいた。
子連れやカップルはもちろん、修学旅行生なのか学生の集団も見える。
「隼人さんは好きですか? 水族館」
「10回以上きてるからなー、新鮮さはない」
「ああ、なんとなく察しました……こんな場所をえらんですみません」
「べつに嫌いじゃない」
「……」
慣れている。ただそれだけのこと。
俺は隼人さんの一番にはなれないし、ノンケの彼に誘われたのは一種の気まぐれだろう。わかっている、のに。
「うわ、かーわい! アクアコスメですって!」
売店の入口にならぶコスメグッズについ釘付けになった。
水槽やアクアリウムをモチーフにしたラメ入りの容器が幻想的できれいだ。
「リップ……発色よさそー」
「やっぱリップしてんのな。しかもそれうちで出してるやつだろ」
「っ! わ、ワセリン入ってるし色味もきれいだったんでっ……」
隼人さんが客に勧めていたのを見て買ったなんていえば、それこそストーカーだと思われそうだ。
この人は宣伝もうまい。
だから客は虜にされる。
「貸してみ」
「えっ、あ」
手を消毒した隼人さんがリップグロスを指にとると、俺の唇にそっと添えた。
「ッ」
「横へ雑塗りするより縦方向につける方が浸透しやすい」
「っ……!」
隼人さんの指が俺の唇をなぞっていく。
呼吸することすら忘れてしまうほど緊張して、鼓動の音が脳内で聞こえてくる。
「いいじゃん、似合ってる」
「ほ、ほんとですか……」
「ああ。色味もツヤ感も要の好みだろ」
「……これ買ってきます」
おれはバカだ。
何度も痛い目を見ているのに少しも学習しない。べつに隼人さんがいったからじゃない。
ただ自分の好みだったからというだけで、そこに隼人さんの的確な意見があったから。
そうだ、本当にそれだけ。
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