28 / 28
第二章
2話
しおりを挟む
「勇者召喚だと?」
黒ずくめの男が言った事が理解出来なかったのかリュカは眉を顰める。そこには先程までの狂気はなかった。
「これだよこれ。こいつ。」
首元に冷たい剣先が当たる。私を見るように振り返った黒い男はリュカに似ていた。
黒色のウルフヘアに金色の鋭い目つき。少し気怠げさもあるその男は口は悪そうだが、どこか柔らかい雰囲気だった。
「貴様、我が番に手を出すな!!」
「は?番~?何言ってんだよお前。竜族が番の足を斬るかっての。大方、勇者を恐怖で支配しようとしてた最中だろ?怖い怖い。」
リュカの言葉が信じられないのか、その男はやれやれと頭を降った。
「うるさい、殺されたいのか」
そんな男の馬鹿にしたような仕草に苛立ちを覚えたのかリュカは殺気を男へと向けた。ぶわっと空気が揺れるのが分かるほどの殺気に私はまたも震えた。
「おいおい、マジなのかよっ!笑えねーんだけど?!」
そう言いつつも口の端は上がっている男は私に向けていた剣先をリュカへと向ける。
男がリュカに剣を向けた瞬間またもぶわっと空気が揺れるのを感じた。
一触即発に思えたが、黒い男は直ぐに振り返り私を抱き抱えた。
「お前と戦うわけねーだろ、ばーか!」
目の前の空間が歪み、その歪みに向かって男は私を抱えながら飛び込んだ。
次の瞬間、目の前の景色が代わり、その場所には私と黒い男しかいなかった。
部屋のドアがバタンッと開く音がし、そこから子どもの角を生やした男の子が走ってきた。
「魔王様!!?無事にお戻りになられたのですね?その女は……まさか!!」
「あぁ。そういうことだ。」
男は魔王と呼ばれていた。
魔王……?魔王と言えば魔族で、物語に登場するラスボス的な存在。
それがこの男だと言うのか。
「とりあえず特級ポーションをくれ。足斬られちまってるんだよこいつ」
その魔王の言葉にハッとなる。
そうだ。私は確かに足を切断された。
しかし、今も熱いという感覚はあるが、痛みはなく、思った以上に平気な自分がいた。
私が不思議だと足を見つめてるのが分かったのか男は私を見て口を開いた。
「番っつーのも割とマジなのかもな。ここまで丁寧に切られて、痛みも感じさせないとか。ま、でもやっぱこえーよあいつ。」
そうか、やっぱり痛みを感じなかったのはリュカが何かをしたからなのか。だけどそんな事であの男のしてきた事は消えない。
むしろ私の中には恐怖しか無かった。
この魔王と呼ばれる男が来なければ私は、私は本当に手足を斬られていたのだ。
ふっと目の前が暗くなった。
────────────────────
──────────
「おい。おーい。……気絶したのか。俺一応魔王で、お前は勇者だぞ。」
目の前に眠るのは先程まで竜王に監禁されてた勇者の女。
部下を偵察にいかせてからなんの情報もなく、戻ってこなかったから俺自ら行けば勇者は何故か足を切られ、恐怖に支配されていた。
勇者自信が強くなってる気配もないし、割と俺は呆れていた。
「魔王様、偵察に行っていたアイカが門の前に倒れておりました。生憎自白剤を使われた様で副作用で目も見えず、耳も聞こえなくなっておりますが、どうしますか。」
「とりあえずそいつにも特級ポーション使っとけ。それとこいつ寝たからどこか部屋を用意しろ。」
そう俺が言えば目の前の部下は不思議そうな顔をしてとんでもないことを言い放った。
「え?魔王様のお妃様じゃないんですか?一緒の部屋で良くないですか?」
「アホか。勇者だよ勇者。」
「えええぇー!!?何連れて帰ってきてるんですか?!起きた勇者に殺されたらどうするんですか」
「いいからさっさとこいつを適当な部屋に寝かせて監視をつけとけ。後で説明する。」
ぶつくさと文句を言いながら部下であるロマネスは勇者を部屋へと移動させた。
「魔王様、これからどうするんですか?勇者連れ帰ってきちゃったんですよ?ここぞとばかりに多分戦争起こりますよ。」
勇者の女を部屋へ寝かしたロマネスは俺にそう問いただした。
「多分ってか絶対だな。そもそもあの勇者、竜王の番らしいんだよ。」
「尚更まずいじゃないですか!!てか、うわぁ、勇者召喚で召喚した勇者が番とか、まじで運命ってあるんですね!」
少しロマンチック家なロマネスには、この話は大分受けたみたいで素敵だなんてのたまっている。
多分だが、勇者が育ってないのは竜王の番だからだろう。番を大切にするとは聞いてたが実際なんの知識も与えず、自衛する力すらも身につけてないところを見ると随分と手の込んだ囲い方をしている。
「しかし疑問だな」
「何がです?」
「いや、竜王の番が勇者なのはともかく、なんであいつは勇者の足を切ったんだ?」
「え、足切ったの魔王様じゃないんですか。」
何故か俺がしたものだと思っているロマネスに思うところはあるがはっきりと否定する。
俺が着く頃には足は切断されていた。
「何が起きてんだ?」
少なくとも俺を殺せる勇者の力が育ってないなら俺は大丈夫だ。
しかし、番となれば直ぐにでも竜王は来るだろう。
たとえ無謀だと分かっていても番が攫われたとなればくる。
それは竜族の本能だ。
それで俺の国を破壊されたら溜まったものでは無い。
とりあえず勇者が起きたら話を聞かねばならない。
竜王には最悪の場合は勇者を人質に交渉でもするしかない。
いっその事勇者を殺せば心が壊れるか?
勇者が起きるまで俺はずっと頭を抱えていた。
黒ずくめの男が言った事が理解出来なかったのかリュカは眉を顰める。そこには先程までの狂気はなかった。
「これだよこれ。こいつ。」
首元に冷たい剣先が当たる。私を見るように振り返った黒い男はリュカに似ていた。
黒色のウルフヘアに金色の鋭い目つき。少し気怠げさもあるその男は口は悪そうだが、どこか柔らかい雰囲気だった。
「貴様、我が番に手を出すな!!」
「は?番~?何言ってんだよお前。竜族が番の足を斬るかっての。大方、勇者を恐怖で支配しようとしてた最中だろ?怖い怖い。」
リュカの言葉が信じられないのか、その男はやれやれと頭を降った。
「うるさい、殺されたいのか」
そんな男の馬鹿にしたような仕草に苛立ちを覚えたのかリュカは殺気を男へと向けた。ぶわっと空気が揺れるのが分かるほどの殺気に私はまたも震えた。
「おいおい、マジなのかよっ!笑えねーんだけど?!」
そう言いつつも口の端は上がっている男は私に向けていた剣先をリュカへと向ける。
男がリュカに剣を向けた瞬間またもぶわっと空気が揺れるのを感じた。
一触即発に思えたが、黒い男は直ぐに振り返り私を抱き抱えた。
「お前と戦うわけねーだろ、ばーか!」
目の前の空間が歪み、その歪みに向かって男は私を抱えながら飛び込んだ。
次の瞬間、目の前の景色が代わり、その場所には私と黒い男しかいなかった。
部屋のドアがバタンッと開く音がし、そこから子どもの角を生やした男の子が走ってきた。
「魔王様!!?無事にお戻りになられたのですね?その女は……まさか!!」
「あぁ。そういうことだ。」
男は魔王と呼ばれていた。
魔王……?魔王と言えば魔族で、物語に登場するラスボス的な存在。
それがこの男だと言うのか。
「とりあえず特級ポーションをくれ。足斬られちまってるんだよこいつ」
その魔王の言葉にハッとなる。
そうだ。私は確かに足を切断された。
しかし、今も熱いという感覚はあるが、痛みはなく、思った以上に平気な自分がいた。
私が不思議だと足を見つめてるのが分かったのか男は私を見て口を開いた。
「番っつーのも割とマジなのかもな。ここまで丁寧に切られて、痛みも感じさせないとか。ま、でもやっぱこえーよあいつ。」
そうか、やっぱり痛みを感じなかったのはリュカが何かをしたからなのか。だけどそんな事であの男のしてきた事は消えない。
むしろ私の中には恐怖しか無かった。
この魔王と呼ばれる男が来なければ私は、私は本当に手足を斬られていたのだ。
ふっと目の前が暗くなった。
────────────────────
──────────
「おい。おーい。……気絶したのか。俺一応魔王で、お前は勇者だぞ。」
目の前に眠るのは先程まで竜王に監禁されてた勇者の女。
部下を偵察にいかせてからなんの情報もなく、戻ってこなかったから俺自ら行けば勇者は何故か足を切られ、恐怖に支配されていた。
勇者自信が強くなってる気配もないし、割と俺は呆れていた。
「魔王様、偵察に行っていたアイカが門の前に倒れておりました。生憎自白剤を使われた様で副作用で目も見えず、耳も聞こえなくなっておりますが、どうしますか。」
「とりあえずそいつにも特級ポーション使っとけ。それとこいつ寝たからどこか部屋を用意しろ。」
そう俺が言えば目の前の部下は不思議そうな顔をしてとんでもないことを言い放った。
「え?魔王様のお妃様じゃないんですか?一緒の部屋で良くないですか?」
「アホか。勇者だよ勇者。」
「えええぇー!!?何連れて帰ってきてるんですか?!起きた勇者に殺されたらどうするんですか」
「いいからさっさとこいつを適当な部屋に寝かせて監視をつけとけ。後で説明する。」
ぶつくさと文句を言いながら部下であるロマネスは勇者を部屋へと移動させた。
「魔王様、これからどうするんですか?勇者連れ帰ってきちゃったんですよ?ここぞとばかりに多分戦争起こりますよ。」
勇者の女を部屋へ寝かしたロマネスは俺にそう問いただした。
「多分ってか絶対だな。そもそもあの勇者、竜王の番らしいんだよ。」
「尚更まずいじゃないですか!!てか、うわぁ、勇者召喚で召喚した勇者が番とか、まじで運命ってあるんですね!」
少しロマンチック家なロマネスには、この話は大分受けたみたいで素敵だなんてのたまっている。
多分だが、勇者が育ってないのは竜王の番だからだろう。番を大切にするとは聞いてたが実際なんの知識も与えず、自衛する力すらも身につけてないところを見ると随分と手の込んだ囲い方をしている。
「しかし疑問だな」
「何がです?」
「いや、竜王の番が勇者なのはともかく、なんであいつは勇者の足を切ったんだ?」
「え、足切ったの魔王様じゃないんですか。」
何故か俺がしたものだと思っているロマネスに思うところはあるがはっきりと否定する。
俺が着く頃には足は切断されていた。
「何が起きてんだ?」
少なくとも俺を殺せる勇者の力が育ってないなら俺は大丈夫だ。
しかし、番となれば直ぐにでも竜王は来るだろう。
たとえ無謀だと分かっていても番が攫われたとなればくる。
それは竜族の本能だ。
それで俺の国を破壊されたら溜まったものでは無い。
とりあえず勇者が起きたら話を聞かねばならない。
竜王には最悪の場合は勇者を人質に交渉でもするしかない。
いっその事勇者を殺せば心が壊れるか?
勇者が起きるまで俺はずっと頭を抱えていた。
63
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
全てを疑う婚約者は運命の番も疑う
夏見颯一
恋愛
疑ってかかる婚約者は全てを疑ってかかる。
タイトル通りです。
何かが起こっているようで、疑った所為で結果的には何も起きなかった。そんな話です。
5話+番外編。
【彼の両親の運命】だけは死にネタです。ご注意下さい。
一話完結型。
運命の番の話を書いてみたかったので書いてみました。
番に関して少し独自解釈があります。
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
【完結】有能外交官はドアマット夫人の笑顔を守りたい
堀 和三盆
恋愛
「まあ、ご覧になって。またいらしているわ」
「あの格好でよく恥ずかしげもなく人前に顔を出せたものねぇ。わたくしだったら耐えられないわ」
「ああはなりたくないわ」
「ええ、本当に」
クスクスクス……
クスクスクス……
外交官のデュナミス・グローは赴任先の獣人国で、毎回ボロボロのドレスを着て夜会に参加するやせ細った女性を見てしまう。彼女はパルフォア・アルテサーノ伯爵夫人。どうやら、獣人が暮らすその国では『運命の番』という存在が特別視されていて、結婚後に運命の番が現れてしまったことで、本人には何の落ち度もないのに結婚生活が破綻するケースが問題となっているらしい。法律で離婚が認められていないせいで、夫からどんなに酷い扱いを受けても耐え続けるしかないのだ。
伯爵夫人との穏やかな交流の中で、デュナミスは陰口を叩かれても微笑みを絶やさない彼女の凛とした姿に次第に心惹かれていく。
それというのも、実はデュナミス自身にも国を出るに至ったつらい過去があって……
彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった
みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。
この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。
けれど、運命になんて屈しない。
“選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。
……そう決めたのに。
彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」
涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる