くたばれ番

あいうえお

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第二章

1話

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目が覚めて最初に目に入ったのは城にいた時よりも質素になった部屋と、手足についた罪人につけるような枷に鎖だった。

ジャラリという鎖が擦れる音に顔が引き攣る。

辺りには誰もおらず、人の気配がない。
部屋の中の移動はできるくらいの鎖の長さを見て、とりあえず部屋を探索することにした。
部屋にはトイレやお風呂も設置されており、人が住むには申し分ないものが揃っていた。

窓は無いがどうやら密閉されている訳では無く、どこからか心地よい風が吹いている。
この部屋は明らかに人を閉じこめるための部屋だ。

まぁ、逃げようとしたのだからしょうがないとは思うが、罪人のような扱いをされるとは思わなかった。

──アイカはどうなったんだろうか。

誰もいない何も出来ない空間だと、考え事が捗ってしまう。
この世界には色んな種族がいるとは聞いていたし、その中に魔族もいることは聞いていた。
あの男は私に余計な情報を与えまいとしていたけれど、アイカにこっそり教えて貰っていたから何となくわかる。

竜族と魔族は元々仲は良くないということ、そして冷戦状態なだけでいつ戦いが始まってもおかしくないということ。
魔族は人族と姿が余り変わらず、感情が無いわけでも、残虐非道な訳でもないらしい。

だが、あの時のアイカのあの様子では私を誘拐しに来たのというのはあながち嘘では無いのだろう。

アイカはきっとまだ生きてはいる。あの男は私がアイカを慕っていたのを知っているし、何より何の目的で私を誘拐しようとしたのかあの男も情報を知るために生かしておくほかない。


悶々と頭に浮かんでは消える考えに思わずため息が出る。


「随分長いため息だな」

随分と聞き覚えのある嫌いな声がした。声の方へと身体を向ければ、そこにはあの男がいた。

「少しは頭が冷えたか?」

普段の様子からは想像できないような冷たく淡々とした声でそういう男は本当に私を番だと甘い声を出していた人物と同一人物なのだろうか。
どこか闇を感じるその表情にずっと前からある恐怖が再熱する。


一歩、一歩と近づいてくるその男に私は逃げる事は出来ず、ただそこに座り込んだ。


「俺はどうやら甘やかしすぎていたらしい。」

甘やかしすぎていた?
何処がだ。

そんな考えが表情に出ていたのか目の前のリュカは語り始める。

曰く、私の衣食住は最高のものにしていた。

曰く、私のわがままはたくさん許していた。

曰く、優しく、そして様々なものから守ってきた。

その話を聞いてるうちに先程の恐怖とは違う、おぞましいほどの恐怖感が私を襲った。

──この人は本気で狂ってるんだ。

そう思わずには居られないほど男の話は自分勝手だった。
そもそも勝手に召喚したことを差し置いてこんなにも厚かましく自分がしてきたことを恩に着せる様に言うのはどうなんだ。

確かに私はこちらの常識を知らないし、側妃達とも上手くやれてなかったかもしれない。けれど本来であればそんなことものだ。私が恐怖に陥っているのが気にならないのかどうでもいいのか男はどんどん自分の感情を言葉にのせる。

「なのに、なぜ我が番は俺を望まない?人族だから番だと感じないとはいえ、俺達は運命の番であろう?」

そんな事を言いながら徐々に私に近づくリュカの目はどす黒く濁っていた。

「こ、来ないで」

私の拒絶などもはやどうでもいいのであろう。リュカは止まることなく進み、私の手首を掴んだ。


「俺を拒否するこの手も、逃げようとするその足も、切り落とせば、我が番はどこにも行かないだろう?」

ガタガタと歯が震える。この男は本気だ。
本気で私の手足を切り落とそうとしている。
殺気などではなくもはや狂気がこの空間を支配していた。

どこからともなく現れた剣を、リュカは握りしめ、こちらに向ける。

「ご、ごめ、あ、っご」

必死に謝ろうとするが、恐怖で震えが収まらず、言葉にすらならない。

振り上げられた剣が降りてくるのがやけにゆったりと見えた。


ヒュッと剣を振る音と共に目を瞑ると、左足がやけに熱い。
目を開けてみればどくどくと流れる血と私の切り離された足が見えた。

「う、え?」

痛みはない。だけど、熱い。尋常なく熱い。

「まずは左足。次は右足だ。」

彼はわけも分からずいる私を無視してまた剣を振り上げた。

──カキンッ

先程とは違う剣と剣がぶつかりあった音。

「おいおい、なんで俺が勇者を助ける側になってるんだよ」

私の前には大きな黒いもやの塊がいた。そのもやは段々晴れていきもやの中心には人が立っていた

「なぜ、貴様がいる……!」

先程より幾分が冷静になったのか、目の虚ろが消えたリュカが黒い男にそう問う。

「なぜ、も何も無いだろ。むしろこっちが聞きたいくらいだ。
なぜ、勇者召喚を行った。」

私の前に立つ男の顔は見えない。しかし、声には怒りが孕んでいた。
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