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第一章
* 一話 * 【始まりの夜】
しおりを挟む:主人公:
((ここは…どこだ…?身体が痺れて動かない…なにも思い出せない…))
ある雨の日、彼は目を覚ました。
目を覚ました場所は見たこともないベットの上だった。
:女性:
「あ、良かった。目が覚めたみたいね。」
彼のすぐ隣で大人の女性が話し掛けてきた。
:主人公:
「……ここは?…あんた…誰?」
痺れているせいか彼の口は上手くまわらない状態にあった。
:女性:
「ここは、町外れにある孤児院よ。私は岬、寺島 岬
[てらしま みさき]。ビックリしたわよ、雨が酷くて窓を覗いたらそこの大きな木に落雷が落ちたのよ。」
女性は窓の方に指を指した。
そこには炎上したであろう大木が炭のように真っ黒になり道をさえぎるように横たわっていた。
:岬:
「なによりもビックリしたのは、あなたよ。
燃えて倒れた木の根元にあなたが倒れてたのよ?」
:主人公:
「…え?」
:岬:
「覚えて…ないの?」
その女性は不思議そうに聞いてきたが、彼の方が不思議だった。
自分は一体なにを思ってそこにいたのか、何がしたかったのか全く覚えておらずわからないのだ。
:岬:
「急いであなたを助けに飛び出してなんとかこの孤児院の中まで運んだの。すぐ病院に連れて行こうと思ったんだけど、あの大木のせいで道が塞がれてるから行こうにも行けなくて…それに……」
そう言いながら女性は彼の身体をじっくりと見渡し、さらに不思議そうな顔をして口を開いた。
:岬:
「私の推測だと、あなたは落雷に巻き込まれたと思うの。…ううん、巻き込まれたはず。
なぜなら、あの大木付近のものは全て感電してたから。雨で濡れてたせいか車や街灯、全てがダメになってたわ。
でも…あなたは怪我一つしてないし……もし落雷に感電してたら大怪我じゃすまないし……あなた本当に大丈夫? なにもない??」
:主人公:
「いや…特には…」
:岬:
「本当?」
:主人公:
「……まぁ…うん…」
:岬:
「………………」
なにか疑うように女性は彼を見ていた。
:主人公:
「…身体が痺れて動かないぐらいかな」
そう言った瞬間
ースパーーン!ー
凄まじい勢いで彼は頭を叩かれた。
:岬:
「バカッ!!!あなたそれ感電してるじゃない!え?!どうしよう!」
:主人公:
「……いや、痺れてるだけで痛いとか熱いとかなにもないし全然 平気なんだけど」
:岬:
「そんなわけないでしょっ!!」
ースパーンッ!ー
続けざまに頭を叩かれた。
:岬:
「雷なんかに感電して平気なんてありえないから!下手したら死んでるわよ?!絶対どこか痛かったり熱かったりするはず!はっ?!まさか身体が麻痺して感覚がないとか!?えっ?その場合良いのかしら?いや!良くない!!」
女性は一人でありえないぐらいパニックになっていた。
:主人公:
「あのさ、感覚あるよ。」
:岬:
「え?!ほんと?!」
:主人公:
「うん、痛ーもん。あんたに叩かれたとこ」
:岬:
「…………」
:主人公:
「…………」
しばらく沈黙は続いた。
《続く》
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