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第二章 森都グラナダ
◇馬脚を露すというけれど。
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――ぐっぅぅぅぅ! くそっ、この痛みはいつまで続くんだ。
俺は生まれてこの方、味わった事も無い激痛に苛まされていた。その上、体全身が燃えるように熱い。例えるなら、炎で真っ赤になった火箸で、体を掻き混ぜれられてるようだ。
「……サラ、直ぐに皆を……避難させるんだ」
俺はあまりの激痛に意識が霞みそうになりながらも、側にいるサラにこっそり耳打ちする。
「えっ、何を言ってるのだヒューマン」
――ちっ、やはり分かっていないのか。
どうやらこの魔族は、【幻惑】系のスキルに似た術を使って、その姿を装っているようだ。ゲーム内では元々、ニンジャの職業が【幻惑】系統のスキルを得意としていた。そして俺は、そのニンジャの最上位職業たるニンジャマスターだ。だから、能力の上がった今は簡単にレジストできる。
俺にはギルド長の全身から放つ、禍々しいオーラが見えるが、どうやらサラ達には見えていないようだった。
「……魔族はギルド長だ」
周りには聞こえないように、更に囁くように耳打ちする。
「なにっ!」
サラが大きく目を見開き、驚いた表情を見せる。
「サラ様、これは一体何をなさってるのでしょうか?」
顔を上げたギルド長が白々しくも、訝しげな様子で尋ねてくる。
「おい、サラはまだ目を開けて良いとは言ってないだろ」
「いやしかし、何やらただならぬ様子でしたので……」
こいつ、まだ俺に正体が気付かれた事を分かってないな。それならそれで好都合。
俺も体が本調子じゃない。さっきより幾分痛みは和らいできたが、まだ体の節々が熱を持ってるようでだるい。それにちょっと動くだけで、痛みが走る。まるで全身が筋肉痛になってるようだ。
それと、今ここで戦闘にでもなれば、関係のないギルドの職員達や一階にいる商人などのヒューマン達にまで犠牲者が出そうだ。
だから、今は上手くこいつの話に合わせて、一旦はここから引き上げるべきだな。そして戦力を整え、この魔族がひとりになった所を急襲すれば、危険は少なくなるはず。
俺はそんな事を考え、ギルド長に声を掛けようとした。
しかし……。
「ギルド長バーリントン、お前に問い質したい事がある」
――あっ、馬鹿!
その前に、サラが勝手に、ギルド長を詰問し始めていた。
弟の事が心配で、周りが見えていないのか。いや、その前に魔族がなんたるか、分かっていないようだ。確か、ここ百年魔族は姿を現していないと言っていたな。だからなのだろう。
――これはまずい……ちゃんと説明しておけば良かった。
ゲーム内では、魔族の身体能力は獣人を凌駕し、その魔力もエルフより勝っていた。
俺はカンストした能力値だったのでソロでも討伐していたが、本来は上級プレイヤーがパーティ―を組んで討伐する強敵だった。何の準備もせず、こんな建物内で突発的に戦ってよい相手ではない。
俺は、それとなくサラの腕を引っ張るが、お構いなく二人の会話は続いていく。
「は、はい。何でございましょうか?」
「お前は真に、商業ギルドのギルド長であるバーリントンなのか?」
「あ、当たり前でございます。どこからどう見ても、わたくしはバーリントンでございますよ」
バーリントンは太った体を揺すって、大仰に驚いた様子を見せる。その瞳は落ち着きなくきょろきょろと動かし、とても魔族などには見えない。
何とも、芝居が上手いものだ。魔素を吸収する前の俺なら、何の疑いもなく騙されていただろう。だが、今の俺にはそんな芝居は通用しない。その禍々しいオーラと、魔族特有の真っ赤な色をした瞳の虹彩が、俺にははっきりと見えているのだから。
サラも少し眉を潜めて横目でちらりと俺を見ると、戸惑いの色をみせている。
「……取り敢えず、この近くにある治安局の詰所まで一緒に同行してもらおう」
「そんな無体な。私は正真正銘バーリントンです。それとも、何か他にお疑いになることでも、ございますのでしょうか」
「ふむ……お前には魔族の疑いがある」
――あっ、言ってしまいやがった。
「何を…… わたくしが、魔族などとは、これはまたとんだ濡れ衣でございますな。まさか、そこにいるヒューマンが何か言いましたかな」
ギルド長は苦笑いを浮かべるが、その目は笑っておらず、鋭い眼差しを俺に向けてきた。
サラも少し迷いがあるのか、戸惑う色の帯びた視線を向けてくる。
ここまできたら仕方ない。弟さんのためにも、この魔族をここで取り逃がす訳にはいかない。
俺はサラに向かって、自信を持って力強く頷く。それを見たサラも頷き、意を決して周りに言い放つ。
「皆、目を開けよ。そしてギルド長を直ちに拘束せよ!」
サラのその言葉に、タンガ達獣人が動き出し、このフロアーにいたヒューマン達ギルドの職員がざわめく。
タンガがその大柄な体と思えぬ動きで、身軽にカウンターを乗り越えた。他の獣人達も後に続く。
その様子に、ギルド長の近くにいた受付のお姉さんや、他の職員のヒューマン達はおろおろとしているだけだ。
「タンガ、気を付けろ! 職員の皆は、ギルド長から離れろ!」
俺は鋭い声を発して、皆に注意を促す。
だが、職員達が顔を青くしてギルド長から距離を取ろうとし、タンガがギルド長の腕を掴まえた時……。
「ガアァァァァァァァァァ!」
突然、ギルド長が雄叫びを上げると、額から一本の角がぬぅと伸び始めた。その顔は豚を思わせる醜悪な形相へと面変わりしていき、体の周囲には黒いオーラを纏わせる。そして、掴まれていた腕を力強く振りほどく。それは凄まじい力で、周りにいた職員達を巻き込み、辺りにあった机や椅子を破壊して、タンガは床に転がり呻き声を洩らしていた。
「タンガ!」
あのタフなタンガを、こうもあっさりと。その事に戦慄を覚える。
そして、後に続いていた獣人達も、先ほどまでのヒューマン振りに油断をしていたのか、ギルド長の豹変にぎょっと驚き体を竦ませている。
その隙を逃さず、ギルド長だった者が獣人達に襲い掛かった。たちまち、獣人達はタンガと同じように、周りの物を破壊しながら床に転がった。
単純に殴る蹴るだけでこれ程の威力とは……こいつは、下っ端の魔族じゃない。
側にいるサラも、目を剥いて驚いていた。
――くっ、分かっていたのに。
俺には、魔族が危険なのが分かっていたはずなのに。これは、まだゲーム感覚から抜けきれない、俺の油断が招いた結果。
だが、まだ間に合う。幸いな事にタンガを始めとする獣人戦士達は、床に転がり呻き声を上げ続けている。それは、まだ息があるということだ。それなら、霊薬を与えれば。
痛む体に鞭を打ち、タンガ達に駆け寄ろうとするが、その前に……。
「オ前ダナ、妙ナヒューマン。ワレノ正体ヲ暴イタノハ。アト少シ、来月ニハワレラノ計画ガ動キ出ストイウノニ。トンダ邪魔ガハイッタモノダ。ココデ始末ヲサセテモラオウ」
魔族が聞き取りにくい陰に隠った声で言葉を発すると、目の前にあるカウンターを気にせず、此方に突っ込んできたのだ。
――マジかよ……あっ、痛(つっ)!
俺は咄嗟に躱そうとするが、急に動こうとしたため体に激痛が走る。
――しまった!
あまりの痛みにその動きは鈍くなり、魔族の突進を躱しそこねたのだ。
魔族は轟音を響かせカウンターを粉砕し、そのままの勢いで俺に体当たりする。俺はあっさり吹き飛ばされると、強烈な勢いで壁に激突してしまった。
「ぐはっ!」
そして、壁に全身を打ち付けた痛みに、意識はあっさりと暗転して飛んでしまったのだ。
闇に閉ざされた意識に、すぅと目映い光が差し込む。その光の眩しさに、思わずはっとして目を覚ます。
――ん、ここは……あっ! 俺は気を失っていたのか?
戦闘中に意識を無くすとは、致命的な事だ。
慌てて周囲に目を走らせると、獣人の戦士達やギルドの職員が、呻き声を上げて床に転がっている。サラの周囲には、カリナを始めてするサンタール家のヒューマン達が、その身を挺して守るように囲んでいた。
サラやカリナ達が無事な事に、ほっとし、少し安堵する。
だが、彼女らの前にはグイドがただひとり、大きな盾で魔族の猛攻を辛うじて捌いていた。
俺はどうやら、壁に激突した衝撃でほんの数瞬だけ気を失っていたようだ。そして、どういう訳か不思議な事に、先ほどまで苛んでいた痛みがすっかりと無くなり、妙に体が軽い。
これは、意識を閉ざしたお陰で、レベルアップが一気に進んだのだろうか。
しかし、今はそれがありがたい。
俺は念の為、霊薬を取り出し一気に飲み干す。
体に漲る力を感じながら、改めてサラ達に目を向ける。と、魔族の纏う黒いオーラが槍状に姿を変え、グイドに襲い掛かろうとしていた。
――あれは、闇魔法!
純粋な戦士であるグイドには、あれを防ぐのは難しいはず。
「【セイントシールド】!」
俺は咄嗟に、神官の魔法スキルを発動させる。【セイントシールド】は対闇魔法に特化した障壁。魔力の増した今の俺なら難なく使えるはずだ。
グイドやサラ達の前に現れた白く発色する障壁が、間一髪で魔族の闇魔法を弾き返していた。
「おぉ!」
サラ達が驚きの声を上げ、魔族までもが……。
「ナニ! ナニガ起キタ。コレハナンダ!」
驚嘆した声を響かせる魔族から目を離さず、俺はゆっくりと立ち上がる。と、それに気付いたサラが、此方に振り向き声を掛けてくる。
「ヒューマン、無事だったのか。これはお前が?」
サラが目の前に現れた障壁を指差す。
「あぁ、そうだ。そいつは対闇魔法の障壁」
驚くサラに、俺はにやりと笑ってみせる。
「待たせたな。バトンタッチだ。ここからは俺に任せておけ」
サラ達の傍らに素早く駆け寄ると、俺はギルド長だった魔族と向き合い、険しい眼差しで睨み付けた。
――さっきの借り、返させてもらうぞ!
俺は生まれてこの方、味わった事も無い激痛に苛まされていた。その上、体全身が燃えるように熱い。例えるなら、炎で真っ赤になった火箸で、体を掻き混ぜれられてるようだ。
「……サラ、直ぐに皆を……避難させるんだ」
俺はあまりの激痛に意識が霞みそうになりながらも、側にいるサラにこっそり耳打ちする。
「えっ、何を言ってるのだヒューマン」
――ちっ、やはり分かっていないのか。
どうやらこの魔族は、【幻惑】系のスキルに似た術を使って、その姿を装っているようだ。ゲーム内では元々、ニンジャの職業が【幻惑】系統のスキルを得意としていた。そして俺は、そのニンジャの最上位職業たるニンジャマスターだ。だから、能力の上がった今は簡単にレジストできる。
俺にはギルド長の全身から放つ、禍々しいオーラが見えるが、どうやらサラ達には見えていないようだった。
「……魔族はギルド長だ」
周りには聞こえないように、更に囁くように耳打ちする。
「なにっ!」
サラが大きく目を見開き、驚いた表情を見せる。
「サラ様、これは一体何をなさってるのでしょうか?」
顔を上げたギルド長が白々しくも、訝しげな様子で尋ねてくる。
「おい、サラはまだ目を開けて良いとは言ってないだろ」
「いやしかし、何やらただならぬ様子でしたので……」
こいつ、まだ俺に正体が気付かれた事を分かってないな。それならそれで好都合。
俺も体が本調子じゃない。さっきより幾分痛みは和らいできたが、まだ体の節々が熱を持ってるようでだるい。それにちょっと動くだけで、痛みが走る。まるで全身が筋肉痛になってるようだ。
それと、今ここで戦闘にでもなれば、関係のないギルドの職員達や一階にいる商人などのヒューマン達にまで犠牲者が出そうだ。
だから、今は上手くこいつの話に合わせて、一旦はここから引き上げるべきだな。そして戦力を整え、この魔族がひとりになった所を急襲すれば、危険は少なくなるはず。
俺はそんな事を考え、ギルド長に声を掛けようとした。
しかし……。
「ギルド長バーリントン、お前に問い質したい事がある」
――あっ、馬鹿!
その前に、サラが勝手に、ギルド長を詰問し始めていた。
弟の事が心配で、周りが見えていないのか。いや、その前に魔族がなんたるか、分かっていないようだ。確か、ここ百年魔族は姿を現していないと言っていたな。だからなのだろう。
――これはまずい……ちゃんと説明しておけば良かった。
ゲーム内では、魔族の身体能力は獣人を凌駕し、その魔力もエルフより勝っていた。
俺はカンストした能力値だったのでソロでも討伐していたが、本来は上級プレイヤーがパーティ―を組んで討伐する強敵だった。何の準備もせず、こんな建物内で突発的に戦ってよい相手ではない。
俺は、それとなくサラの腕を引っ張るが、お構いなく二人の会話は続いていく。
「は、はい。何でございましょうか?」
「お前は真に、商業ギルドのギルド長であるバーリントンなのか?」
「あ、当たり前でございます。どこからどう見ても、わたくしはバーリントンでございますよ」
バーリントンは太った体を揺すって、大仰に驚いた様子を見せる。その瞳は落ち着きなくきょろきょろと動かし、とても魔族などには見えない。
何とも、芝居が上手いものだ。魔素を吸収する前の俺なら、何の疑いもなく騙されていただろう。だが、今の俺にはそんな芝居は通用しない。その禍々しいオーラと、魔族特有の真っ赤な色をした瞳の虹彩が、俺にははっきりと見えているのだから。
サラも少し眉を潜めて横目でちらりと俺を見ると、戸惑いの色をみせている。
「……取り敢えず、この近くにある治安局の詰所まで一緒に同行してもらおう」
「そんな無体な。私は正真正銘バーリントンです。それとも、何か他にお疑いになることでも、ございますのでしょうか」
「ふむ……お前には魔族の疑いがある」
――あっ、言ってしまいやがった。
「何を…… わたくしが、魔族などとは、これはまたとんだ濡れ衣でございますな。まさか、そこにいるヒューマンが何か言いましたかな」
ギルド長は苦笑いを浮かべるが、その目は笑っておらず、鋭い眼差しを俺に向けてきた。
サラも少し迷いがあるのか、戸惑う色の帯びた視線を向けてくる。
ここまできたら仕方ない。弟さんのためにも、この魔族をここで取り逃がす訳にはいかない。
俺はサラに向かって、自信を持って力強く頷く。それを見たサラも頷き、意を決して周りに言い放つ。
「皆、目を開けよ。そしてギルド長を直ちに拘束せよ!」
サラのその言葉に、タンガ達獣人が動き出し、このフロアーにいたヒューマン達ギルドの職員がざわめく。
タンガがその大柄な体と思えぬ動きで、身軽にカウンターを乗り越えた。他の獣人達も後に続く。
その様子に、ギルド長の近くにいた受付のお姉さんや、他の職員のヒューマン達はおろおろとしているだけだ。
「タンガ、気を付けろ! 職員の皆は、ギルド長から離れろ!」
俺は鋭い声を発して、皆に注意を促す。
だが、職員達が顔を青くしてギルド長から距離を取ろうとし、タンガがギルド長の腕を掴まえた時……。
「ガアァァァァァァァァァ!」
突然、ギルド長が雄叫びを上げると、額から一本の角がぬぅと伸び始めた。その顔は豚を思わせる醜悪な形相へと面変わりしていき、体の周囲には黒いオーラを纏わせる。そして、掴まれていた腕を力強く振りほどく。それは凄まじい力で、周りにいた職員達を巻き込み、辺りにあった机や椅子を破壊して、タンガは床に転がり呻き声を洩らしていた。
「タンガ!」
あのタフなタンガを、こうもあっさりと。その事に戦慄を覚える。
そして、後に続いていた獣人達も、先ほどまでのヒューマン振りに油断をしていたのか、ギルド長の豹変にぎょっと驚き体を竦ませている。
その隙を逃さず、ギルド長だった者が獣人達に襲い掛かった。たちまち、獣人達はタンガと同じように、周りの物を破壊しながら床に転がった。
単純に殴る蹴るだけでこれ程の威力とは……こいつは、下っ端の魔族じゃない。
側にいるサラも、目を剥いて驚いていた。
――くっ、分かっていたのに。
俺には、魔族が危険なのが分かっていたはずなのに。これは、まだゲーム感覚から抜けきれない、俺の油断が招いた結果。
だが、まだ間に合う。幸いな事にタンガを始めとする獣人戦士達は、床に転がり呻き声を上げ続けている。それは、まだ息があるということだ。それなら、霊薬を与えれば。
痛む体に鞭を打ち、タンガ達に駆け寄ろうとするが、その前に……。
「オ前ダナ、妙ナヒューマン。ワレノ正体ヲ暴イタノハ。アト少シ、来月ニハワレラノ計画ガ動キ出ストイウノニ。トンダ邪魔ガハイッタモノダ。ココデ始末ヲサセテモラオウ」
魔族が聞き取りにくい陰に隠った声で言葉を発すると、目の前にあるカウンターを気にせず、此方に突っ込んできたのだ。
――マジかよ……あっ、痛(つっ)!
俺は咄嗟に躱そうとするが、急に動こうとしたため体に激痛が走る。
――しまった!
あまりの痛みにその動きは鈍くなり、魔族の突進を躱しそこねたのだ。
魔族は轟音を響かせカウンターを粉砕し、そのままの勢いで俺に体当たりする。俺はあっさり吹き飛ばされると、強烈な勢いで壁に激突してしまった。
「ぐはっ!」
そして、壁に全身を打ち付けた痛みに、意識はあっさりと暗転して飛んでしまったのだ。
闇に閉ざされた意識に、すぅと目映い光が差し込む。その光の眩しさに、思わずはっとして目を覚ます。
――ん、ここは……あっ! 俺は気を失っていたのか?
戦闘中に意識を無くすとは、致命的な事だ。
慌てて周囲に目を走らせると、獣人の戦士達やギルドの職員が、呻き声を上げて床に転がっている。サラの周囲には、カリナを始めてするサンタール家のヒューマン達が、その身を挺して守るように囲んでいた。
サラやカリナ達が無事な事に、ほっとし、少し安堵する。
だが、彼女らの前にはグイドがただひとり、大きな盾で魔族の猛攻を辛うじて捌いていた。
俺はどうやら、壁に激突した衝撃でほんの数瞬だけ気を失っていたようだ。そして、どういう訳か不思議な事に、先ほどまで苛んでいた痛みがすっかりと無くなり、妙に体が軽い。
これは、意識を閉ざしたお陰で、レベルアップが一気に進んだのだろうか。
しかし、今はそれがありがたい。
俺は念の為、霊薬を取り出し一気に飲み干す。
体に漲る力を感じながら、改めてサラ達に目を向ける。と、魔族の纏う黒いオーラが槍状に姿を変え、グイドに襲い掛かろうとしていた。
――あれは、闇魔法!
純粋な戦士であるグイドには、あれを防ぐのは難しいはず。
「【セイントシールド】!」
俺は咄嗟に、神官の魔法スキルを発動させる。【セイントシールド】は対闇魔法に特化した障壁。魔力の増した今の俺なら難なく使えるはずだ。
グイドやサラ達の前に現れた白く発色する障壁が、間一髪で魔族の闇魔法を弾き返していた。
「おぉ!」
サラ達が驚きの声を上げ、魔族までもが……。
「ナニ! ナニガ起キタ。コレハナンダ!」
驚嘆した声を響かせる魔族から目を離さず、俺はゆっくりと立ち上がる。と、それに気付いたサラが、此方に振り向き声を掛けてくる。
「ヒューマン、無事だったのか。これはお前が?」
サラが目の前に現れた障壁を指差す。
「あぁ、そうだ。そいつは対闇魔法の障壁」
驚くサラに、俺はにやりと笑ってみせる。
「待たせたな。バトンタッチだ。ここからは俺に任せておけ」
サラ達の傍らに素早く駆け寄ると、俺はギルド長だった魔族と向き合い、険しい眼差しで睨み付けた。
――さっきの借り、返させてもらうぞ!
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