綺麗な先生は好きですか?

くるむ

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第六章

先生と志緒利さん

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先生の唇は、ふわりと優しく重ねた後簡単に離れていった。

え~?
もうちょっとぉ……。

あまりにもあっけなく離れていった先生の唇が、名残惜しくてしょうがない。
あれじゃ足りない!って思いで、先生をじーっと見つめていたら、コツンと額を叩かれた。

「そういうイチャイチャは、もうちょっと後でな。そろそろ風呂にも入らなきゃだから、着替え持って降りるぞ」
「んー、分かった……」

先生の言う事は、もっともだ。
仕方がないから、俺も渋々だけどそれに従った。

一階に降りると、柳瀬さんと渚さんが2人で風呂に入っているとの事だった。女の人達は、俺らが来る前に済ませているそうだ。

「遠山は? もう済んだのか?」
「いや、まだ。俺はいつも寝る直前に入るから、最後でいいわ」

「……お風呂場、大の男が2人で入れるほど大きいの?」

俺の疑問に、遠山さんが答えてくれた。

「ああ。十分の大きさだったよ。女子らはちょっと狭いかもだけど、3人で入ることも出来るんじゃないかな。一応本館の方には大浴場で、ジャグジーもあるらしいよ」

「ふーん」
「あんま、興味ない?」
「うん」

だって、大浴場だろ?
万が一のことがあるから、先生と入れてもイチャイチャ出来ないし。それに先生の裸、他の誰かに見せたくなんかない。
お風呂自体に、それほど興味も無いしな。

「私も大浴場って、あんまり好きじゃないんだよなー。お風呂は1人でゆっくり入りたいもの。それにしても、8人もいるんだからバスルーム、2つくらいあればいいのにね」

「当初の予定は5人だったんだけどな」

小波さんが、何気なくぼやいたことに先生が冷たく切り返した。一瞬、その場の空気が凍り付く。

ポスン。

突然先生の頭の上に、食パンの袋が乗っかった。
志緒利さんが悪戯っぽく笑いながら、冷えた空気を壊し始める。

「ほんっと、相変わらずねぇ、澪は。渚くんみたいにムードメーカーになれとは言わないけど、もうちょっと大らかになりなさいよ」

「…………」
先生は、ちょっとムッとした表情で横を向き不貞腐れたような態度をとった。

ここに来ての、志緒利さんに見せる初めての先生の態度や表情が、やっぱり俺の気持ちを不安にさせる。
これって、気心知れていて仲がいいから見せられる表情じゃないのか?

「ところで、朝はパンでいいかな? 一応、お米も持ってきてはいるけど」
「パンで大丈夫だよ、南くんは?」

遠山さんが、気を遣ってか俺にも尋ねる。志緒利さんも、ニコニコしながら俺の返事を待っている。

「……パンで、大丈夫です」

俺の言葉に、志緒利さんはにっこり笑って今度は皆をぐるりと見渡した。
それに、みんなパンでいいよと返事を返す。
ここは予約すれば朝食と夕食はレストランでできるらしいのだが、どうやらレストランでの食事は一切しないみたいだ。
女子が混じった時点で、皆でワイワイとキッチンで食事を作るという方向に決まったらしい。

「買い出しは柳瀬君と2人でしてきたんだけど、お金は柳瀬君が立替てくれたの。この金額だから、後で柳瀬君に払ってね」
 
そう言って志緒利さんは、レシートの横に人数分で割った金額が書かれているのを見せてくれた。

気が利いて、そつなく色んなことをこなす人。
……それでもって、アノ先生をまるで子供のように扱いながら、先生を怒らせない人。
先生は本当に気にもしていないみたいだけど、他人に興味がないと言い切る先生の、志緒利さんに向ける信頼や素直さは俺の心をかき乱してしょうがなかった。

だって、渚さんとは違う信頼感だ。
……綺麗な人だし。

「お待たせー。澪、入るだろ? 南くんと入ってこいよ」

バスルームから、俺の悶々とした気持ちを吹き飛ばすような、いつもの明るい渚さんの声が聞こえてきてハッとする。

「おう」

軽く返事をした先生が、着替えをもって席を立った。

「行こう、南」

コイコイと手招きされて、俺も着替えを手に、先生の後に続いた。
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