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第七章
先生の家族 3
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名前を呼ばれて席に着いた。
メニュー表とにらめっこして、生姜焼き定食をチョイス。
先生は悩んだ末にカレイの煮つけ定食、渚さんと柳瀬さんはヒレカツ定食を選んだ。
「珍しいな、お前がサカナ頼むのって」
「……まあな。気が付いた時くらいは、普段食わないもの食った方が良いかなと思って」
「へえー。でもいい傾向だね。紫藤は食にも興味なさすぎだから」
「……あ」
「え?」
思わず零れた俺の声に、渚さんが気が付いて顔を向けた。
「あ、いえっ、なんでも無いです」
焦って手を振ったら、渚さんは何となく察してくれたらしく深くは追及しては来なかった。
先生たちの会話を聞いて思い出したんだ。
俺が、先生があまりにもいい加減な食生活をしていることを知った時に、俺のためにも健康に注意してほしいって言ったことを。
もしかしたらその事が脳裏に残っていて、ちょっぴり食を意識するようになっているのかもしれない。そうだったら嬉しいんだけど。
「ところで、連休はもうあと2日だよね。みんなこの後は、どうするんだい?」
柳瀬さんが、注文したヒレカツを頬張りながら皆に問いかけた。
「俺は実家に呼ばれてる。面倒くさいから出来れば無視したいんだけど、なんだか親父のやつが、色々俺に言っておきたいことがあるらしいんだ」
「そういや、渚は跡取りだもんな」
「お前ならあの親父さんだって安心してるんじゃないのか? 面倒くさいことは無さそうだけど」
「え? 渚さんって良いとこのお坊ちゃんなんですか?」
素っ頓狂な俺の声に、3人が同時に俺を振り返った。
「そうだ。見えないだろ、そんな風には」
「でも、飄々として、身のこなしがスマートなところもあるよね」
先生と柳瀬さんの返事に、渚さんが本当にお坊ちゃんなんだと分かり目をパチクリとさせた。
「……良いとこのお坊ちゃんってのはどうかと思うけど。爺さんが創業した会社を親父が引き継いでいて、俺も一応跡取りではあるけど」
「ふわー……」
庶民の俺の周りはみんな庶民だから、"社長のご子息"って言う人に初めて会った。
ホケーと見ていたら、渚さんが違う違うと手をひらひらと振った。
「南くんが想像してるのは大企業なんだろうけど、俺の所はそんなに大きくないから。いわゆる中小企業だ」
「謙遜するなよ。お前のとこは、規模はでかくは無くても堅実な経営をしているじゃないか」
「だよな。一応関連した子会社も持ってるし」
「ふえー……」
渚さんの普段の気さくな感じからは想像出来なかった実態に、俺は憧れにも似た気持ちで渚さんをポカーンと見る。それに気づいた渚さんが、参ったなといった感じで頭を掻いていた。
「家庭環境がどうだろうが、別にどうでもいいことだよ。そんな事より、本人がどうあるかってことが重要だろ?」
「はい、それはもちろんです!」
そりゃ、そうだ。友達になりたいと思うのも、人に恋をする時も、いちいち相手の家庭環境がどうだとかそんな事を俺はいちいち気にしたりなんてしない。
先生を好きになった時だって、同じ男同士でしかも年上で、相手にしてもらえないって思っていながらも好きでいることを止められなかった。
そして本性を知った時だって、信じられなくて驚愕したけど、それでもやっぱり好きな気持ちは消えなかった。
今は、先生のことを支えてあげられる存在になれたらって、そんな事まで考えている。
そう思って先生の顔をじっと見る。
気が付いて俺と目が合った先生は、口角を上げてにこりと笑った後、俺の頭をくしゃりと撫でた。
メニュー表とにらめっこして、生姜焼き定食をチョイス。
先生は悩んだ末にカレイの煮つけ定食、渚さんと柳瀬さんはヒレカツ定食を選んだ。
「珍しいな、お前がサカナ頼むのって」
「……まあな。気が付いた時くらいは、普段食わないもの食った方が良いかなと思って」
「へえー。でもいい傾向だね。紫藤は食にも興味なさすぎだから」
「……あ」
「え?」
思わず零れた俺の声に、渚さんが気が付いて顔を向けた。
「あ、いえっ、なんでも無いです」
焦って手を振ったら、渚さんは何となく察してくれたらしく深くは追及しては来なかった。
先生たちの会話を聞いて思い出したんだ。
俺が、先生があまりにもいい加減な食生活をしていることを知った時に、俺のためにも健康に注意してほしいって言ったことを。
もしかしたらその事が脳裏に残っていて、ちょっぴり食を意識するようになっているのかもしれない。そうだったら嬉しいんだけど。
「ところで、連休はもうあと2日だよね。みんなこの後は、どうするんだい?」
柳瀬さんが、注文したヒレカツを頬張りながら皆に問いかけた。
「俺は実家に呼ばれてる。面倒くさいから出来れば無視したいんだけど、なんだか親父のやつが、色々俺に言っておきたいことがあるらしいんだ」
「そういや、渚は跡取りだもんな」
「お前ならあの親父さんだって安心してるんじゃないのか? 面倒くさいことは無さそうだけど」
「え? 渚さんって良いとこのお坊ちゃんなんですか?」
素っ頓狂な俺の声に、3人が同時に俺を振り返った。
「そうだ。見えないだろ、そんな風には」
「でも、飄々として、身のこなしがスマートなところもあるよね」
先生と柳瀬さんの返事に、渚さんが本当にお坊ちゃんなんだと分かり目をパチクリとさせた。
「……良いとこのお坊ちゃんってのはどうかと思うけど。爺さんが創業した会社を親父が引き継いでいて、俺も一応跡取りではあるけど」
「ふわー……」
庶民の俺の周りはみんな庶民だから、"社長のご子息"って言う人に初めて会った。
ホケーと見ていたら、渚さんが違う違うと手をひらひらと振った。
「南くんが想像してるのは大企業なんだろうけど、俺の所はそんなに大きくないから。いわゆる中小企業だ」
「謙遜するなよ。お前のとこは、規模はでかくは無くても堅実な経営をしているじゃないか」
「だよな。一応関連した子会社も持ってるし」
「ふえー……」
渚さんの普段の気さくな感じからは想像出来なかった実態に、俺は憧れにも似た気持ちで渚さんをポカーンと見る。それに気づいた渚さんが、参ったなといった感じで頭を掻いていた。
「家庭環境がどうだろうが、別にどうでもいいことだよ。そんな事より、本人がどうあるかってことが重要だろ?」
「はい、それはもちろんです!」
そりゃ、そうだ。友達になりたいと思うのも、人に恋をする時も、いちいち相手の家庭環境がどうだとかそんな事を俺はいちいち気にしたりなんてしない。
先生を好きになった時だって、同じ男同士でしかも年上で、相手にしてもらえないって思っていながらも好きでいることを止められなかった。
そして本性を知った時だって、信じられなくて驚愕したけど、それでもやっぱり好きな気持ちは消えなかった。
今は、先生のことを支えてあげられる存在になれたらって、そんな事まで考えている。
そう思って先生の顔をじっと見る。
気が付いて俺と目が合った先生は、口角を上げてにこりと笑った後、俺の頭をくしゃりと撫でた。
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