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第九章
海老原の報告 2 紫藤視点
「紫藤って、連絡とかマメにしないタイプなんだ」
「そうだよ。こいつ、綺麗な顔してるから繊細じゃないかって思うだろうけど違うからな。……そう言えばお前、和田には職場モードで対応していたな」
呆気にとられた表情で言う海老原に答えた後、渚は俺に視線を向けた。
「遭遇した時に内の生徒がいただろ? 後々の事を考えて、その方が無難かなと思ったんだよ。だから和田から連絡があった時も、そのまま職場モードで対応している」
「成程ね。で? 明日はどうする?」
「ああ。店に電話して押さえている部屋の確認もしておいたから、隣の部屋を予約しておいた」
「部屋の指定まで出来るのか?」
居酒屋で部屋指定をするというのにも驚いたが、そんな風に他人の押さえている部屋なんて聞かれて、店側は怪訝に思わなかったんだろうか。
そんな驚く俺の表情を見て、海老原が笑いながら教えてくれた。
「華雫は居酒屋でありながら、お洒落な部屋が売りの店なんだよ。だから女子らに人気があって、カップルらも記念日なんかに使う人たちが結構いるんだ。だからその店の"売り"を利用してな、カップルの男性がプロポーズを予定していて、俺らはサプライズで花束を渡す役割を担っているから隣の部屋で待機したいって言ったら快くオーケーしてくれたんだよ。もちろんこの事はサプライズなので、誰にも言わないでくれと念押しもしておいた」
「……そのカップルの男性ってのが俺なのか?」
あからさまに嫌そうな顔をして見せたら、渚と海老原に笑われた。
「仕方ないだろ。その他に案が浮かばなかったんだから」
「……まあ、いいけどさ」
「明日は7時だったよな。ちゃんと時間には部屋で待機しているから、安心していろ」
「……分かった。手間かけて悪いな」
「気にするな。どうってことない」
特に礼なんていらないと言われているから奢りは無しだが、こいつらに何か困ったことが起きた時は、ちゃんと力になってやろうと思う。
偏屈で人付き合いも上手くなかっただろう俺の父親には、当時、こうやって力になってくれる友人もいなかったんじゃないかと推測できた。
そう思うと、こうやってひょうひょうと俺の傍に居てくれる渚には感謝しかない。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るな」
「ああ、明日な」
立ち上がって帰ろうとスマホを手に取った途端、着信があった。
南からの電話だ。
覗き込んで相手が南だと確認した渚が、笑いながら手を振って「出ろ」と合図をした。
俺はそれに甘えて手を振り玄関を開け外に出て、南からの電話に出た。
「先生、今大丈夫? 時間、遅すぎたかな」
「いや、大丈夫だ――」
明日の事は、明日考えればいい。
今は素直に、自分の事を思ってくれる人たちの好意に甘えていよう。
こんな俺を支えてくれるみんなに感謝しながら、俺は南の心地いい声に癒されていた。
「そうだよ。こいつ、綺麗な顔してるから繊細じゃないかって思うだろうけど違うからな。……そう言えばお前、和田には職場モードで対応していたな」
呆気にとられた表情で言う海老原に答えた後、渚は俺に視線を向けた。
「遭遇した時に内の生徒がいただろ? 後々の事を考えて、その方が無難かなと思ったんだよ。だから和田から連絡があった時も、そのまま職場モードで対応している」
「成程ね。で? 明日はどうする?」
「ああ。店に電話して押さえている部屋の確認もしておいたから、隣の部屋を予約しておいた」
「部屋の指定まで出来るのか?」
居酒屋で部屋指定をするというのにも驚いたが、そんな風に他人の押さえている部屋なんて聞かれて、店側は怪訝に思わなかったんだろうか。
そんな驚く俺の表情を見て、海老原が笑いながら教えてくれた。
「華雫は居酒屋でありながら、お洒落な部屋が売りの店なんだよ。だから女子らに人気があって、カップルらも記念日なんかに使う人たちが結構いるんだ。だからその店の"売り"を利用してな、カップルの男性がプロポーズを予定していて、俺らはサプライズで花束を渡す役割を担っているから隣の部屋で待機したいって言ったら快くオーケーしてくれたんだよ。もちろんこの事はサプライズなので、誰にも言わないでくれと念押しもしておいた」
「……そのカップルの男性ってのが俺なのか?」
あからさまに嫌そうな顔をして見せたら、渚と海老原に笑われた。
「仕方ないだろ。その他に案が浮かばなかったんだから」
「……まあ、いいけどさ」
「明日は7時だったよな。ちゃんと時間には部屋で待機しているから、安心していろ」
「……分かった。手間かけて悪いな」
「気にするな。どうってことない」
特に礼なんていらないと言われているから奢りは無しだが、こいつらに何か困ったことが起きた時は、ちゃんと力になってやろうと思う。
偏屈で人付き合いも上手くなかっただろう俺の父親には、当時、こうやって力になってくれる友人もいなかったんじゃないかと推測できた。
そう思うと、こうやってひょうひょうと俺の傍に居てくれる渚には感謝しかない。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るな」
「ああ、明日な」
立ち上がって帰ろうとスマホを手に取った途端、着信があった。
南からの電話だ。
覗き込んで相手が南だと確認した渚が、笑いながら手を振って「出ろ」と合図をした。
俺はそれに甘えて手を振り玄関を開け外に出て、南からの電話に出た。
「先生、今大丈夫? 時間、遅すぎたかな」
「いや、大丈夫だ――」
明日の事は、明日考えればいい。
今は素直に、自分の事を思ってくれる人たちの好意に甘えていよう。
こんな俺を支えてくれるみんなに感謝しながら、俺は南の心地いい声に癒されていた。
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