4 / 122
第一章
エイドリアン・スチュワート・サヴィル
しおりを挟む
毒殺されないためには、僕の普段の言動にも気をつけなければならない。きついだなんてもちろん言っていられない。
現在の日付から考えれば、このころはブライアンだけではなく、みんなからも陰口や悪口を叩かれていた。
兄上だって、学園内で僕を見かけても眉をしかめて遠巻きに見ているだけだった。
あ、でも一人だけ、こんな僕に対しても話しかけたり注意してくれる人が居たな。兄上の親友でサヴィル公爵家の嫡男、エイドリアンだ。うざいと思ってたけど、今から考えたら彼はとても親切だった。
今までは僕が朝遅いせいで、兄上と同じ馬車に乗っては行けなかったんだけど、今日は同乗している。
居心地は最悪だ。何も話すことがないから、異様な静けさが漂ってるし。
馬車が止まった。
「着いたぞ」
どうやら一言も喋らないうちに学園についてしまったようだ。
馬車を降りると見知った顔が近寄ってきた。
「よう、あれー、珍しい顔があるな」
「おはようございます、エイドリアン様」
「うわっ、なんだ今日はあいさつもしてくれるのか」
やっぱウザい。
顔をしかめただろう僕を見たのに、エイドリアンは楽しそうだ。
「様はいらないよ」
「えっ?」
「エイドリアンでいい」
「えっ、でも」
僕が戸惑っているのは分かっているだろうに、エイドリアンは引く気がないようだった。もごもごしていると、エイドリアンは腰に手を当てて小首をかしげた。
「しょうがないな。呼び捨てが難しいなら、エイドリアンお兄様と呼べ」
「エイドリアンで!」
すかさず反応した僕に、エイドリアンは爆笑した。
「いいなあ、アラン。お前の弟、俺好きだわ」
「それはよかったな」
兄上の疲れたような声に、エイドリアンは気にもせず笑顔で頷いている。
エイドリアンは、サヴィル公爵家の嫡男だが気さくな性格だ。だから親友である兄上に対して、敬語を使われるのを嫌がったようだ。おかげでこの規律正しい兄上までもが、エイドリアンに対してぞんざいな口調になっている。
とにかく変わっているのだ、この人は。
「ブライアン様、おはようございますー」
聞き覚えのある甘くて少し高めの声。ジェイミーだ。
殺される前の僕だったら、きっとこの声を聞いたらブライアンのもとに突進して行っただろう。でも今度は、もう間違えたりしない。気のない相手を振り向かせようだなんて、もうそんな馬鹿な事はしないしジェイミーのことも無視だ。
視線を感じて顔を上げると兄上がじっとこちらを見ていた。
「……何ですか?」
「えっ? ああ、いや」
どうせ僕がまた、ブライアンの所に走っていくと思ったんだろう。それなのに動こうとしない僕を、不思議に思ってるというところか。
笑える。
ほんと笑えるよな。短絡的でバカだった自分に。
ぐいっと肩を引き寄せられてびっくりした。
「遅刻しないように歩こうぜ」
えっ? えっ? えっ?
誰かと肩を組むなんて経験なかったからびっくりしてしまった。エイドリアンは戸惑ってる僕を気にすることなく、そのまま肩を抱いて歩き続ける。兄上はその隣に並んでいる。
おかげで、まるで仲がいい兄弟のように校内を歩くという、初めての経験をしていた。
現在の日付から考えれば、このころはブライアンだけではなく、みんなからも陰口や悪口を叩かれていた。
兄上だって、学園内で僕を見かけても眉をしかめて遠巻きに見ているだけだった。
あ、でも一人だけ、こんな僕に対しても話しかけたり注意してくれる人が居たな。兄上の親友でサヴィル公爵家の嫡男、エイドリアンだ。うざいと思ってたけど、今から考えたら彼はとても親切だった。
今までは僕が朝遅いせいで、兄上と同じ馬車に乗っては行けなかったんだけど、今日は同乗している。
居心地は最悪だ。何も話すことがないから、異様な静けさが漂ってるし。
馬車が止まった。
「着いたぞ」
どうやら一言も喋らないうちに学園についてしまったようだ。
馬車を降りると見知った顔が近寄ってきた。
「よう、あれー、珍しい顔があるな」
「おはようございます、エイドリアン様」
「うわっ、なんだ今日はあいさつもしてくれるのか」
やっぱウザい。
顔をしかめただろう僕を見たのに、エイドリアンは楽しそうだ。
「様はいらないよ」
「えっ?」
「エイドリアンでいい」
「えっ、でも」
僕が戸惑っているのは分かっているだろうに、エイドリアンは引く気がないようだった。もごもごしていると、エイドリアンは腰に手を当てて小首をかしげた。
「しょうがないな。呼び捨てが難しいなら、エイドリアンお兄様と呼べ」
「エイドリアンで!」
すかさず反応した僕に、エイドリアンは爆笑した。
「いいなあ、アラン。お前の弟、俺好きだわ」
「それはよかったな」
兄上の疲れたような声に、エイドリアンは気にもせず笑顔で頷いている。
エイドリアンは、サヴィル公爵家の嫡男だが気さくな性格だ。だから親友である兄上に対して、敬語を使われるのを嫌がったようだ。おかげでこの規律正しい兄上までもが、エイドリアンに対してぞんざいな口調になっている。
とにかく変わっているのだ、この人は。
「ブライアン様、おはようございますー」
聞き覚えのある甘くて少し高めの声。ジェイミーだ。
殺される前の僕だったら、きっとこの声を聞いたらブライアンのもとに突進して行っただろう。でも今度は、もう間違えたりしない。気のない相手を振り向かせようだなんて、もうそんな馬鹿な事はしないしジェイミーのことも無視だ。
視線を感じて顔を上げると兄上がじっとこちらを見ていた。
「……何ですか?」
「えっ? ああ、いや」
どうせ僕がまた、ブライアンの所に走っていくと思ったんだろう。それなのに動こうとしない僕を、不思議に思ってるというところか。
笑える。
ほんと笑えるよな。短絡的でバカだった自分に。
ぐいっと肩を引き寄せられてびっくりした。
「遅刻しないように歩こうぜ」
えっ? えっ? えっ?
誰かと肩を組むなんて経験なかったからびっくりしてしまった。エイドリアンは戸惑ってる僕を気にすることなく、そのまま肩を抱いて歩き続ける。兄上はその隣に並んでいる。
おかげで、まるで仲がいい兄弟のように校内を歩くという、初めての経験をしていた。
2,694
あなたにおすすめの小説
愛などもう求めない
一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
お前が結婚した日、俺も結婚した。
jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。
新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。
年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。
*現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。
*初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる