悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第一章

エイドリアン視点(閑話的な)

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 不器用なだけで、もともと可愛らしい子だとわかっていたけど最近のショーンはヤバいくらいだ。何がきっかけなのかはわからないけど、彼は突然素直になり表情も明るくなった。
 そんなショーンを見ているだけで、気持ちが温かくなりほっこりとする。

 そして今だよ、今。
 プルプル震えながら俺の袖を掴んで……! なんだこの可愛い生き物は!

 ここまで来るのに、俺はどれだけ我慢しただろう。ショーンはブライアンに釘付けだったから、無理に近づいてもダメだと分かっていたから。
 だからせめて少しでも素直にみんなと関われるようになれればと、注意だけはするようにしていたけれど。

 
 ……それにしてもブライアンが時々こちらを見ているな。いや、正確にはコチラをというよりはショーンをだな。
 もちろんそんなこと、ショーンの耳に入れる気はないけど。

「あっ、アップルパイが来たぞ」
 レオのうれしそうな声に、ショーンもピクンと反応してそわそわし始めた。さっきあんなにプリンを食べてたのに、まだ入るんだ。

 ほんと、可愛い。

「エイドリアン、エイドリアン、アップルパイ食べたいでしょ? 僕、取ってくるね」
「えっ? ああ、ありがとう。でも一緒に、」

 ショーンは俺の言葉を最後まで聞かずに走って行ってしまった。

「すまんな、どうやら少しはしゃいでいるようだ」
 アランが俺の肩をポンと叩いた。どうやら好きにさせてやってくれと言っているようだ。
 はじめてのおつかいを見守る親のような気分なのだろう。ちょっぴり気持ちはわかるので、こちらから見守ることにした。

「じゃあ僕は、アランの分までもらってくるよ」レオがにこりとほほ笑んで言う。
「ありがとう」
 アランも微笑んで返した。 

 アップルパイは結構な人気だった。令嬢たちも詰めかけてはしゃいでいる。ショーンの傍にいた令嬢が、前も見ずに動いたおかげでショーンとぶつかった。
 令嬢は、癇癪持ちのショーンだと気が付いたのだろう。びくっとして身構えている。

「あ、ごめんね。痛くなかった?」

 ショーンの優しい対応に驚いたのか、令嬢はパチパチと目を瞬いていた。

「あの……」
「は、はい、大丈夫ですわ。こちらこそ、すみません」
「あ、いや。大丈夫ならよかった」

「アップルパイはずいぶん人気だね。でも、たくさんあるから慌てなくても大丈夫だよ」

 さすがレオだ。優しい綺麗な微笑みに、令嬢の頬が赤く染まった。和やかになった雰囲気がこちらにも伝わってきた。

「レオは人たらしか?」
「エイドリアンほどではないだろう」
「ええー?」

 何を言っているんだとアランを見ると、彼はからかうような笑顔を俺に向けた。

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