悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

文字の大きさ
42 / 122
第一章

恵まれてました

 エイドリアンに話を聞かれて少しだけ泣いてしまったその後、なぜかすっきりとしていた。
 嫌なことを誰かに話すだけで、こんなに気持ちが楽になるんだな。知らなかったよ。

 授業が終わり、なんだか心も軽くなった僕は手際よく荷物をまとめてエリックの席に行った。

「エリック、今日も自習室行くよね」
「もちろんです」
「フローラ嬢たちも来るの?」
「それが女の子たちでの勉強会に誘われたらしくて、今日は来れないって言ってました」
「そっかー、じゃあ今までも時々来なかったのは、そういうのが理由だったのかな」
「はい。友達との付き合いも大事ですからね」
 
 ……そっかー、そうだよな。
 もしもエリックが、フローラ嬢が大切だからって、彼女とばっかり付き合ってたら僕も寂しいもんな。

「きゃあっ、見て見て」
「おおっ、やっぱりいつ見てもカッケーな」
「……なあ、イケメンの友達にはイケメンがなるって決まってるのか?」
「んなわけねーじゃん。でも、3人並ぶと壮観だな」

 急に教室内がざわざわしてきたのでなんだと思って振り返ると、エイドリアンに兄上に、レオお兄様が並んで立っていた。僕が振り返ったのに気が付いて、エイドリアンとレオお兄様がひらひらと手を振る。

 何事? まさかのお迎え?

「うわっ、まさか僕らを迎えに来てくれたんですか? 急がないとっ」 

 エリックが慌てて荷物をまとめて席を立った。2人で小走りで教室を出る。

「自習室ですよね。すみません、お待たせしてしまって」
 慌てるエリックに、大丈夫だよと3人は微笑んだ。

「でもどうなさったんですか? 僕らの教室までわざわざいらしてくださるなんて」
 訊ねると、兄上がちらりとエイドリアンに視線を向けた。
 エイドリアンが微苦笑を浮かべる。

「……直接言い聞かせるのが逆効果になるんなら、自分らがショーンの味方なんだって、今以上にみんなに周知してもらったほうがいいかなと思ったんだよ。俺らが目を光らせてるって知ったら、あいつらに同調して変な考えを起こすやつも現れないかなって。まあ、……俺もこれが正解かどうかわからないんだが、ただ見てるだけってのが嫌だったからさ」

 エイドリアンは、そう言いながら苦笑いをしている。

「で、それなら僕ももうちょっとわかりやすく動かなければと思ったわけだ」
「僕もね、ショーンのお兄様だし」

「……あ、ありがとうございます」

 胸の中が熱くなって堪らなくなる。
 兄上なんて、本来は静かに目立たずにいるほうが好きなはずなのに。

 ああ、なんか僕、すごく恵まれてるな。

 ――負けない。頑張らなくちゃ。

 きっと僕はそのために生き帰ってきたんだ。
 だからもう絶対に下なんか向いたりしない。


 僕はぐっと拳を握りしめた。
感想 90

あなたにおすすめの小説

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。

転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜

メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。 ​「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」 ​平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

【完結。一気読みできます♪】ただのハイスペックなモブだと思ってた

はぴねこ
BL
 神乃遥翔(じんの はると)は自分のことをモブだと思っていた。  少年漫画ではいつだって、平凡に見えて何か一つに秀でている人物が主人公だったから。  その点、遥翔は眉目秀麗文武両道、家も財閥の超お金持ち。  一通りのことがなんでも簡単にできる自分は夢中になれるものもなくて、きっと漫画のモブみたいに輝く主人公を引き立てるモブのように生きるのだと、そう遥翔は思っていた。  けれど、そんな遥翔に勉強を教わりに来ている葛城星 (かつらぎ ほし)は言った。 「BL漫画の中では、神乃くんみたいな人がいつだって主人公なんだよ?」  そう言って、星が貸してくれた一冊のBL漫画が遥翔の人生を一変させた。  自分にも輝ける人生を歩むことができるのかもしれないと希望を持った遥翔は、そのことを教えてくれた星に恋をする。  だけど、恋をした途端、星には思い人がいることに気づいてしまって……  眉目秀麗文武両道で完璧だけど漫画脳な遥翔が、お人好しで気弱な星の心に少しずつ少しずつ近づこうと頑張るお話です。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

長年仮番として務めてきましたが、王子は正式な番を娶るそうです

けふ
BL
王都を守る巨大結界は、王族の魔力によって維持されている。 第二王子アデルの傍らには、常に一人の騎士がいた。 近衛騎士レオン。 彼は長年、王子の「仮番」として特別な任務を担っている。 しかし王子は、他国の王女との正式な番契約が決まってしまった。 仮番の役目は、そこで終わるはずだった。 だが結界塔で行われる儀式の中で、 二人の関係は次第に変わり始める。 王族と騎士。 主と臣下。 越えてはならない境界を前にしても、 王子は騎士の手を取る。 「共に立て」 ※オメガバースではありません ※ふんわり読んでください ※なんでも許せる方向け ※イラストはChatGPTさん

愛などもう求めない

一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像はpicrewさんよりお借りしました。