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第二章
犯人の特徴?
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「すみません。怪しい人がいたということまではわかったんですが結局誰だか分かりませんでした」
階段から突き落とされてから3日後に、ヨハンとマシューが僕の教室にやってきて頭を下げた。
「えっ、そんなそんな、謝らないでよ、頭を上げて!」
慌てて2人の頭を上げさせた。ヨハンとマシューは本当にすまなさそうな顔をしていて、こちらの方が申し訳なくなる。
「そうだよ、怪しい人がいたって証言までは得られたんだろ? どんな特徴か聞いてるの?」
「はい。身長170cmぐらいの中肉中背で、髪は明るめの茶色だったらしいです」
「聞いただけではあまり特徴がないね。知り合いじゃなかったらわからないな……」
「そうなんです。おまけにその時、友人とおしゃべりしながら歩いていて、現場そのものを見たわけじゃないらしいんです。ショーン様の叫び声を聞いた後で早歩きでその場を去っていった人を見かけただけらしくて、しっかりその人が犯人だって言えるわけではないらしいのも悩ましいんですけど」
「そうか……」
僕は思わずその場で腕組みをして考え込んでしまった。トーマスも、その特徴のうちの一人だ。導き出された現実味を帯びた答えに、僕の掌から嫌な汗がにじみ出す。
だけど――、だからといって、必ずしもトーマスだとは言い切れない。
「特徴が分かっただけでも快挙だよ。誰も彼もを疑うわけにはいかないけど、気をつけることはできるからさ」
「そうですよね」
エリックも同意した。僕ら2人のそんな会話を聞いて、ヨハン達はやっとほっとしたような顔を見せてくれた。
★★★★★★★★
(トーマス視点)
「ヨハンとマシューが最近うるさいんだよな」
ジェイミーが可愛らしい唇を尖らせてつぶやく。
ブライアン様がいない隙でのナイショ話だ。
「エイドリアン様と一緒に居るショーン様が愛らしいだの素晴らしいだの、尊いだのってさわぐんだ。最近なんてそのショーン様を酷い目に合わせるやつがいるのが許せんとか息巻いて耳障りったらないんだよ」
「ショーン様は思った以上にあざといんだよ」
そうじゃなければブライアン様も、ジェイミーを差し置いてショーン様なんかに気が向くはずがないんだ。
それにしてもあの2人、最初はエイドリアン様に憧れていただけらしいのに、なんであんな余分なものにまで興味を持つかな。
あいつを褒めちぎる声が聞こえてくるたびに、ジェイミーが嫌な思いをしているんだ。少しは遠慮すればいいのに。
「ジェイミー様、ショーン様のことなんてそんなに気になさらないでください。ブライアン様がショーン様のことを気にかけているのも、何か勘違いをされているに違いないんです。どの道ショーン様はエイドリアン様と付き合ってるわけですし、そのうち目が覚めるに決まってますから」
キースが励ますようにそう言うと、ジェイミーは少し寂しそうに笑った。
「だといいんだけどね。……ブライアン様はあの階段事件から、目撃者がいないかってしばらく探していたんだよ。あんなひどいことをする人は許せないっていってね」
「えっ?」
俺もキースもそのことは知っていた。だけどジェイミーに知られないようにと気を配っていたのに。ブライアン様が話したんだろうか?
となりではキースが、小さくため息をついていた。
階段から突き落とされてから3日後に、ヨハンとマシューが僕の教室にやってきて頭を下げた。
「えっ、そんなそんな、謝らないでよ、頭を上げて!」
慌てて2人の頭を上げさせた。ヨハンとマシューは本当にすまなさそうな顔をしていて、こちらの方が申し訳なくなる。
「そうだよ、怪しい人がいたって証言までは得られたんだろ? どんな特徴か聞いてるの?」
「はい。身長170cmぐらいの中肉中背で、髪は明るめの茶色だったらしいです」
「聞いただけではあまり特徴がないね。知り合いじゃなかったらわからないな……」
「そうなんです。おまけにその時、友人とおしゃべりしながら歩いていて、現場そのものを見たわけじゃないらしいんです。ショーン様の叫び声を聞いた後で早歩きでその場を去っていった人を見かけただけらしくて、しっかりその人が犯人だって言えるわけではないらしいのも悩ましいんですけど」
「そうか……」
僕は思わずその場で腕組みをして考え込んでしまった。トーマスも、その特徴のうちの一人だ。導き出された現実味を帯びた答えに、僕の掌から嫌な汗がにじみ出す。
だけど――、だからといって、必ずしもトーマスだとは言い切れない。
「特徴が分かっただけでも快挙だよ。誰も彼もを疑うわけにはいかないけど、気をつけることはできるからさ」
「そうですよね」
エリックも同意した。僕ら2人のそんな会話を聞いて、ヨハン達はやっとほっとしたような顔を見せてくれた。
★★★★★★★★
(トーマス視点)
「ヨハンとマシューが最近うるさいんだよな」
ジェイミーが可愛らしい唇を尖らせてつぶやく。
ブライアン様がいない隙でのナイショ話だ。
「エイドリアン様と一緒に居るショーン様が愛らしいだの素晴らしいだの、尊いだのってさわぐんだ。最近なんてそのショーン様を酷い目に合わせるやつがいるのが許せんとか息巻いて耳障りったらないんだよ」
「ショーン様は思った以上にあざといんだよ」
そうじゃなければブライアン様も、ジェイミーを差し置いてショーン様なんかに気が向くはずがないんだ。
それにしてもあの2人、最初はエイドリアン様に憧れていただけらしいのに、なんであんな余分なものにまで興味を持つかな。
あいつを褒めちぎる声が聞こえてくるたびに、ジェイミーが嫌な思いをしているんだ。少しは遠慮すればいいのに。
「ジェイミー様、ショーン様のことなんてそんなに気になさらないでください。ブライアン様がショーン様のことを気にかけているのも、何か勘違いをされているに違いないんです。どの道ショーン様はエイドリアン様と付き合ってるわけですし、そのうち目が覚めるに決まってますから」
キースが励ますようにそう言うと、ジェイミーは少し寂しそうに笑った。
「だといいんだけどね。……ブライアン様はあの階段事件から、目撃者がいないかってしばらく探していたんだよ。あんなひどいことをする人は許せないっていってね」
「えっ?」
俺もキースもそのことは知っていた。だけどジェイミーに知られないようにと気を配っていたのに。ブライアン様が話したんだろうか?
となりではキースが、小さくため息をついていた。
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