悪行を重ねた令息は断罪されたくないので生き方を変えました。誰の愛も欲しがらないと決めたのに、様子がなんだか変なんです

くるむ

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第二章

ベタ惚れなんですね

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 バザーが楽しみなのはもちろんだけど、それでも勉強をおろそかにするわけにはいかない。ダンスの練習をしながらも、自習室に行く日もみんなと相談してちゃんと作った。
 今日は自習室に行く日なので、兄上たちが迎えに来てくれた。キャトリン嬢やフローラ嬢も参加するので、総勢7人でぞろぞろと自習室に向かっている。

「もうみんな何に参加するか決まったのかな?」
 兄上の問いにエリックは「はい」と答えた。

「フローラと一緒にダンスに出ることにしました」
「そうか、僕らと一緒だな。ところで受付は済ませたか?」
「はい、先着順だと聞いたので急いで済ませておきました」

「そうか、じゃあみんなダンスに出るんだね。あ、キャトリン嬢は何に出るの?」
「私は可愛く着飾って、売り子に徹しますわ」
「そっかー、キャトリン嬢ならたくさん売れそうだね」
「えっ、どうしてですの?」

 僕の素直な感想に、キャトリン嬢は不思議そうな顔をした。

「だって君、明るいじゃないか。君からだったら、たくさん買いたいって思うに決まってるよ」
「そうだね、そういう雰囲気あるよな」

 レオお兄様も、僕の隣でうんうんと頷いた。キャトリン嬢は赤くなって小さな悲鳴を上げた。

「バ、バザーに貢献できるよう頑張りますわ!」
「うん、頑張って」
「はい!」

 隣で兄上は苦笑いをしている。でもキャトリン嬢があまりにも可愛いので、まあいいかと思っているようだ。

「ところでタイソンはどうするんですか?」
「タイソンは、結局売り子に落ち着いたようだよ」
「え、売り子ですか?」
「そうそう。あいつは俺と一緒で婚約者第一主義だからな」
 エイドリアンが僕の肩を抱きながら、会話に入ってきた。(でも僕、まだエイドリアンの婚約者じゃないです)

「バザーに婚約者が来るから一緒に回りたいんだよな。それで本当は剣術大会に出たかったみたいなんだけど、あれって勝ち上がるとずっとその場から離れられないらしくて、それで拘束時間の短い売り子にしたって言ってた」

「タイソンって強いんですか?」
「まあまあ強いよ。エイドリアンが3回に1回は負けて、アランが3回に2回は負けるくらいにはね」

 エイドリアンの腕前は知らなかったけど、兄上が2回は負けるっていうことは結構強いのでは?

「それなのに売り子を選んだんですか? でも、そういう考え方も素敵ですね」とエリック。
 フローラ嬢もその隣ではにかむような笑みを見せた。きっと2人ともいい感じで進んでいるんだろうなあ。

「タイソンはベタ惚れだからな」
「アランはどうなの?」

 レオお兄様のすかさずの問いかけに、「えっ、僕も同じくだよ」とさらりと返していたけれど、あれは多分平静を装っているよね。だって兄上ってば頬が赤くなってる。
 そんな兄上の顔を見て、レオお兄様は満足げに微笑んだ。

「そうかい? それはよかった。――僕も一緒だから」
 そう言ってレオお兄さまは、兄上の腕にその腕を絡ませた。
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