80 / 122
第二章
楽しんでる?
しおりを挟む
そろそろ入場する時間ということで、僕らはペア同士、一列に並んで待機した。特に意味はないのだけど、僕とエイドリアンは三番目。エリックとフローラ嬢はそのすぐ後ろ、四番目に並んだ。
「エリック、フローラ嬢も。緊張するけど、頑張って楽しもうね」
「はい!」
「はい」
よし!と気合を入れて前を向いたら、エイドリアンと目が合った。あまりに優しいそれにドキリとする。
色っぽいとかそういうのとは全く違って、僕らを本当に可愛いと思ってくれているような慈しむ瞳だ。
「入場します。温かい拍手でお迎えください」
司会を務める上級生の、入場を促す声が聞こえてきた。
ドキドキしながらも、僕の手を握ってくれるエイドリアンの手の温かさに励まされながら入場した。
このコンテストは二曲踊ることになっている。最初はスローな曲で、二曲目はテンポの良い曲だ。それらの二つを見て、客はどのペアが良かったかを投票する。
それぞれの組が任意の位置に着いたとき、曲が奏でられた。
僕の背にまわっているエイドリアンの手のひらに力が加わる。それを合図に、滑らかなステップを繰り出す。フロアを縦横無尽に移動しながら、僕はエイドリアンの凛とした表情に見惚れた。
そんな表情を見ていて、もしかしたらエイドリアンは僕の道しるべ的存在なのかもしれないなんて思った。
みんなからはぐれ迷子になり、自分の欲求だけを満たそうとして余計に誰にも相手にされなかったときも、やり直したいと切に願っていた時も、エイドリアンは変わらずそばにいてくれた。
……エイドリアンだけだった。
「楽しんでるか?」
「はい」
「それはよかった」
エイドリアンは視線を合わせ、キスでもできるんじゃないかと思うくらい顔を近づけてきた。
どこからかキャー、という悲鳴が聞こえてくる。
恥ずかしいじゃないかという思いからエイドリアンを睨むと、彼は楽しそうに笑うだけだった。そして、タイミングよく(悪く?)ここで曲が終わった。
「もう! エイドリアンったら!」
「ハハハ、わるいわるい。あんまり可愛いからさ」
30秒ほどしたらまたすぐ曲がかかるということで、僕はその場で待機した状態での文句になっていた。
その間に、各ペアへの声援も飛び交っている。
「エイドリアン様、ショーン様、素敵です。次も頑張ってください!」
あまりの大声にそちらを振り返ると、ヨハンとマシューがブンブンと手を振っていた。隣には兄上とレオお兄様。それとキャトリン嬢にタイソンと見知らぬ令嬢がいる。おそらくその彼女がリリーベル嬢なんだろう。
「頼もしい声援だな」
「……そうですね」
「エリックー、フローラも可愛いわよ。頑張って!」
キャトリン嬢の声援に、フローラ嬢はほっとしたように微笑んだ。
それからまた、曲が流れてきたので僕らはまたステップを踏み出す。
先ほどよりも緊張がほぐれたせいか、今度はさっきよりも積極的に楽しむことができた。軽快にエイドリアンにリードされながらフロア中を駆け巡る。
時折視界に入る観客の楽しそうな顔も、力強いエイドリアンの腕も何もかもが僕の気持ちを躍らせた。
そして投票の結果、一位は上級生のシュパルツ、サイモンペア、僕らは二位で、エリックたちは四位という結果に終わった。
「エリック、フローラ嬢も。緊張するけど、頑張って楽しもうね」
「はい!」
「はい」
よし!と気合を入れて前を向いたら、エイドリアンと目が合った。あまりに優しいそれにドキリとする。
色っぽいとかそういうのとは全く違って、僕らを本当に可愛いと思ってくれているような慈しむ瞳だ。
「入場します。温かい拍手でお迎えください」
司会を務める上級生の、入場を促す声が聞こえてきた。
ドキドキしながらも、僕の手を握ってくれるエイドリアンの手の温かさに励まされながら入場した。
このコンテストは二曲踊ることになっている。最初はスローな曲で、二曲目はテンポの良い曲だ。それらの二つを見て、客はどのペアが良かったかを投票する。
それぞれの組が任意の位置に着いたとき、曲が奏でられた。
僕の背にまわっているエイドリアンの手のひらに力が加わる。それを合図に、滑らかなステップを繰り出す。フロアを縦横無尽に移動しながら、僕はエイドリアンの凛とした表情に見惚れた。
そんな表情を見ていて、もしかしたらエイドリアンは僕の道しるべ的存在なのかもしれないなんて思った。
みんなからはぐれ迷子になり、自分の欲求だけを満たそうとして余計に誰にも相手にされなかったときも、やり直したいと切に願っていた時も、エイドリアンは変わらずそばにいてくれた。
……エイドリアンだけだった。
「楽しんでるか?」
「はい」
「それはよかった」
エイドリアンは視線を合わせ、キスでもできるんじゃないかと思うくらい顔を近づけてきた。
どこからかキャー、という悲鳴が聞こえてくる。
恥ずかしいじゃないかという思いからエイドリアンを睨むと、彼は楽しそうに笑うだけだった。そして、タイミングよく(悪く?)ここで曲が終わった。
「もう! エイドリアンったら!」
「ハハハ、わるいわるい。あんまり可愛いからさ」
30秒ほどしたらまたすぐ曲がかかるということで、僕はその場で待機した状態での文句になっていた。
その間に、各ペアへの声援も飛び交っている。
「エイドリアン様、ショーン様、素敵です。次も頑張ってください!」
あまりの大声にそちらを振り返ると、ヨハンとマシューがブンブンと手を振っていた。隣には兄上とレオお兄様。それとキャトリン嬢にタイソンと見知らぬ令嬢がいる。おそらくその彼女がリリーベル嬢なんだろう。
「頼もしい声援だな」
「……そうですね」
「エリックー、フローラも可愛いわよ。頑張って!」
キャトリン嬢の声援に、フローラ嬢はほっとしたように微笑んだ。
それからまた、曲が流れてきたので僕らはまたステップを踏み出す。
先ほどよりも緊張がほぐれたせいか、今度はさっきよりも積極的に楽しむことができた。軽快にエイドリアンにリードされながらフロア中を駆け巡る。
時折視界に入る観客の楽しそうな顔も、力強いエイドリアンの腕も何もかもが僕の気持ちを躍らせた。
そして投票の結果、一位は上級生のシュパルツ、サイモンペア、僕らは二位で、エリックたちは四位という結果に終わった。
1,654
あなたにおすすめの小説
愛などもう求めない
一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
お前が結婚した日、俺も結婚した。
jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。
新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。
年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。
*現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。
*初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる