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第三章
いつか誰かから聞くだろうけど
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「そういえば、さっきジェイミーが来てさ。謝ってくれた」
「え? あのジェイミーがですか?」
「うん。僕もびっくりしたけど、キースのことで責任があると思ったみたいなんだ」
「そうですか」
「僕も人のことなんて言えない。……悪かったんだけどね」
「……善だけの人なんていませんよ」
ぽつりとつぶやかれたその言葉が、じんわりと僕の心に広がった。
そうだよね、善だけの人なんて居ない。逆を言えば悪だけの人もいないってことなんだろうけど。
「ショーン!」
あ、この声……。
エリックと2人で、顔を見合わせた。
僕ら2人の視線の先には、あんまりお会いしたくなかったブライアンがいた。早足で僕らに近づいてくる。
「エイドリアン様と婚約したって本当かい?」
え? 婚約? いつのまにかそんな噂になっちゃってるの?
「婚約はまだだよ。でもプロポーズはしてもらって、お受けした」
その時のことを思い出して、ついつい頬が緩んでしまう。
「……ああ、そうか。婚約じゃなかったか」
「ブライアン?」
なんだか彼のその言い方が引っかかって、首を傾げる。
「ああ、いや。公爵家との婚約なんて、整うまで大変だろうなと思ったから……」
歯切れの悪いものいいだ。いつものブライアンらしくない。エリックも訝しげな顔で彼を見ている。
「心配してもらわなくても結構。父上と母上にはすでに了承を得ている。ショーンのことも既に認めているよ」
突然背後からエイドリアンの声が聞こえてびっくりした。顔を上げると目があって、にっこり微笑まれて肩を抱かれた。そしてエイドリアンの視線は、ブライアンへと移動した。
ブライアンの顔は引きつっている。
「あ、そうなんですか……。知らなかったとはいえ失礼しました」
「いや、構わないよ」
かまわないと言いながらエイドリアンは微笑んだ。だけどその微笑みはなんだか怖い。
ブライアンもそれに気づいているんだろう。居心地悪そうだ。
「……それでは失礼します」
エイドリアンの圧に負けたブライアンは挨拶をして去りかけた。でもすぐに立ち止まって振り返り僕を見た。
「ショーン」
「はい……?」
「その……キースのことは悪かった。彼は真面目でおとなしい性格だったったから、思い詰めて誤った感情を溜めすぎていたのかもしれない。気付けなかった私も友人として謝罪する。本当にすまなかった」
ブライアンが頭を下げた。
この感じだとブライアンは、誰からもキースの殺人未遂の動機を知らされていないのだろう。ジェミーは知っていても、やっぱり彼には言えないか。僕も自分から話す気にはなれないけど。
「……分かりました」
僕が謝罪を受け入れたと感じたのだろう。ブライアンは軽く一礼してこの場を離れた。
「文句の一つぐらい言ってやればよかったのに」
「僕にはそんな権利なんてないですから」
「そんなことないと思いますけど」
えっ? あっ!
勢いよくエリックに顔を向けると、エリックは眉を下げた。
「僕の存在忘れてましたね」
「ええっ? いや、そんなことは!」
ブライアンショックとエイドリアンショックではっきり言って頭の中から消えていた。
「ハハハ、まあそういうこともあるだろう」
「はあ、いいんですけどね。戻りましょうか」
エイドリアンはそうだなと言って僕の肩を抱いて歩きだした。
「ねえ、エリック! ちょっと違うんだよ。ねえ聞いてってば」
「はいはい、大丈夫ですから。気にしないでください」
エリックはすねているのか聞く耳持ってもらえない。
お願いだからエイドリアン、笑ってないで僕の代わりに責任取ってフォローしてくださいよ……!
「え? あのジェイミーがですか?」
「うん。僕もびっくりしたけど、キースのことで責任があると思ったみたいなんだ」
「そうですか」
「僕も人のことなんて言えない。……悪かったんだけどね」
「……善だけの人なんていませんよ」
ぽつりとつぶやかれたその言葉が、じんわりと僕の心に広がった。
そうだよね、善だけの人なんて居ない。逆を言えば悪だけの人もいないってことなんだろうけど。
「ショーン!」
あ、この声……。
エリックと2人で、顔を見合わせた。
僕ら2人の視線の先には、あんまりお会いしたくなかったブライアンがいた。早足で僕らに近づいてくる。
「エイドリアン様と婚約したって本当かい?」
え? 婚約? いつのまにかそんな噂になっちゃってるの?
「婚約はまだだよ。でもプロポーズはしてもらって、お受けした」
その時のことを思い出して、ついつい頬が緩んでしまう。
「……ああ、そうか。婚約じゃなかったか」
「ブライアン?」
なんだか彼のその言い方が引っかかって、首を傾げる。
「ああ、いや。公爵家との婚約なんて、整うまで大変だろうなと思ったから……」
歯切れの悪いものいいだ。いつものブライアンらしくない。エリックも訝しげな顔で彼を見ている。
「心配してもらわなくても結構。父上と母上にはすでに了承を得ている。ショーンのことも既に認めているよ」
突然背後からエイドリアンの声が聞こえてびっくりした。顔を上げると目があって、にっこり微笑まれて肩を抱かれた。そしてエイドリアンの視線は、ブライアンへと移動した。
ブライアンの顔は引きつっている。
「あ、そうなんですか……。知らなかったとはいえ失礼しました」
「いや、構わないよ」
かまわないと言いながらエイドリアンは微笑んだ。だけどその微笑みはなんだか怖い。
ブライアンもそれに気づいているんだろう。居心地悪そうだ。
「……それでは失礼します」
エイドリアンの圧に負けたブライアンは挨拶をして去りかけた。でもすぐに立ち止まって振り返り僕を見た。
「ショーン」
「はい……?」
「その……キースのことは悪かった。彼は真面目でおとなしい性格だったったから、思い詰めて誤った感情を溜めすぎていたのかもしれない。気付けなかった私も友人として謝罪する。本当にすまなかった」
ブライアンが頭を下げた。
この感じだとブライアンは、誰からもキースの殺人未遂の動機を知らされていないのだろう。ジェミーは知っていても、やっぱり彼には言えないか。僕も自分から話す気にはなれないけど。
「……分かりました」
僕が謝罪を受け入れたと感じたのだろう。ブライアンは軽く一礼してこの場を離れた。
「文句の一つぐらい言ってやればよかったのに」
「僕にはそんな権利なんてないですから」
「そんなことないと思いますけど」
えっ? あっ!
勢いよくエリックに顔を向けると、エリックは眉を下げた。
「僕の存在忘れてましたね」
「ええっ? いや、そんなことは!」
ブライアンショックとエイドリアンショックではっきり言って頭の中から消えていた。
「ハハハ、まあそういうこともあるだろう」
「はあ、いいんですけどね。戻りましょうか」
エイドリアンはそうだなと言って僕の肩を抱いて歩きだした。
「ねえ、エリック! ちょっと違うんだよ。ねえ聞いてってば」
「はいはい、大丈夫ですから。気にしないでください」
エリックはすねているのか聞く耳持ってもらえない。
お願いだからエイドリアン、笑ってないで僕の代わりに責任取ってフォローしてくださいよ……!
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