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最終章
結婚します 2
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朝食を摂るあたりでのしんみりとした気持ちは、教会へ向かうあたりから一変し、僕の心臓は騒がしくなっていた。
なんだろうこの焦るような落ち着かない気持ちは。
隣に座っているお兄さまが、手を伸ばして僕の手をキュッと握った。
「緊張してるんだね、手が冷たい」
ああ、そうか。
レオお兄様に握られて初めて気がついた。触れられて暖かいと思うのは僕の手が冷たくなっているからだ。
「大丈夫だよ。エイドリアンの顔さえ見れば、きっと何もかも吹っ飛ぶさ」
レオお兄様の表情はとても柔らかい。何か懐かしいことを思い出しているかのような表情だ。
そんなお兄様の顔を魅入られたようにじーっと見ていたら、ほんの少し頬を染めたお兄様が「僕もそうだったからね」とこそっとつぶやいた。
父上は平静に、母上は微笑みを浮かべながら、兄上はやはり柔らかな笑みを浮かべながら僕らを見ていた。
馬車が止まり教会に着いた。
馬車から降りると2人の女性がすすすと近寄ってきた。
「ショーン・A・マクラーレン様ですね。こちらへどうぞ」
準備があるのだろう。僕だけ先に案内されて支度するべく部屋に通された。
衣装は、エイドリアンと2人で決めたものだ。白を基調としたフロックコートで、アクセントとしてブルーとブルーグリーンをあしらっている。デザイン画を見せてもらったとき、エイドリアンに絶対似合うって思ったんだ。
想像するだけでドキドキするよね。
「お綺麗ですよ」
手鏡を渡されて驚いた。
僕は女性じゃないからこういうことには疎いんだけど、目は少しパッチリと、唇は愛らしく、そしてふわふわとした緩い癖のある髪には小さな花の飾りが付けられていた。
化粧をされていたことも髪を触られていたこともわかっていたから、何かしら丁寧に仕上げてくれているんだとは思っていたけど、この可愛い人誰って感じになってる。
「あ、ありがとう」
礼儀としてちゃんとお礼は言ったけど、ちょっと複雑な気分だ。似合わないかもしれないけど、できるならもっと恰好よくて色っぽい感じにして欲しかった。
コンコン。
「入ってもいいかな?」
エイドリアンだ!
「どうぞ」
ゆっくりと扉が開いて、エイドリアンが顔をのぞかせた。僕はその瞬間息を呑んだ。
普段前髪で隠されている額はゆるく前髪を半分ほど立ち上げられて露わになり、残った少しの長めの前髪が垂れているのも妙に色っぽい。髪型一つで普段の精悍だけど陽な雰囲気がガラリと変わる。
特別な場で何度かこういう姿を目にしてるんだけど、やっぱりなれないんだよな。ドキドキする。
しかも、白のフロックコートがものすごく似合ってて恰好いいんだよ。
エイドリアンは一瞬目を見開いて僕をじっと見て、「しばらく触れちゃいけない拷問の時間だな」と苦笑いした。
「お2人ともすごくお似合いですよ」
「ありがとう」
声をかけられて初めてエイドリアンは僕から視線を外した。そして侍女の方を向いてほほ笑んだ。
エイドリアンの笑みに、侍女の頬が赤くなる。
「そろそろお時間ですよ」
「そうだな。行こうか、ショーン」
「はい」
僕は差し出されたエイドリアンの手を取った。
なんだろうこの焦るような落ち着かない気持ちは。
隣に座っているお兄さまが、手を伸ばして僕の手をキュッと握った。
「緊張してるんだね、手が冷たい」
ああ、そうか。
レオお兄様に握られて初めて気がついた。触れられて暖かいと思うのは僕の手が冷たくなっているからだ。
「大丈夫だよ。エイドリアンの顔さえ見れば、きっと何もかも吹っ飛ぶさ」
レオお兄様の表情はとても柔らかい。何か懐かしいことを思い出しているかのような表情だ。
そんなお兄様の顔を魅入られたようにじーっと見ていたら、ほんの少し頬を染めたお兄様が「僕もそうだったからね」とこそっとつぶやいた。
父上は平静に、母上は微笑みを浮かべながら、兄上はやはり柔らかな笑みを浮かべながら僕らを見ていた。
馬車が止まり教会に着いた。
馬車から降りると2人の女性がすすすと近寄ってきた。
「ショーン・A・マクラーレン様ですね。こちらへどうぞ」
準備があるのだろう。僕だけ先に案内されて支度するべく部屋に通された。
衣装は、エイドリアンと2人で決めたものだ。白を基調としたフロックコートで、アクセントとしてブルーとブルーグリーンをあしらっている。デザイン画を見せてもらったとき、エイドリアンに絶対似合うって思ったんだ。
想像するだけでドキドキするよね。
「お綺麗ですよ」
手鏡を渡されて驚いた。
僕は女性じゃないからこういうことには疎いんだけど、目は少しパッチリと、唇は愛らしく、そしてふわふわとした緩い癖のある髪には小さな花の飾りが付けられていた。
化粧をされていたことも髪を触られていたこともわかっていたから、何かしら丁寧に仕上げてくれているんだとは思っていたけど、この可愛い人誰って感じになってる。
「あ、ありがとう」
礼儀としてちゃんとお礼は言ったけど、ちょっと複雑な気分だ。似合わないかもしれないけど、できるならもっと恰好よくて色っぽい感じにして欲しかった。
コンコン。
「入ってもいいかな?」
エイドリアンだ!
「どうぞ」
ゆっくりと扉が開いて、エイドリアンが顔をのぞかせた。僕はその瞬間息を呑んだ。
普段前髪で隠されている額はゆるく前髪を半分ほど立ち上げられて露わになり、残った少しの長めの前髪が垂れているのも妙に色っぽい。髪型一つで普段の精悍だけど陽な雰囲気がガラリと変わる。
特別な場で何度かこういう姿を目にしてるんだけど、やっぱりなれないんだよな。ドキドキする。
しかも、白のフロックコートがものすごく似合ってて恰好いいんだよ。
エイドリアンは一瞬目を見開いて僕をじっと見て、「しばらく触れちゃいけない拷問の時間だな」と苦笑いした。
「お2人ともすごくお似合いですよ」
「ありがとう」
声をかけられて初めてエイドリアンは僕から視線を外した。そして侍女の方を向いてほほ笑んだ。
エイドリアンの笑みに、侍女の頬が赤くなる。
「そろそろお時間ですよ」
「そうだな。行こうか、ショーン」
「はい」
僕は差し出されたエイドリアンの手を取った。
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