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第二章
お肉は加熱して食べよう
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そうして、兄さんの「加熱した肉を食べるようになろう」訓練が始まった。
まずは焼肉。
別荘に備え付けられたバーベキューグリルで、肉と野菜を焼く。
僕と新さんは肉も好きだけど、どちらかと言うと野菜派なので、カボチャやトウモロコシ、エリンギに箸が進む。
野菜は新さんが主に焼いてくれて、いい感じに焼けると僕の皿や自分の皿に入れ、大翔さんや晴斗さんにも適量をつけ分けてくれていた。
肉担当は大翔さんで、じゅうじゅうといい音を放ちながら焼いている。
横ではその様子を兄さんがじっと見ていて、ほぼ網に乗っけた傍からその肉をかっさらおうと画策しているようだ。
最初の内は、ほぼ生の状態で網の上から肉をかっさらい(大翔さんが乗っけた傍からかっさらっていた)、大翔さんにこっぴどく叱られていたんだけど、それに堪えた様子は無かった。
兄さんと大翔さん、そして晴斗さんは肉の奪い合いを繰り返し、まさにそこは張り詰めた空気が漂っていた。
「……あそこは険悪なムードだな」
「……だね。――ねえ新さん、お肉も少し欲しくない? 僕も食べたいから少し取って来ようか」
「ああ、頼む」
お皿を持って、三つ巴と化しているお肉の下へ。
網の上を見ると、ちょうど程よくレア状態になっている肉があった。
あ、これは兄さんに食べてもらうのにちょうどいいかも。
僕はそれをちょいと箸でつまんで兄さんの皿に乗っけた。
「……え?」
困惑の表情で僕を見る兄さん。
どう見てもその顔は、『何でこんな不味いものを俺の皿に乗っけるんだ』と言いたげな表情だ。
……バーベキューの趣旨を、完璧に忘れてる。
「これなら、表面だけしか焼かれてないよ? ほぼ生じゃない」
「……口に入れた時に、肉の味がしない」
「ええっ? なに言ってんの、兄さん。これは加熱した肉を食べ慣れるための訓練でしょ? 噛めばしっかり肉の味がするんだから、このくらいは我慢してよ」
「…………」
恨めし気に僕を見る兄さん。
だけど、僕も動じずに兄さんを見つめ続けていたら、どうやら観念してくれたらしい。
ハアッとため息を一つ吐いて、肉を口の中に放り込んでくれた。
「…………」
「どう? イケるでしょ?」
「…………」
「兄さん?」
「……不味い」
「ええっ?」
「不味いものは不味いんだ――――――――っ!!」
山奥に響き渡る兄さんの魂の叫び。
この後も数日間、肉の角煮や肉のスープにも挑戦してもらったんだけど、兄さんの機嫌は良くなることは無く、増々不機嫌になっていき彼の機嫌は悪化の一途をたどったのである。
まずは焼肉。
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僕と新さんは肉も好きだけど、どちらかと言うと野菜派なので、カボチャやトウモロコシ、エリンギに箸が進む。
野菜は新さんが主に焼いてくれて、いい感じに焼けると僕の皿や自分の皿に入れ、大翔さんや晴斗さんにも適量をつけ分けてくれていた。
肉担当は大翔さんで、じゅうじゅうといい音を放ちながら焼いている。
横ではその様子を兄さんがじっと見ていて、ほぼ網に乗っけた傍からその肉をかっさらおうと画策しているようだ。
最初の内は、ほぼ生の状態で網の上から肉をかっさらい(大翔さんが乗っけた傍からかっさらっていた)、大翔さんにこっぴどく叱られていたんだけど、それに堪えた様子は無かった。
兄さんと大翔さん、そして晴斗さんは肉の奪い合いを繰り返し、まさにそこは張り詰めた空気が漂っていた。
「……あそこは険悪なムードだな」
「……だね。――ねえ新さん、お肉も少し欲しくない? 僕も食べたいから少し取って来ようか」
「ああ、頼む」
お皿を持って、三つ巴と化しているお肉の下へ。
網の上を見ると、ちょうど程よくレア状態になっている肉があった。
あ、これは兄さんに食べてもらうのにちょうどいいかも。
僕はそれをちょいと箸でつまんで兄さんの皿に乗っけた。
「……え?」
困惑の表情で僕を見る兄さん。
どう見てもその顔は、『何でこんな不味いものを俺の皿に乗っけるんだ』と言いたげな表情だ。
……バーベキューの趣旨を、完璧に忘れてる。
「これなら、表面だけしか焼かれてないよ? ほぼ生じゃない」
「……口に入れた時に、肉の味がしない」
「ええっ? なに言ってんの、兄さん。これは加熱した肉を食べ慣れるための訓練でしょ? 噛めばしっかり肉の味がするんだから、このくらいは我慢してよ」
「…………」
恨めし気に僕を見る兄さん。
だけど、僕も動じずに兄さんを見つめ続けていたら、どうやら観念してくれたらしい。
ハアッとため息を一つ吐いて、肉を口の中に放り込んでくれた。
「…………」
「どう? イケるでしょ?」
「…………」
「兄さん?」
「……不味い」
「ええっ?」
「不味いものは不味いんだ――――――――っ!!」
山奥に響き渡る兄さんの魂の叫び。
この後も数日間、肉の角煮や肉のスープにも挑戦してもらったんだけど、兄さんの機嫌は良くなることは無く、増々不機嫌になっていき彼の機嫌は悪化の一途をたどったのである。
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