これは兄さんじゃありません

くるむ

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第二章

もう一人の兄さん

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「お願い……、お願いだよ兄さん。お肉は焼いて食べてよ……。スープにしても美味しいから……」

兄さんに縋りついて訴える僕。
傍から見てるとどんな会話だって、感じだ。

「兄さん……」
「……お前は、俺がそうすればうれしいのか?」

今までの不貞腐れた表情から、少し様相が変わって来た。譲歩してくれそうなその様子に、僕の気持ちがパアッと明るくなった。

「うん! そうだよ、うれしいよ! 僕は兄さんが大事だから、酷い目にあって欲しくなんて無いんだ」
「志音……、分かってると思うけどこいつは壱琉じゃ……」

嬉しくて、兄さんの手をギュッと握りしめながら返事をしていると、後ろの方から新さんが遠慮がちに僕に忠告した。

「うん、大丈夫。ちゃんと……、ちゃんと分かってるから。……でも僕、"一理"って呼びづらいからやっぱり兄さんって呼ぶことにする」
「志音……、だけど、」
「兄さんが帰って来たら、兄さんが2人になったって思ったらいけない?」
「それは……、いけなくは無いかもしれないけど。……複雑な事になるんじゃないのか?」
「え? どうして? だって、四人兄弟だったら三人兄さんがいるってことになるじゃない」
「…………」
「…………」

僕の言葉に、さらに新さんも大翔さんも複雑な表情になった。

……僕、なにか変な事言った……?

「いーんじゃねーの? 壱琉そっくりなんだから、帰って来たら双子の兄とでも思えば」
「晴斗さん! そう、そうだよね! あったまいいー!」
「え? そう? そうかなー」
「…………」
「…………」

燥ぐ僕と晴斗さんに、大翔さんたちはやっぱり複雑な表情をしている。
そんなに変な事なのかな?
僕にはグッドアイデアだと思えるんだけど。

「兄さん!」
「……一応確認するが、俺の名前は一理に決まったと思ってたんだが、お前は"兄さん"って呼び続けるのか?」
「うん。……ダメ?」

異世界人の兄さんをジッと見つめて訴える。
もちろん本当に兄さんだと思っているわけじゃない。ただ、兄さんそっくりのこの人を、名前の呼び捨てにするのにちょっぴり抵抗があるだけだ。

まじまじと見つめている内に、異世界人のその顔がほんのりと赤くなってきた。

「……お前がそう呼びたいんなら、俺はどっちでも構わないけど」

「ホント!? ヤッター! じゃあ、じゃあ兄さん。今度から食事は焼肉とか煮つけとかスープだけだからね。あ、えーっと焼き具合はレアにしてあげるし。魚は食べられる?」

コクリと頷く兄さん。

「そう、食べられるんだね。じゃあ、それは刺身で提供してあげるから楽しみにしてて」

兄さんを見つけられたわけじゃないのに、従順にこの世界に馴染もうと考えてくれたこの兄さんそっくりの異世界人のおかげで、だんだん僕の気持ちは浮上し始めていた。
 
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