幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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序章

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 第一聖騎士団、団長のウィルフレッドのもとに部下のカールが慌ててやってきた。
「グルモイの三番街で、闇魔術士があばれています!」
 グルモイとは、王都と隣接した商業地だ。花屋やカフェや雑貨屋などが立ち並び、常に人で賑わっている。

「闇魔術士と呼ぶなと説教したいところだが、あとだな。先に行くぞ!」
「はい!」

 ウィルフレッドは、簡略化した呪文を詠唱し転移魔法を発動した。だがカールにはそこまでの力は無いので、馬の従魔に乗りグルモイに走る。

 
 ウィルフレッドが町に到着した時には、一触即発の雰囲気が漂っていた。空は暗雲で覆われ、バチンガチンと嫌な音を立てながら稲光が発している。片手を突き上げた男――イアン・オーブリー・ケンプの魔力から発したそれは、怒りのために最悪な状態になろうとしていた。イアンは鬼のような形相だ。
 三十人ほどの聖騎士団に取り囲まれていても怯む様子はない。団員が発する攻撃を片手で払いのけている。

 ウィルフレッドの登場に気がついた団員が安堵の色を見せた。

「良かった。団長、来てくれたんですね」
「陛下からは闇……イアンを、その場で処刑しても構わないと言われています!」
「それはダメだ!」

 ウィルフレッドは常日頃からイアンを殺さずに捕縛しろと伝えている。王家のやり方に汚さを感じているからだ。

 まれにしか生まれてこないが黒髪、黒い瞳を持つ者は膨大な魔力を持っていた。魔力そのものを持たずに生まれてくる者も多数いる中で、膨大な魔力を持つ者は王家にとって脅威だった。そのため王家は、黒髪、黒い瞳の者は世界を破滅に導く忌み子と認定した。よって、黒髪黒い瞳で生まれた子供たちは虐待され、迫害される運命を辿ってきた。
 
「イアン! 聞こえるか!?」

 バチンと鋭い音を立て、火花が民家を直撃し燃え上がった。
 ウィルフレッドは瞬時に水魔法を発動し、燃え広がるのを防いだ。

「イアン!」
 ウィルフレッドが呼んでもイアンはこちらを向かない。雲は先程よりもどす黒く、稲光もひどい。これ以上ひどくなると空から炎が降って来そうだ。
 激昂し魔力が高まっているのか聖騎士団の力が全く及んでいない。まずいと思ったウィルフレッドは、瞬間移動でイアンの前に立った。

 突然目の前に現れたウィルフレッドにイアンは一瞬、ギョッとしたような顔をした。その僅かな隙をウィルフレッドは見逃さなかった。ずっと狙っていた魔法をイアンに発動する。


 ウィルフレッドからすさまじい白い光が放たれ、イアンを覆う。しばらくその白い光とイアンが抵抗して放つ群青色の光がせめぎ合っていたが、少しずつ群青色が圧されていく。

 すさまじく眩しい光に誰もが目を開けられなくなった後――、


 目の前にいた凶悪な青年イアンは、幼子おさなごの姿で横たわっていた。
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