幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第一章

お見送り

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 聖騎士団団長の朝は早いようだ。
 俺とあいさつを交わしたあと飛び起きたウィルフレッドは、すぐに部屋を出て行った。代わりに入ってきたリースが俺の身支度を整えてくれた。

「そろそろウィルフレッド様がお出かけなさる時間です。お送りいたしましょう」

 俺は眉をしかめた。
 なんでわざわざウィルフレッドを見送らないといけないんだ?

 ムッと唇を引き結びながらリースを見上げる。リースはそんな俺に対し、穏やかな笑顔だ。そして「さあ、行きましょう」と手をとった。
 ウィルフレッドと違い、俺を勝手に抱き上げたりしないところは評価するけどさ。

 まあいいか、リースの顔を立ててやる。
 ただ、ヨチヨチ歩きしかできないのがしゃくにさわるんだけど。

 一生懸命足を前に出すけど、なかなか前に進めない。だけどリースはそれも全く苦にしないようで、ニコニコ笑いながらゆっくりと歩いてくれる。

 やっとウィルフレッドのところに着いたときは、まさにもう出かける寸前だった。

「ルアン! 行ってらっしゃいをしに来てくれたのか?」
 
 あまりにも嬉しそうな態度に思わず怯んだ。半歩後ろに下がる間もなく、ウィルフレッドに抱き上げられる。
 ほっぺとほっぺをぐりぐりされた。

「んなーっ! はにゃせー!」
 俺がどんなに喚こうが意に介さないウィルフレッドは、思う存分ぐりぐりした後やっと俺を離した。

「それでは出かけてくるが、私がいない間はリースの言うことをちゃんと聞いていい子にしてるんだぞ」

 いい子って何だと思いはしたけれど、あまりにもこいつがうれしそうににこにこするものだから本当に調子が狂う。リースや周りの使用人たちまでもが優しい笑顔でこちらを見ているから余計にだ。

「……わかった」

 しぶしぶ返事をしたらウィルフレッドの顔がパーッと明るい笑顔になった。「良かったですね、ウィルフレッド様」「かわいいお返事でございました」なんて使用人たちにまで言われてむずがゆくてしょうがない。

 ウィルフレッドが出て行ったあと、リースが俺に視線を合わせた。

「それではルアン様、朝食にいたしましょう」

 リースに連れられて食堂へと向かった。相変わらずのヨチヨチ歩きだけど、リースはせかさずにゆっくりと歩いてくれるので俺も嫌な気分にはならない。
 ただ、テーブルは高いし椅子もそれなりに高いので、幼児にされた俺がうまく座って食事をすることができるのかが微妙だ。どうしようかと思っていたら、リースに「失礼しますね」と言って体を持ち上げられた。気づいたら俺はリースの膝の上に乗っていた。

「えっ?」
「大丈夫ですよ。ゆっくり食べましょうね」

 膝抱っこの経験もない上に俺の実年齢とほぼ変わらない女性の膝の上に乗っかっているということで、ものすごく恥ずかしかった。何とかならないかと焦ったけれど、リースに優しい声で、「ハイ、あーん」と口の前にスプーンを持って来られたら抗うことはできなかった。

 しぶしぶ口を開けて食べたミルク粥は、やっぱり美味しかった。

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