20 / 59
第二章
すごいニュース 2
しおりを挟む
「ニール、落ち着け。もう少し静かに入ってこれないのか」
「これが落ち着いていられるか! 聖女が見つかったらしい」
「……は? 本当か?」
「ああ。平民で、ナターシャという少女らしい。彼女の隣の住人が強盗に襲われて血まみれになったのを見て、聖女の力が発現したらしい。ヘルム伯爵が連れてきたそうだ」
「聖女か……。ニールは、まだその彼女には会っていないんだな」
「会ってはいない。けど、聞いた話だとかなり綺麗な子らしいぞ」
「なるほど。で、聖女の力とはどういった感じだったんだ?」
「え? ああ、切り傷はもちろん、刺された傷も綺麗に治ったらしい。ヘルム伯爵が、その目でしっかり見たとおっしゃっていた」
「ヘルム伯爵が? そうか……、ということは本当に聖女だったんだな」
「なんだ、疑ってたのか?」
「仕方ないだろ。聖女なんてもう伝説級の生き物だと思っていたからな。……でも、そうか。この時代に聖女が現れてくれたのなら、もっと住みやすい世の中になりそうだ」
「そうだな。さて、気分がよくなったところで俺も体を動かしに行ってくるかな。団長は?」
「ちょっと待て。すぐにこの分を終わらせるから」
残りをさっさと済ませて、ニールと一緒に聖騎士団室を後にした。
大広場に行くと、団員たちが剣や魔法を使い手合わせしている。
「団長、久しぶりに手合わせ願おう!」
「よし! じゃあ今日は魔法を封印して、剣の腕だけで」
「乗った!」
剣を構えてニールと向かい合う。いざ!と思うとほぼ同時に、ズドドドドと凄まじい音が近づいてきた。獣魔のプリンとカスタードがすごい勢いでこちらにやってくる。
「おいおい……」
背に乗れと言いたいのか、私のそばにぴたりとくっつく。そして動かずに待っている。ニールの方を見ると、同じようにカスタードが彼のそばにおとなしく寄り添っていた。
「しょうがないな。場合によっては馬上で戦うこともあるわけだし」
「よーし、受けてたつぞ」
楽しそうに返事をしたニールがカスタードにまたがる。
私もプリンにまたがると、彼はうれしそうに少し体を震わせた。
「ロング」
剣を長くする魔法をかけた。それとほぼ同時に、プリンが速度を上げる。カスタードも同じように並走した。
ニールと私はほぼ同時に剣を振り上げた。ガシンと鈍く大きな音がして、剣と剣がぶつかり合う。彼の剣さばきは力強くて重い。剣の腕前だけで言えばおそらく第一聖騎士団一と言えるだろう。容赦なく剣を振りかざしてくる。
「くそっ」
ガシンガシンと鈍い音が続く。
いつの間にか防戦一方になっていた。立て直そうと隙を見て振るった剣がうまくいき、ニールは仰け反るような姿勢になった。
剣を払おうと今度はこちらから攻める。勢いよく何度も振るう剣に、ニールは顔をしかめた。
だがさすがニールで、やられっぱなしではなかった。隙を突いて、顔の真ん前に突き刺すように剣を出してきた。
焦った。
と思ったと同時に、彼の剣がまた容赦なく降り注がれる。
ガシンガシンとしばらく鈍い音が続いた後――。
「あっ!」
カツーンと軽い音が響き、私の手から剣が弾き飛ばされた。宙を舞ったあと十メートルほど先の地面に突き刺さった。
「……負けたな」
ニールが強いとわかっていても、負けたとなるとやはり悔しい。自然と低い声になったのに、ニールの方はそれほど嬉しそうではなかった。
「魔法無しだからな」
ニールが肩をすくめる。
「君の剣技が、戦いの時に力強い味方だということは間違いないよ」
「いや、まあ……それはそうかもしれないけどさ」
「なんだ、珍しいな。照れているのかニール」
「バ、バカなに言って……。あれ?」
ニールの視線が遠くになった。何かに気がついたようだ。気になって私もその方向を見て、
「え?」
自分の眉間にしわが寄ったことを認識した。
巡回終了にはまだ早い時間に、第二王子と二班が帰ってきていた。
「これが落ち着いていられるか! 聖女が見つかったらしい」
「……は? 本当か?」
「ああ。平民で、ナターシャという少女らしい。彼女の隣の住人が強盗に襲われて血まみれになったのを見て、聖女の力が発現したらしい。ヘルム伯爵が連れてきたそうだ」
「聖女か……。ニールは、まだその彼女には会っていないんだな」
「会ってはいない。けど、聞いた話だとかなり綺麗な子らしいぞ」
「なるほど。で、聖女の力とはどういった感じだったんだ?」
「え? ああ、切り傷はもちろん、刺された傷も綺麗に治ったらしい。ヘルム伯爵が、その目でしっかり見たとおっしゃっていた」
「ヘルム伯爵が? そうか……、ということは本当に聖女だったんだな」
「なんだ、疑ってたのか?」
「仕方ないだろ。聖女なんてもう伝説級の生き物だと思っていたからな。……でも、そうか。この時代に聖女が現れてくれたのなら、もっと住みやすい世の中になりそうだ」
「そうだな。さて、気分がよくなったところで俺も体を動かしに行ってくるかな。団長は?」
「ちょっと待て。すぐにこの分を終わらせるから」
残りをさっさと済ませて、ニールと一緒に聖騎士団室を後にした。
大広場に行くと、団員たちが剣や魔法を使い手合わせしている。
「団長、久しぶりに手合わせ願おう!」
「よし! じゃあ今日は魔法を封印して、剣の腕だけで」
「乗った!」
剣を構えてニールと向かい合う。いざ!と思うとほぼ同時に、ズドドドドと凄まじい音が近づいてきた。獣魔のプリンとカスタードがすごい勢いでこちらにやってくる。
「おいおい……」
背に乗れと言いたいのか、私のそばにぴたりとくっつく。そして動かずに待っている。ニールの方を見ると、同じようにカスタードが彼のそばにおとなしく寄り添っていた。
「しょうがないな。場合によっては馬上で戦うこともあるわけだし」
「よーし、受けてたつぞ」
楽しそうに返事をしたニールがカスタードにまたがる。
私もプリンにまたがると、彼はうれしそうに少し体を震わせた。
「ロング」
剣を長くする魔法をかけた。それとほぼ同時に、プリンが速度を上げる。カスタードも同じように並走した。
ニールと私はほぼ同時に剣を振り上げた。ガシンと鈍く大きな音がして、剣と剣がぶつかり合う。彼の剣さばきは力強くて重い。剣の腕前だけで言えばおそらく第一聖騎士団一と言えるだろう。容赦なく剣を振りかざしてくる。
「くそっ」
ガシンガシンと鈍い音が続く。
いつの間にか防戦一方になっていた。立て直そうと隙を見て振るった剣がうまくいき、ニールは仰け反るような姿勢になった。
剣を払おうと今度はこちらから攻める。勢いよく何度も振るう剣に、ニールは顔をしかめた。
だがさすがニールで、やられっぱなしではなかった。隙を突いて、顔の真ん前に突き刺すように剣を出してきた。
焦った。
と思ったと同時に、彼の剣がまた容赦なく降り注がれる。
ガシンガシンとしばらく鈍い音が続いた後――。
「あっ!」
カツーンと軽い音が響き、私の手から剣が弾き飛ばされた。宙を舞ったあと十メートルほど先の地面に突き刺さった。
「……負けたな」
ニールが強いとわかっていても、負けたとなるとやはり悔しい。自然と低い声になったのに、ニールの方はそれほど嬉しそうではなかった。
「魔法無しだからな」
ニールが肩をすくめる。
「君の剣技が、戦いの時に力強い味方だということは間違いないよ」
「いや、まあ……それはそうかもしれないけどさ」
「なんだ、珍しいな。照れているのかニール」
「バ、バカなに言って……。あれ?」
ニールの視線が遠くになった。何かに気がついたようだ。気になって私もその方向を見て、
「え?」
自分の眉間にしわが寄ったことを認識した。
巡回終了にはまだ早い時間に、第二王子と二班が帰ってきていた。
101
あなたにおすすめの小説
姉の忘れ形見を育てたいだけなのに、公爵閣下の執着が重いんですが!?~まっすぐ突き進み系令嬢の公爵家再建計画
及川えり
ファンタジー
突然届いた双子の姉からの手紙。
【これをあなたが読んでいるころにはわたしはもう死んでいることでしょう。わたしのことは探さないでね。双子を引き取ってもらえないかしら?】
姉の遺言通り双子を育てようと姉の嫁ぎ先へと突入する。
双子を顧みなかったという元夫のウィルバート公爵に何とか双子を引き取れるよう掛け合うが、話の流れからそのまま公爵家に滞在して双子を育てる羽目に。
だが、この公爵家、何かおかしい?
異常に気付いたハンナは公爵家に巣くう膿をとりのぞくべく、奮闘しはじめる。
一方ハンナを最初は適当にあしらっていたウィルバートだったが、ハンナの魅力に気付き始め……。
ハンナ・キャロライン・バーディナ 22歳
バーディナ伯爵家令嬢
✖️
ウィルバート・アドルファス・キングスフォード 26歳
キングスフォード公爵
ブックマーク登録、いいね❤️たくさんいただきありがとうございます。
感想もいただけたら嬉しいです。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
公爵家の伝統だと思っていたら、冷徹公爵様の溺愛でした
星乃和花
恋愛
(毎日21:30更新ー全8話)
家族にも周囲にもあまり顧みられず、
「私のことなんて、誰もそんなに気にしない」
と思って生きてきたリリアナ。
ある事情から、冷徹と噂されるヴァレントワ公爵家で働くことになった彼女は、
当主エドガーの細やかな気づかいに驚かされる。
温かいお茶、手袋、外出時のエスコート。
好みの食事までさりげなく用意されて――
けれど自己評価の低いリリアナは、それらすべてを
「これが公爵家の伝統……!」
「さすが名門のお作法……!」
と盛大に勘違い。
一方の冷徹公爵様は、そんな彼女にだけ少しずつ甘さをこぼし始めて……?
これは、
“この家の作法”だと思っていたら、
どうやら冷徹公爵様の溺愛だったらしい
やさしくて甘い勘違いラブコメです。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~
Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。
うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。
でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。
上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。
——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる