幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

文字の大きさ
22 / 59
第二章

歪んだ教育

しおりを挟む
 業務終了時、プリンを迎えに厩舎まで行った。私が顔を出すと、嬉しそうに飛んで来る姿はまあ可愛いものだ。 
「帰りに魔導具を頼みに行くんだ。少し急いでアーク街まで行ってくれるか?」
 プリンはキリッとした表情でうなずいて、私に早く乗れとせかした。

 プリンと言う名前は、団員達の殆どが甘いもの好きだということと、できれば国民たちからも親しまれればいいという願いのもとにつけられた。
 だから私の従魔だけでなくほかの団員たちの従魔にもスイーツを連想させる名前が付けられている。ニールのカスタードもそうだが、他にシュークリームやマロンにチョコという名前まであったりするのだ。

 プリンたち従魔は地面だけでなく空中をも走れる。今日のように急いでいるときは、ほかの人の邪魔にならないように空中を走ってもらっている。

「お前に乗ると気持ち良いな。景色が気持ちよく流れていく」
 プリンはちらりと私を横目で見て、ほんの少しスピードを上げた。強く感じられる風も、慣れればとても心地好いものだ。夕方の、影が伸びた街並みを、上から眺めるのもまた一興だ。

「アーク街に入ったな。速度を落としてくれ」

 くまなく見回したが瘴気らしきものは見当たらない。
 定期的に浄化しているからこういうことはままあることなんだが……。

 プリンに地面に降りてもらってゆっくりと巡回したが、やはり瘴気のかけらも見つけられなかった。
「肩透かしを食らった気分だな。悪いことではないんだけど……」

 少し考えて、予防的措置をとっておくことにした。
 人通りのあまりない路地裏に行き、聖樹の清らかな気を思い描きながら、剣を抜き路上に置く。その場でひざまずいて左手の指先で剣に触れ、目を閉じた。

「浄化」
 まぶしい光が剣から発せられる。微かにキンキンと甲高い音が聞こえ、浄化がなされていることがわかる。湿気を含んだもわっとした空気も、清涼感あるそれに変わっていく。

 十数秒続いた発光が徐々におさまり、何事もなかったかのように光が消えた。
「ありがとうございました」
 一礼をして剣を取り鞘に収める。

「さて、ゲイリーの作業場に行くか」
 プリンにまたがろうと思ったのだが、その前に子供たちが路地裏に顔をのぞかせた。

「聖騎士のお兄さんだ!」
「なっ! 言っただろ? あの光は絶対聖騎士様だって」
「ほんとだ。すごい、浄化してたんですか?」
「そうだよ」

 肯定すると、 子供たちはすごいすごいとはしゃいだ。

「聖騎士様、聖騎士様は闇魔術士を成敗してくれるんですよね」
 反射的に睨みそうになりなんとか堪えた。

 落ち着け。この子たちはまだ幼い。幼いから親の言うことは何もかも正しいと信じてしまうんだ。

「闇魔術士と呼ばれている彼も、君たちと同じ普通の人間なんだよ」
「えーっ、嘘だぁ。闇魔術士は、人の物を盗んだり街を破壊したりと悪い事ばかりするって聞いたもん」
「それは彼が、いじめられたり虐待されて育ったからだよ。人に優しくされたことがないんだ」
「でもそれは、生まれながらのモンスターだからじゃないの?」
 王家の歪んだ教育が、こんな子供たちまでにも浸透しているのかと思ったら吐き気がした。

「違うよ。同じ人間なんだ。生まれながらのモンスターなんていないんだよ。みんな生まれてきたときは、無垢で純粋な心を持っているんだよ」

「ふうん……?」
 子供たちは小さく首を傾げた。
 
 そうだな、幼過ぎてまだ意味はよく分からないか。ならせめて、
「君たちは、小さい子たちには親切にしてあげるんだぞ」
「うん、わかった」
「そうしたらモンスターは生まれないんだね?」
「そういうことだ」
 素直な反応に気を良くして頭をワシャワシャと撫でてやると、彼らは嬉しそうに笑った。

 さて、そろそろゲイリーの作業場に行かなくては。
 プリンにまたがった。 

「じゃあな、あんまり遅くならないうちに家に帰れよ」
「はーい」

 元気に手を振る子供達と別れ、イアンを思いながら作業場へと急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

姉の忘れ形見を育てたいだけなのに、公爵閣下の執着が重いんですが!?~まっすぐ突き進み系令嬢の公爵家再建計画

及川えり
ファンタジー
突然届いた双子の姉からの手紙。 【これをあなたが読んでいるころにはわたしはもう死んでいることでしょう。わたしのことは探さないでね。双子を引き取ってもらえないかしら?】 姉の遺言通り双子を育てようと姉の嫁ぎ先へと突入する。 双子を顧みなかったという元夫のウィルバート公爵に何とか双子を引き取れるよう掛け合うが、話の流れからそのまま公爵家に滞在して双子を育てる羽目に。 だが、この公爵家、何かおかしい? 異常に気付いたハンナは公爵家に巣くう膿をとりのぞくべく、奮闘しはじめる。 一方ハンナを最初は適当にあしらっていたウィルバートだったが、ハンナの魅力に気付き始め……。 ハンナ・キャロライン・バーディナ 22歳      バーディナ伯爵家令嬢         ✖️ ウィルバート・アドルファス・キングスフォード 26歳      キングスフォード公爵 ブックマーク登録、いいね❤️たくさんいただきありがとうございます。 感想もいただけたら嬉しいです。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

公爵家の伝統だと思っていたら、冷徹公爵様の溺愛でした

星乃和花
恋愛
(毎日21:30更新ー全8話) 家族にも周囲にもあまり顧みられず、 「私のことなんて、誰もそんなに気にしない」 と思って生きてきたリリアナ。 ある事情から、冷徹と噂されるヴァレントワ公爵家で働くことになった彼女は、 当主エドガーの細やかな気づかいに驚かされる。 温かいお茶、手袋、外出時のエスコート。 好みの食事までさりげなく用意されて―― けれど自己評価の低いリリアナは、それらすべてを 「これが公爵家の伝統……!」 「さすが名門のお作法……!」 と盛大に勘違い。 一方の冷徹公爵様は、そんな彼女にだけ少しずつ甘さをこぼし始めて……? これは、 “この家の作法”だと思っていたら、 どうやら冷徹公爵様の溺愛だったらしい やさしくて甘い勘違いラブコメです。

僕、天使に転生したようです!

神代天音
BL
 トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。  天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~

Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。 うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。 でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。 上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。 ——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

処理中です...