幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第二章

変化しつつある……

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 ウィルがなかなか屋敷の中に入ってこないのを心配したのだろう。執事長のモラニスとメイド長のマーサがやってきた。

「おかえりなさいませウィルフレッド様。どうなさいましたか?」
「ああ、ただいま。プリンに一晩泊まってもらおうと思ってな」

 ウィルがマーサたちに気を取られて顔を彼女らに向けた瞬間、プリンが前足で俺の足を蹴った。
「いてっ!」
 おかげで俺はべシャッとその場で無様に転んだ。

 こ、このヤロー。
 なにしやがるんだとプリンを見上げると、こいつはツンとお高く馬鹿にしたような目で俺を見ている。

「ルアン様、大丈夫ですか?」
 転んだ俺に気が付いて、リースが慌てて立ち上がらせた。服についた泥を、払ってくれている。

「どうした、ルアン」
「ルアン様?」
「足元が暗いせいで、躓いちゃったみたいです」

 どうやらリースも、俺がプリンに蹴られているところを見ていなかったようだ。賢いと言われるだけあって、ずる賢いやつだ。

 泥を払われている俺を見て、ウィルがひょいと俺を抱き上げた。

「あぶなっかしいな。怪我しなかったか?」
 心配そうに俺を見るウィルに、『お前の従魔にやられたんだぞ』と文句の一つも言ってやりたかったけど、ちらっとプリンに視線を向けると、プリンの何とも言えない怒っているような羨ましがっているような目にぶつかった。

 こいつ、もしかして嫉妬してる?
 ……大事な主人が俺に気を配っていることを本能で察知して、嫌がらせをしたわけなんだな。なるほど。
 ニヤリと笑ってみせると、プリンの表情が余計に悪くなった。
 俺はな、やられたらやり返すタチなんだよ。相手が一番ダメージを被る形でな。
 えいっ!

 かなり不本意で不本意だけど、ウィルの首に抱きついた。
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
 四人ほぼ同時に驚きの声を上げた。中でもウィルなんて、目をまん丸に見開いてとんだアホ面だ。と思ったら、とたんにパーッと表情を明るくして俺を力いっぱい抱きしめた。

「い、いててててっ」
「そうか、そうか。私がいつもより帰りが遅くなったから心配してくれたんだな。恋しいと思ってくれたんだな」
 ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ。
「痛い、痛い、痛いっ!」
「えっ? あ、すまん」

 腕を緩めて俺の顔を覗き込んだ。その表情のだらしないことったらない。眉も目尻も下がって、砂糖でもぶちまけたような甘ったるい顔だ。
 鳥肌立つような気持ち悪い顔なはずなのに、なんだ? 俺の心臓ドキドキ言ってないか? しかもなんだか顔が熱いぞ。

 なんだ、これ!

 まさか俺、うれしいだなんて思ってないよな?
 うれしいなんて……。

 顔を上げると、ウィルだけじゃない。 リースやマーサもモラニスだって、すごく優しい表情で俺を見ている。

 この屋敷の人たちはみんな変なんだ。だから俺もいつの間にか変になっちまってる。
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