幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第二章

出来上がったメガネで

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 玄関に向かう途中でウィルの姿を見かけた。大股で、きびきびと歩いている。

「おかえりなさいませ、ウィルフレッド様」
 リースの声にウィルが振り返った。そして「あっ」という表情をして、すたすたとこちらに近づいてきた。

「ただいま。――ルアンはどうしたんだ? ケガでも?」
 ウィルは代わりに自分が抱っこしようという感じで、両手を前に差し出した。

「いいえ、そうじゃないんです。私が寒いので、湯たんぽ代わりに抱っこさせてもらったんです」
「えっ? ルアンが承諾したのか?」
「はい。ね?」
 リースがこちらに顔を向けた気配がした。俺は向こう側を向いているから、見ちゃいないけどな。
 ……後頭部に視線を感じる。

「……俺も寒かったからな」
「そうか……」

 リースが湯たんぽ代わりと言ったのでそれ以上言ってはこなかったが、俺の顔が見える位置まで移動して、うらやましそうな顔でこちらを見るのがなんともうっとうしい。

「あっ」
 唐突に思い出した。
 
「メガネ! 魔道具のメガネはどうしたんだ? 持って来たのか?」
「ああ、買ってきたぞ。部屋に入ってからな」
「! リース!」
「はい、分かりました! 急ぎますよー」
 ふざけた口調で返事をしたリースが、俺をしっかりと抱きしめたあと急に走り出した。思わず俺も「うわっ」と声が出てしまいリースにしがみついた。

「羨ましいぞ、 リース!」
「ご主人様、すみませーん」
 およそすまないとは思えない態度で、リースは笑いながら加速した。

 全力疾走して入ってきたリースとウィルを見て、執事長のモラニスが小言を言った。
 ウィルは、「悪かったな」の一言で済ませたのだけど、リースが慌てて謝っていたので少し気の毒になった俺は、モラニスに「おれがわるいんだ。リースにいそいでくれってたのんだから」と、上目使いに、そして少々舌足らずさを強調して謝ると、モラニスはぐっと詰まり、「それでしたら仕方がありませんね」と言って気まずそうに咳払いをした。


「今日のお前は、あざとかったな」 
 食事を済ませ風呂に入ってから、ウィルが俺の部屋にやってきた。例のメガネを持って。

「は? 何のこと?」
 思いっきり惚けるとウィルは肩をすくめた。
「まあいい。ほら、見てろよ」

 色つきのメガネにすると言っていたのに、見た感じはただの普通の透明なレンズだ。だけどウィルが掛けた途端様相が変わった。
 さっきまで透明だったのに、メガネのレンズには俺の姿と背景にこの部屋が映っていて、ウィルの目が全然見えない。
 あんぐりする俺を見て、ウィルが楽しそうに笑った。

「面白いだろう? このメガネは、掛けている人が見ている光景を、そのレンズに映し出すように出来ているんだ」

「見るのに何の支障もないのか?」
「そうだよ」
「すげー。こんなの作れるなんて天才だな」
「そうだよ。ほら、ルアンも掛けてみろ」
「うん」

 ウィルから受け取って眼鏡を耳に掛ける寸前に、サイズが変わったのが分かった。小さな俺の顔にぴったりとはまる。そして視界はとてもクリアだ。

「俺の目、見えてないのか?」
「ああ、見えてないよ」

 なんだかとても楽しくなってきて、鏡に映る自分の姿を見たくなった。てててと走って鏡の前に行く。
 面白い。メガネのレンズには、鏡に映る俺がいる。

「このメガネ、今富裕層向けに流行りかけているそうだぞ」
「へえ?」
「眩しい光を抑える作用もあるから、目の悪い人にも優しい眼鏡なんだ。それに加えて奇抜だろ? だからあっという間に噂が広がって、健康な人でも手に取る人が多いそうなんだ」

「ふうん。……じゃあこれ掛けて、外に出てもいいんだな」
「まあ……、そうだな。そろそろ聖女のパレードがあるから、その時にそれを掛けて、外に出るって言うのもいいかもしれないな」

「聖女のパレード?」
「ああ。盛大にやるそうだぞ。私はその時警護にあたるから、一緒に行くことはできないけど」
「……ウィルはもうその聖女に会ったの?」
「いや、まだだ。だけどその前にお披露目パーティーがあるから、ルアンたちよりは先に聖女にお目見えすることになるな」

「ふうん」
 楽しみにしているように話すウィルが、俺には面白くなかった。
 
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