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第二章
お披露目パーティ 3
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お披露目パーティーも無事に終わり、残っているのは話が盛り上がっている数人くらいだ。だが彼らもその状況に気がついたらしく、そそくさと会場を後にした。
「さて、そろそろ私らも帰ろうか。あとは近衛騎士団に任せればいい」
「はい」
団員に声をかけてパーティー会場を後にする。今日は補佐的な立場だったので、みんな気分転換にもなっていたようだ。
「申し訳ないと思いつつ、今日は楽しんでしまいました」
「俺もです。料理めちゃくちゃ美味しかった」
「そうかそうか、良かったな。俺は団長と肉食らってたぞ」
「聖女様は可愛らしく優しそうな方でしたね」
「そうだな」
笑いながらニールがチラリと私に視線をよこした。何が言いたいのかをなんとなく察し、わざと視線を逸らした。
会場を離れて廊下を歩いている私たちの後ろから、カツカツカツと軽い足音が近づいてきた。なんだ?と思って振り返ると、聖女が駆け足でこちらに向かって走って来ていた。もちろん護衛騎士もぴたりと横についている。
あれはちょっと苦労するな。
「聖女様だぞ」
団員たちがそわそわし始めた。
聖女はすみませんと言いながら、私たちの前で立ち止まり、胸に手を当ててはあはあと息を整えていた。愛らしい少女のそのような姿は、普通なら庇護欲をそそるものなのだろう。実際団員たちも、目を細めて彼女を見ている。
「何かご用でしょうか?」とニールが尋ねた。
聖女がにこりと微笑む。
「聖騎士団の皆さま一人ひとりに、ちゃんとご挨拶できていなかったなと思いまして……。改めてご挨拶申し上げます。この国の聖女になりましたナターシャです。時には皆さまと力を合わせることもあるかもしれないと聞きました。皆様の役に立てるよう頑張りたいと思っていますので、仲良くしてください。どうかよろしくお願いします」
礼儀正しい態度だ。平民出身だというのに、なんてできた子なんだろう。
感心の面持ちで見ていたら、ナターシャは気恥ずかしそうに目を伏せた。
「淑女教育というものを受けさせてもらっているのですが、まだ上手くいかないようです」
「そんなことはないでしょう。逆に感心していたところですよ」
「本当ですか?」
もちろん本心だ。私はお世辞が嫌いだ。
「はい」
はっきりと返事をした私に、聖女の表情がパッと明るくなった。
「聖騎士団の団長様にそう言ってもらえると安心します。あの、今度聖騎士団室に遊びに行っても良いですか?」
背後に控えている護衛騎士が眉をひそめた。
「ナターシャ様、その必要はないとクリストファー殿下が申しておりました」
聖女がムッと眉をひそめる。そんな表情ですら可愛いらしい。
「必要ないだなんてそんなことどうして言えるのですか? 何かあった時のためにも、お互い気心知れた仲になっていた方がいいんじゃないでしょうか。……違いますか?」
「……違うとは言えないかもしれませんが、信頼関係にあたっては、ナターシャ様が普段の行動でお示しになればよいことです」
これは護衛騎士の言う方がもっともだと私も思う。もともと聖女はその聖なる力と存在だけで崇高な立場にある。よほどのことがない限り、聖女を蔑ろにするなんて考えられないのだ。
「すみません、よろしいでしょうか?」
聖女と護衛騎士とのやり取りに、サムが声を上げた。護衛騎士と聖女がうなずいたので私も同意した。
「僕らとしては、聖女様と交流させていただくと士気が高まります」
「俺もです」
「僕もそう思います」
「お前ら……」
「団長様! 決して皆さんのお仕事の邪魔はしませんから、私も仲間だと思わせてください」
「…………」
聖女と団員たちは期待に満ちた目で私を見ている。
まあ確かに、そこまで意固地になって交流をやめる必要はないか。
「そうですね。そういう考えもいいかもしれないですね」
私がそういうと聖女の顔が明るくなり、護衛騎士は困ったなというように眉を顰めていた。
「さて、そろそろ私らも帰ろうか。あとは近衛騎士団に任せればいい」
「はい」
団員に声をかけてパーティー会場を後にする。今日は補佐的な立場だったので、みんな気分転換にもなっていたようだ。
「申し訳ないと思いつつ、今日は楽しんでしまいました」
「俺もです。料理めちゃくちゃ美味しかった」
「そうかそうか、良かったな。俺は団長と肉食らってたぞ」
「聖女様は可愛らしく優しそうな方でしたね」
「そうだな」
笑いながらニールがチラリと私に視線をよこした。何が言いたいのかをなんとなく察し、わざと視線を逸らした。
会場を離れて廊下を歩いている私たちの後ろから、カツカツカツと軽い足音が近づいてきた。なんだ?と思って振り返ると、聖女が駆け足でこちらに向かって走って来ていた。もちろん護衛騎士もぴたりと横についている。
あれはちょっと苦労するな。
「聖女様だぞ」
団員たちがそわそわし始めた。
聖女はすみませんと言いながら、私たちの前で立ち止まり、胸に手を当ててはあはあと息を整えていた。愛らしい少女のそのような姿は、普通なら庇護欲をそそるものなのだろう。実際団員たちも、目を細めて彼女を見ている。
「何かご用でしょうか?」とニールが尋ねた。
聖女がにこりと微笑む。
「聖騎士団の皆さま一人ひとりに、ちゃんとご挨拶できていなかったなと思いまして……。改めてご挨拶申し上げます。この国の聖女になりましたナターシャです。時には皆さまと力を合わせることもあるかもしれないと聞きました。皆様の役に立てるよう頑張りたいと思っていますので、仲良くしてください。どうかよろしくお願いします」
礼儀正しい態度だ。平民出身だというのに、なんてできた子なんだろう。
感心の面持ちで見ていたら、ナターシャは気恥ずかしそうに目を伏せた。
「淑女教育というものを受けさせてもらっているのですが、まだ上手くいかないようです」
「そんなことはないでしょう。逆に感心していたところですよ」
「本当ですか?」
もちろん本心だ。私はお世辞が嫌いだ。
「はい」
はっきりと返事をした私に、聖女の表情がパッと明るくなった。
「聖騎士団の団長様にそう言ってもらえると安心します。あの、今度聖騎士団室に遊びに行っても良いですか?」
背後に控えている護衛騎士が眉をひそめた。
「ナターシャ様、その必要はないとクリストファー殿下が申しておりました」
聖女がムッと眉をひそめる。そんな表情ですら可愛いらしい。
「必要ないだなんてそんなことどうして言えるのですか? 何かあった時のためにも、お互い気心知れた仲になっていた方がいいんじゃないでしょうか。……違いますか?」
「……違うとは言えないかもしれませんが、信頼関係にあたっては、ナターシャ様が普段の行動でお示しになればよいことです」
これは護衛騎士の言う方がもっともだと私も思う。もともと聖女はその聖なる力と存在だけで崇高な立場にある。よほどのことがない限り、聖女を蔑ろにするなんて考えられないのだ。
「すみません、よろしいでしょうか?」
聖女と護衛騎士とのやり取りに、サムが声を上げた。護衛騎士と聖女がうなずいたので私も同意した。
「僕らとしては、聖女様と交流させていただくと士気が高まります」
「俺もです」
「僕もそう思います」
「お前ら……」
「団長様! 決して皆さんのお仕事の邪魔はしませんから、私も仲間だと思わせてください」
「…………」
聖女と団員たちは期待に満ちた目で私を見ている。
まあ確かに、そこまで意固地になって交流をやめる必要はないか。
「そうですね。そういう考えもいいかもしれないですね」
私がそういうと聖女の顔が明るくなり、護衛騎士は困ったなというように眉を顰めていた。
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