幼児化した闇魔術士は聖騎士に溺愛される

くるむ

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第三章

異変 2

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 目が覚めた時、ベッドの上にいた。手を握られていて、誰だろうと顔を横に向けるとウィルだった。うつむいている。起きているのかうたた寝してしまっているのかこちらからは見えない。
 握られた手を離そうと動かすと、ハッとした様子でウィルが顔を上げた。

「大丈夫か、痛みはないか?」
 真剣な表情にたじろいだ。
「う、うん。さっきは死ぬかと思うくらい痛かったけど、今は何ともないよ」
「そうか……。それならいいが、こんな夜遅い時間に庭で何をやっていたんだ? なんでそんな姿になっている?」
「え……」
 俺の魔力がどれくらいのものになっているのか確かめたかっただけなんだけど、ウィルがあまりにも心配そうに真剣な表情で見つめているからなんだか言い出しにくい。

「えっと、その……そんな姿ってどういう意味?」
「成長している。今のルアンは五、六歳くらいに見えるぞ」
「えっ!?」

 想像もしていなかったウィルの言葉に、俺は信じられなくて今すぐ鏡を見て確かめたくなった。起き上がって布団をめくったところでウィルに逆に布団に押しつけられた。

「今は何ともないかもしれないが、さっきまで痛みのあまり気を失っていたんだろう。おとなしくしていろっ」

「うっ、うん」
 あまりの気迫にびっくりして、思わず素直に言うことを聞いてしまった。

「で?」
「は?」
 何が「で?」なんだとキョトンとしていると、ウィルの表情がなんだか怖くなってきた。

「庭で、こんな夜遅くに、ルアンは一体何をしていたんだ」

 あー。
 どうしても言わなきゃだめなのか……。

 ウィルの表情を見ていても、どうやら流してくれるという選択肢はないみたいだ。仕方がない。別に悪いことをしているわけではないしな。

「俺の魔法が今どれくらい使えるのか知りたかった。屋内ではみんなに迷惑かかるだろ? だから外に出てやってたんだよ」

「――それで?」
「えっ?」
「それで、どうしたんだ」
 なんだかいつものウィルより、声音が硬い。

「えっと、その……だから、一応ちょっぴりは魔法も使いやすくなってたみたいで、もうちょっとファイヤーボールを大きくしたいなあって試したら、少しは大きくなったんだよ。でもその直後にお前に幼児化された時と同じぐらいの痛みが走って……気ぃ失っちゃったというか、そんな感じ……」
 語尾が小さくなるのは仕方がない。ウィルから恐ろしいくらいの冷気が放たれているんだ。いつもはニコニコしているのに、なんなんだ今日は。

「ルアン」
「……はい」
「全力出したな、そしてそれ以上の力を出そうと思っただろ」

 は? 迷惑かけて悪かったと思ったけど、何俺が悪いことしたみたいな言い方してるんだこいつ。

「当然だろう! こんなちっこくなって力も全然ないんだ。焦るの当たり前じゃないか! 何かあった時どうするんだよ」

「その何かが起こらないようにしているんだ! 今のルアンを見て元の姿を想像することができる奴なんて居ない。頼むから無茶しないでくれ」

「無茶ってなんだよ。自分の力を取り戻したいと思っただけじゃないか」

 俺にとっては当たり前の主張だ。なのに、ウィルは苦しそうに眉をひそめた。
 おずおずと俺の前に両手を出して、頬に触れた。そしてじっと俺を見つめる。

「私は君が闇魔術師と呼ばれていた頃からずっと気になっていた。虐げられてつらい思いをしていなければあんなふうに暴れているわけがないんだとそう思っていたからだ。実際君を無理やり保護したわけだが、おかげでやっぱり私の見る目は正しかったと思えたよ。君は本来、やんちゃかもしれないが充分愛らしい子だ。私は誰よりも君を愛しいと思っている。だからあんな王家の歪んだ思想のせいで、君を不幸な目に遭わせたくないんだ」

「ウイル……」
「おそらく君が成長したのは、全力で魔力を解放しようとしたせいだ。その時に幼児化の魔法に何らかの影響を与えたんだろう。――もちろん今の状態でずっと我慢しろと言うつもりはない。いつかルアンが普通に生活できるようにこの国を変えていければいいと思っている。不安かもしれないが、もうしばらく辛抱してはくれないか」

「なんでそこまで……」
「言ったろ? 君が暴れていたころからずっと気になって見ていて、なんとか助けてやれないかと思っていた。そしてこうやって君を保護しているうちに、君への愛しさがふつふつと大きく湧き上がってだな……」

「も、もういいよ。わかったから!」
 顔から火が吹いてるみたいに熱くなってきた。しかも心臓が変な動きし始めてるし……。

「それじゃあもう少し、我慢してくれるか?」
「……わかった」

 渋々ながら頷くと、ウィルはやっと安心したような笑顔を見せた。
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