39 / 59
第三章
異変 2
しおりを挟む
目が覚めた時、ベッドの上にいた。手を握られていて、誰だろうと顔を横に向けるとウィルだった。うつむいている。起きているのかうたた寝してしまっているのかこちらからは見えない。
握られた手を離そうと動かすと、ハッとした様子でウィルが顔を上げた。
「大丈夫か、痛みはないか?」
真剣な表情にたじろいだ。
「う、うん。さっきは死ぬかと思うくらい痛かったけど、今は何ともないよ」
「そうか……。それならいいが、こんな夜遅い時間に庭で何をやっていたんだ? なんでそんな姿になっている?」
「え……」
俺の魔力がどれくらいのものになっているのか確かめたかっただけなんだけど、ウィルがあまりにも心配そうに真剣な表情で見つめているからなんだか言い出しにくい。
「えっと、その……そんな姿ってどういう意味?」
「成長している。今のルアンは五、六歳くらいに見えるぞ」
「えっ!?」
想像もしていなかったウィルの言葉に、俺は信じられなくて今すぐ鏡を見て確かめたくなった。起き上がって布団をめくったところでウィルに逆に布団に押しつけられた。
「今は何ともないかもしれないが、さっきまで痛みのあまり気を失っていたんだろう。おとなしくしていろっ」
「うっ、うん」
あまりの気迫にびっくりして、思わず素直に言うことを聞いてしまった。
「で?」
「は?」
何が「で?」なんだとキョトンとしていると、ウィルの表情がなんだか怖くなってきた。
「庭で、こんな夜遅くに、ルアンは一体何をしていたんだ」
あー。
どうしても言わなきゃだめなのか……。
ウィルの表情を見ていても、どうやら流してくれるという選択肢はないみたいだ。仕方がない。別に悪いことをしているわけではないしな。
「俺の魔法が今どれくらい使えるのか知りたかった。屋内ではみんなに迷惑かかるだろ? だから外に出てやってたんだよ」
「――それで?」
「えっ?」
「それで、どうしたんだ」
なんだかいつものウィルより、声音が硬い。
「えっと、その……だから、一応ちょっぴりは魔法も使いやすくなってたみたいで、もうちょっとファイヤーボールを大きくしたいなあって試したら、少しは大きくなったんだよ。でもその直後にお前に幼児化された時と同じぐらいの痛みが走って……気ぃ失っちゃったというか、そんな感じ……」
語尾が小さくなるのは仕方がない。ウィルから恐ろしいくらいの冷気が放たれているんだ。いつもはニコニコしているのに、なんなんだ今日は。
「ルアン」
「……はい」
「全力出したな、そしてそれ以上の力を出そうと思っただろ」
は? 迷惑かけて悪かったと思ったけど、何俺が悪いことしたみたいな言い方してるんだこいつ。
「当然だろう! こんなちっこくなって力も全然ないんだ。焦るの当たり前じゃないか! 何かあった時どうするんだよ」
「その何かが起こらないようにしているんだ! 今のルアンを見て元の姿を想像することができる奴なんて居ない。頼むから無茶しないでくれ」
「無茶ってなんだよ。自分の力を取り戻したいと思っただけじゃないか」
俺にとっては当たり前の主張だ。なのに、ウィルは苦しそうに眉をひそめた。
おずおずと俺の前に両手を出して、頬に触れた。そしてじっと俺を見つめる。
「私は君が闇魔術師と呼ばれていた頃からずっと気になっていた。虐げられてつらい思いをしていなければあんなふうに暴れているわけがないんだとそう思っていたからだ。実際君を無理やり保護したわけだが、おかげでやっぱり私の見る目は正しかったと思えたよ。君は本来、やんちゃかもしれないが充分愛らしい子だ。私は誰よりも君を愛しいと思っている。だからあんな王家の歪んだ思想のせいで、君を不幸な目に遭わせたくないんだ」
「ウイル……」
「おそらく君が成長したのは、全力で魔力を解放しようとしたせいだ。その時に幼児化の魔法に何らかの影響を与えたんだろう。――もちろん今の状態でずっと我慢しろと言うつもりはない。いつかルアンが普通に生活できるようにこの国を変えていければいいと思っている。不安かもしれないが、もうしばらく辛抱してはくれないか」
「なんでそこまで……」
「言ったろ? 君が暴れていたころからずっと気になって見ていて、なんとか助けてやれないかと思っていた。そしてこうやって君を保護しているうちに、君への愛しさがふつふつと大きく湧き上がってだな……」
「も、もういいよ。わかったから!」
顔から火が吹いてるみたいに熱くなってきた。しかも心臓が変な動きし始めてるし……。
「それじゃあもう少し、我慢してくれるか?」
「……わかった」
渋々ながら頷くと、ウィルはやっと安心したような笑顔を見せた。
握られた手を離そうと動かすと、ハッとした様子でウィルが顔を上げた。
「大丈夫か、痛みはないか?」
真剣な表情にたじろいだ。
「う、うん。さっきは死ぬかと思うくらい痛かったけど、今は何ともないよ」
「そうか……。それならいいが、こんな夜遅い時間に庭で何をやっていたんだ? なんでそんな姿になっている?」
「え……」
俺の魔力がどれくらいのものになっているのか確かめたかっただけなんだけど、ウィルがあまりにも心配そうに真剣な表情で見つめているからなんだか言い出しにくい。
「えっと、その……そんな姿ってどういう意味?」
「成長している。今のルアンは五、六歳くらいに見えるぞ」
「えっ!?」
想像もしていなかったウィルの言葉に、俺は信じられなくて今すぐ鏡を見て確かめたくなった。起き上がって布団をめくったところでウィルに逆に布団に押しつけられた。
「今は何ともないかもしれないが、さっきまで痛みのあまり気を失っていたんだろう。おとなしくしていろっ」
「うっ、うん」
あまりの気迫にびっくりして、思わず素直に言うことを聞いてしまった。
「で?」
「は?」
何が「で?」なんだとキョトンとしていると、ウィルの表情がなんだか怖くなってきた。
「庭で、こんな夜遅くに、ルアンは一体何をしていたんだ」
あー。
どうしても言わなきゃだめなのか……。
ウィルの表情を見ていても、どうやら流してくれるという選択肢はないみたいだ。仕方がない。別に悪いことをしているわけではないしな。
「俺の魔法が今どれくらい使えるのか知りたかった。屋内ではみんなに迷惑かかるだろ? だから外に出てやってたんだよ」
「――それで?」
「えっ?」
「それで、どうしたんだ」
なんだかいつものウィルより、声音が硬い。
「えっと、その……だから、一応ちょっぴりは魔法も使いやすくなってたみたいで、もうちょっとファイヤーボールを大きくしたいなあって試したら、少しは大きくなったんだよ。でもその直後にお前に幼児化された時と同じぐらいの痛みが走って……気ぃ失っちゃったというか、そんな感じ……」
語尾が小さくなるのは仕方がない。ウィルから恐ろしいくらいの冷気が放たれているんだ。いつもはニコニコしているのに、なんなんだ今日は。
「ルアン」
「……はい」
「全力出したな、そしてそれ以上の力を出そうと思っただろ」
は? 迷惑かけて悪かったと思ったけど、何俺が悪いことしたみたいな言い方してるんだこいつ。
「当然だろう! こんなちっこくなって力も全然ないんだ。焦るの当たり前じゃないか! 何かあった時どうするんだよ」
「その何かが起こらないようにしているんだ! 今のルアンを見て元の姿を想像することができる奴なんて居ない。頼むから無茶しないでくれ」
「無茶ってなんだよ。自分の力を取り戻したいと思っただけじゃないか」
俺にとっては当たり前の主張だ。なのに、ウィルは苦しそうに眉をひそめた。
おずおずと俺の前に両手を出して、頬に触れた。そしてじっと俺を見つめる。
「私は君が闇魔術師と呼ばれていた頃からずっと気になっていた。虐げられてつらい思いをしていなければあんなふうに暴れているわけがないんだとそう思っていたからだ。実際君を無理やり保護したわけだが、おかげでやっぱり私の見る目は正しかったと思えたよ。君は本来、やんちゃかもしれないが充分愛らしい子だ。私は誰よりも君を愛しいと思っている。だからあんな王家の歪んだ思想のせいで、君を不幸な目に遭わせたくないんだ」
「ウイル……」
「おそらく君が成長したのは、全力で魔力を解放しようとしたせいだ。その時に幼児化の魔法に何らかの影響を与えたんだろう。――もちろん今の状態でずっと我慢しろと言うつもりはない。いつかルアンが普通に生活できるようにこの国を変えていければいいと思っている。不安かもしれないが、もうしばらく辛抱してはくれないか」
「なんでそこまで……」
「言ったろ? 君が暴れていたころからずっと気になって見ていて、なんとか助けてやれないかと思っていた。そしてこうやって君を保護しているうちに、君への愛しさがふつふつと大きく湧き上がってだな……」
「も、もういいよ。わかったから!」
顔から火が吹いてるみたいに熱くなってきた。しかも心臓が変な動きし始めてるし……。
「それじゃあもう少し、我慢してくれるか?」
「……わかった」
渋々ながら頷くと、ウィルはやっと安心したような笑顔を見せた。
106
あなたにおすすめの小説
姉の忘れ形見を育てたいだけなのに、公爵閣下の執着が重いんですが!?~まっすぐ突き進み系令嬢の公爵家再建計画
及川えり
ファンタジー
突然届いた双子の姉からの手紙。
【これをあなたが読んでいるころにはわたしはもう死んでいることでしょう。わたしのことは探さないでね。双子を引き取ってもらえないかしら?】
姉の遺言通り双子を育てようと姉の嫁ぎ先へと突入する。
双子を顧みなかったという元夫のウィルバート公爵に何とか双子を引き取れるよう掛け合うが、話の流れからそのまま公爵家に滞在して双子を育てる羽目に。
だが、この公爵家、何かおかしい?
異常に気付いたハンナは公爵家に巣くう膿をとりのぞくべく、奮闘しはじめる。
一方ハンナを最初は適当にあしらっていたウィルバートだったが、ハンナの魅力に気付き始め……。
ハンナ・キャロライン・バーディナ 22歳
バーディナ伯爵家令嬢
✖️
ウィルバート・アドルファス・キングスフォード 26歳
キングスフォード公爵
ブックマーク登録、いいね❤️たくさんいただきありがとうございます。
感想もいただけたら嬉しいです。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
公爵家の伝統だと思っていたら、冷徹公爵様の溺愛でした
星乃和花
恋愛
(毎日21:30更新ー全8話)
家族にも周囲にもあまり顧みられず、
「私のことなんて、誰もそんなに気にしない」
と思って生きてきたリリアナ。
ある事情から、冷徹と噂されるヴァレントワ公爵家で働くことになった彼女は、
当主エドガーの細やかな気づかいに驚かされる。
温かいお茶、手袋、外出時のエスコート。
好みの食事までさりげなく用意されて――
けれど自己評価の低いリリアナは、それらすべてを
「これが公爵家の伝統……!」
「さすが名門のお作法……!」
と盛大に勘違い。
一方の冷徹公爵様は、そんな彼女にだけ少しずつ甘さをこぼし始めて……?
これは、
“この家の作法”だと思っていたら、
どうやら冷徹公爵様の溺愛だったらしい
やさしくて甘い勘違いラブコメです。
僕、天使に転生したようです!
神代天音
BL
トラックに轢かれそうだった猫……ではなく鳥を助けたら、転生をしていたアンジュ。新しい家族は最低で、世話は最低限。そんなある日、自分が売られることを知って……。
天使のような羽を持って生まれてしまったアンジュが、周りのみんなに愛されるお話です。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
最安もふもふ三匹に名前をつける変な冒険者ですが、この子たちの力を引き出せるのは私だけです ~精霊偏愛録~
Lihito
ファンタジー
精霊に名前をつける冒険者は、たぶん私だけだ。
うさぎのノル、狐のルゥ、モモンガのピノ。三匹とも最安の契約で、手のひらに乗るサイズ。周りからは「手乗り精霊で何ができる」と笑われている。
でも、この子たちへの聞き方を変えるだけで、返ってくる答えはまるで違う。三匹の情報を重ねれば、上位の精霊一体では見えないものが見える。
上位パーティが三度失敗した大型討伐。私は戦わない。ノルに地中を、ピノに上空を、ルゥに地上を調べさせて、答えを組み上げる。
——この世界の精霊の使い方、みんな間違ってませんか?
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる