腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ

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第一章

微妙にずれる展開

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う~、本当に何でこんな事になってるんだよ。俺が駿介にドキドキしてしまうのは仕方ないとしても、俺が一番見たいのは樹と駿介のいちゃラブ状態なんだよ。
小説の中ではそう言うシーンが無いから、二人三脚の密着は凄く楽しみにしていたのに。

「真紀?」
「あ、何?」
「何じゃないだろ。何ボーッとしてるんだよ?」
「ああ、ゴメン。練習しなきゃなって考えてたんだよ ……、あっ! そうだ、樹達も一緒に練習しようよ!」

そうだ、そうだよ。一緒にいればもしかしたら、二人の密着シーンが見れる可能性が出てくるかも!

「え? 一緒に?」
「うん、だって心細いし。同じレベルの樹がいると思えば安心できる」
「エー、何それ酷くない?」
「心細いって何だ?」
「え?」

俺と樹が喋っていると、急にその会話に駿介が割り込んできた。見るとちょっとムッとしたような表情をしている。

「俺と二人だと心細いのか?」

ええっ、そこに引っ掛かってるの?
何で? やっぱり何だか訳わかんない展開になってる!
も~!!

「だから! 俺運動神経悪すぎるから、情けなくて恥ずかしいんだよ! 何度も言わせんなっ」

ぷくっと頬を膨らませて、それ以外何が有るのだという顔を作った。もちろん本音は別だけど。

それを聞いた駿介は、一瞬目を見開き良介を振り返る。良介は良介で肩をすくめて小首を傾げた。およそ運動神経のいい彼らには、分からない心境だろう。

「俺は一緒に練習してもいいよ」

天使のように可愛らしい笑みを見せた樹が、「ね、いいよね?」と良介を振り返った。

「それは構わないけど ――」

構わないと言いつつ、良介もなんとなく俺の案には乗り気ではなさそうだ。

「俺部活があるから、土日以外は少ししか付き合えないんだよな……」

おおっ、それは願ったり!
俺としては邪魔な良介がいない方が、願望が成就しやすいってわけだ。

だけど相方の良介が少しの時間しか居れないと聞き、樹の顔色が曇った。

「……ああ、そっかー。俺一人なのに付き合ってもなあ……。じゃあ俺らは土日だけ一緒に付き合うという事で……」
「ええ~っ? ちょっと待ってよ。せめて初日だけは付き合ってよ。最初が一番ヘタくそなんだから!」

お願い!とパチンと両手を合わせて拝み込む。

俺の必死なお願いに、3人は呆れた顔をして、だけど仕方がないなと言うように頷いた。


基本駿介は存在感半端ないオーラを持ったキャラだけど、決してはしゃぐタイプなんかじゃない。だけどこういうイベント事に関しては、しっかり参加をするし楽しいとも思っている。
だから俺みたいな運動神経が鈍い奴にも、楽しいと思って貰おうと思っているんだろう、きっと。

「真紀、練習に行くぞ」
静かな笑みをたたえ、駿介が近づいてきた。おかげでまた俺の心臓が忙しなくなる。

はうっ。
やっぱりどうしても、なかなか慣れない……。駿介ほんと、笑顔とイケボの無駄遣いだよ。

「真紀?」
「あ、うん。待って」

ワタワタと支度をし、荷物を持ってグラウンドに行こうとしたら駿介に腕を掴まれた。
トクン。

……!?
トクンって何だ、トクンって!

「先に寮に戻って荷物置いてからにしよう」
「あ、えっ。あっ……、うん」

うわ~、何だよ何だよ、俺の挙動不審!!
しかも妙に顔が熱いぞ! 恐るべし、俺の推しキャラ!

くっそ熱くなるヤバい顔。
俺と目が合って、一瞬ぱちくりした駿介は何故か楽しそうに笑った。笑って、掴んでいた俺の腕を離して(ホッとしたのもつかの間←だって近いと無駄にドキドキする!)、代わりに掌に握り替えた。

えっ!!

「さ、急ごうか」
「えっ、ちょっ、待っ……!」
「樹たちとは、グラウンドで合流することになってるから」

戸惑う俺をよそに、駿介は俺の手を握ったままズンズンと歩いていく。

廊下ですれ違うみんなの視線が痛かった……。
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