腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ

文字の大きさ
45 / 80
第四章

バレちゃったよ……

しおりを挟む
どうやら樹たちは、食堂でお互いの気持ちを伝え合ったらしい。登校するさなか、二人の感じは幸せな初々しい雰囲気に包まれていた。

俺はというと、三森の事が気になっていて、何とかして二人で話をしたいと思っていた。
なんだけど……。

一人になれる時間がないんだよ!

谷口のせいで駿介が俺にすごく気を遣ってくれて、片時も目を離さないし(もちろん嬉しいけどな!)。駿介がいない時はいない時で、青島が傍にくっついてるし……っ。



そうして俺が動けずにいるうちに時間だけはドンドン過ぎて行き、とうとう体育祭が始まってしまった。

「最初はリレーなんだね」
「そうだな」
「本当は俺、これに出たかったんだけどな」
「そうだったな。でも、これがダメだったから俺と二人三脚することになったんじゃないか」
「それは……、そう……なんだけど」

良介に顔を近付けられ微笑まれて、樹は分かりやすく頬を染めた。

はわわわわ❤
可愛い、可愛い樹。デレてる、デレてる。
もっとイチャイチャしろ! 抱き付け、キスしろ!
……てか、こんなみんなの前じゃ無理か。

駿介の隣で、俺はさっきから樹たちをこっそり覗き見中。

「芹沢、お前気持ち悪いぞ」
「えっ?」

樹と良介のイチャイチャに気が行ってて、青島が自分をガン見している事に気が付かなかった。慌てて繕っても、もう遅い。青島は、相当引いた目で俺を見ている。

「おい、気持ち悪いだなんて失礼だぞ」

駿介が庇うように俺を引き寄せた。

「だってこいつさ、時々ニヤニヤして仲良さそうな奴らを見てるんだぜ。キモイだろ?」
「キモイ言うな! 誰だって仲良さそうなのを見たら幸せになるじゃんか!」
「……程度だ」

呆れたような青島の声に、駿介が表情を止めた。

「……それについては俺も、少し気になってたけどな。俺といるときも、時々ニヤニヤしながらよそ見してるし」

!!

「だろ? こいつ、仲良さそうといえば聞こえはいいけど、見ようによってはイチャイチャしている奴らを見ては、ニヤニヤしてるんだぞ」
「そ、そんなことは……」
「――あ、あいつらキスしようとしてる」
「えっ、どこどこ? ……あっ!」

あまりにも分かりやすい青島の誘導にさえ、引っ掛かってしまった。青島は爆笑し、駿介は忍び笑いをしている。

うう……。

「変な趣味だよな、お前」
「だって……」

チラリと駿介を窺った。呆れを通り越して、幻滅されたらどうしよう。

「可笑しな趣味だとは思うけど、喧嘩してる奴らを見て楽しんでいるよりはいいんじゃないか?」
「まあ、それはそうだな」
「駿介……」

なんて心の広い奴。もっと引かれるかと思ったのに。

「てことはだ、ここでキスしても構わないってことだよな」

そう言いながら駿介が、俺の肩を抱き寄せ顎を捉える。

「ばっ、違うよ! 見られるのが趣味じゃなくて見るのが趣味なの!」

そう叫ぶ俺に、駿介と青島は爆笑した。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

処理中です...