腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました

くるむ

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第四章

今はさ。

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「みんな集まってどうしたんだ?」
「駿介!」

うわ~、危なかったぁ。なんていいタイミング。

「何でもない。そろそろ駿介出番なのに、大丈夫かなって心配してた」
「ああ、悪い」

俺の誤魔化しに青島が一瞬微妙な表情をしたけど、あえて流した。

「で、東尾は折れたのか?」
「なんとかな。て言うか、あいつ、自分の意見が通らないって駄々捏ねてただけだから」

駿介の言葉に、ため息が出た。
この世界の3割くらいは、何らかの形で駿介に好意を持っている。それは総てが恋愛感情ではないけれど、独占欲に近いものを持っている奴が多いんだ。

だけどそれでも俺があんまり嫌がらせに合う事が無いのは、駿介がそれとなく俺が恋人だとアピールしてくれておまけに超過保護だからだ。青島も目を光らせてるし……。

うん、二人にはホント感謝しなくっちゃ。

「二年の100m走の人は前に出て来て下さい」

実行委員が声を掛けてきた。駿介がスッと立ち上がる。

「じゃあ、行って来る」
「頑張って」
「一着でゴールしろよ」
「頑張れ」

みんなの様々なエールを受けて、駿介は手を振り走って行った。

「あ~、何だかドキドキして来た」
「大丈夫だよ。あいつ、めちゃくちゃ運動神経いいから。――ムカつくくらい」

そう言って口を尖らす樹はやっぱり可愛い。

これだよな、主人公は。

もちろんこの世界で樹は駿介以上に人気があって、おそらく四割くらいは彼に恋愛感情を持っているだろう。ただ樹を好きな人たちは気持ちを隠す奴が多くて、表には出てこないから目立たないだけで。

ドッとどよめきが沸き起こった。駿介達がスタートラインに立ったからだ。
駿介を呼ぶ甲高い男の声が聞こえてくる。

焼き餅焼く前に笑ってしまった。
リアルだったら本当は、もっと野太い声なんじゃないのか?

「谷口は相変わらず格好つけだな」

樹が俺の隣で呆れたように呟いた。
確かに。駿介よりも派手ににこやかに手を振っている。だけどそんなもの、どうだっていい。

「駿介ー、頑張れー!」

周りの声援に負けじと俺も大声を張って手を振った。
その声に気が付いた駿介が、こちらを振り向き俺と目を合わせて優しくニッコリと微笑む。

ああ~、やっぱり好きだなあ。

嫉妬の視線はやっぱりグサグサ突き刺さるし、考えなきゃならない事はあるんだろうけど、それでも俺は駿介とのこういう時間を大切にしたいと思ったんだ。
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