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俺を見て?
番犬2人
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「シロ、クロ!」
昼休み。
礼人が廊下から、俺らの名前を大声で呼び手招きした。
手には持参の弁当箱。
「何? 礼人、大声出して」
「鍵と弁当持って、ちょっと待ってて」
そう言って、俺に鍵と弁当を無理やり渡す。
「ちょっと、礼人?」
「とにかく、待ってろ!」
言うだけ言って、礼人はまたどこかに走り去っていった。
何なんだ、あいつ?
振り返って陸を見ると、彼も訝しそうに礼人の走り去って行った方を見ていた。
待つこと数分。
礼人は千佳に剛先輩まで連れて来ていた。
「待たせたな、行こうぜ」
俺にありがとうと言って、さっきの弁当と鍵を引き取った。
「なんなんだよ、礼人。俺は千佳と二人で昼飯食べたいんだけど」
剛先輩は千佳の肩を抱きながら、不機嫌さを隠そうともしない。
まあ、そうだよな。剛先輩は千佳にべたぼれだ。
それどころか、下手に千佳にちょっかいを出そうものなら、容赦しないという態度で威嚇にかかるものだから、密かに「番犬」とも呼ばれていたりする。
「もー。さっきからグチグチおんなじ事ばっか言わないで下さいよー。俺は先輩と二人ってのも凄く楽しくて好きですけど、たまにはみんなと一緒でも良いなって思いますよ?」
千佳はしっかり者の甘え上手だ。剛先輩の手綱をしっかり握っていて、コントロールするのが凄く上手いんだよな。
今だって彼は剛先輩に腕を絡ませて、上目づかいで先輩に甘え口調だ。
剛先輩はしばらく不本意な感じでぶちぶち言っていたけど、結局は千佳の"お願い"に負けて俺らと一緒に礼人の後を付いてきているんだから大したものだと思う。
だから俺らの間では、千佳は猛獣使いと呼ばれてたりするんだ。
「着いたよ。ここ」
俺らが通う私立聖徳学園は歴史は浅く、まだ開校してから今年で9年目だ。
この部屋は当初、茶道や日本舞踊のためにと設けられた部屋で、実際2年前までは日本舞踊部の部室として使われていたようなのだが、入部希望者が少なくて現在は廃部になっている。
その為現在この部屋は、換気や保全のために週一回の清掃だけは続けられている状態だ。
「ここを読書同好会の場所にさせてもらった。その代り清掃は俺らでやる事になったけど、それくらいは良いだろ?」
礼人は鍵を開けて、どうぞとみんなを促した。
「へえ…。始めて来たな。結構広いんだね、ここ」
「どうよ? 良い作りだろ。ちなみにあそこにドアがあるだろ。そこ、座布団とかがしまわれてるんだけど、いちゃつく分には差し障りの無い広さだから、剛先輩もクロも、相方といちゃつきたかったら思う存分にどうぞ…っ、てっ!」
礼人が足を抑えて痛そうに蹲る。
どうやら陸が、容赦なく蹴り飛ばしていたようだ。
「なんだよ、クロ! いてーだろうが!」
「お前が変な事を言うからだろ」
「あぁ? 何、まだ付き合って無いのかよ、お前ら」
呆れたような口調で言いながら、礼人が俺らを交互に見る。俺はそれに何も言えなくて、微妙に笑い返すにとどめた。
「…誰もそんなこと言ってないだろ」
うっかりすると聞き逃しそうな小さな声で、どこか気まずげに陸が呟いた。
その陸の言葉に、小さくコトンと心臓が揺れる。ぽつりとつぶやく言の音に、俺への気持ちが潜んでいるような気がしたから…。
俺は、祈るような気持ちでそっと陸を窺い見た。
少しでもその気持ちの片鱗を確かめたかったからだ。
だけど俺のそんな気持ちを知りもしない礼人は、更なる言葉で陸を怒らせてしまう。
「なんだよ、恥ずかしがってただけか。お前さー、剛先輩と同類なんだから、もうちょっと素直に開き直って…イデッ!」
また陸の足が礼人の腿を蹴飛ばした。
そしてさっきの、少しだけ動揺した陸の表情は完全に消えて、いつもの無表情な顔で弁当の包みを開け始める。
「お前っ!足癖悪すぎだろ!」
「今のは礼人が悪いよー。クロは剛先輩と違ってシャイなんだからさ、もうちょっと発言には気を付けないと」
涙目で、痛そうに足をさする礼人に千佳がのんびりと窘める。
甘え上手でしっかり者の千佳は、俺らのマスコット的存在で、こういう時、千佳の存在に本当に助けられてると思う。
「だけどさー」
もぐもぐと弁当を食べながら、場の空気をものともせずに(いや、もしかしたら考えての発言か?)剛先輩が、礼人に話しかけた。
「お前、何でわざわざ読書同好会なんて申請したんだ? お前ならサッカー部とかテニス部とか、もっと華やかな所が合ってるんじゃねーの? 何もこんなあっても無くても構わない同好会なんか作らなくてもさ」
剛先輩のもっともな質問に、礼人も自分の弁当の包みを開け、箸を手に持つ。
「面倒臭ぇんですよ、そんなトコ。体動かしたいんなら、ランニングメニューでも作りますか?」
「読書同好会がランニングかよ。別に俺は特にしたい事があるわけじゃないから、千佳がいるなら文句はないから別に良いんだけどよ」
「そうですか。じゃあ、止めときます。最初は図書館から本を借りてきて読んだり、自分なりのお薦めの本があったら紹介し合ったりしましょう。それと一応同好会費として五千円は支給されるようですから、図書館に無くて欲しい本があったら購入しても良いですし、小説ゆかりの地を訪ねるプチ旅費に使っても良いですね」
「プチ旅費!? そんな使い方もありなの?」
「ありなんじゃねーの? ただし、五千円しかないからな。ホントにプチのプチだぞ。後は自腹だ」
「ふうん。じゃあ、バイトでもして稼がないとだめだね」
ウインナーをぱくりと頬張り、千佳が思案顔を見せる。
「バイト? 千佳がそんなことをするな! 読書同好会なんてな、本を読んでいればいいんだよ!」
案の定、千佳に激甘の先輩は猛反対だ。
それから二人はなんだかんだと甘々タイムに突入した。
そんな二人を陸は冷やかに、礼人は微笑ましそうに見ている。
そしてとりあえず、今日からこの部屋で活動をする事を決めて、昼休みを終えたのだ。
昼休み。
礼人が廊下から、俺らの名前を大声で呼び手招きした。
手には持参の弁当箱。
「何? 礼人、大声出して」
「鍵と弁当持って、ちょっと待ってて」
そう言って、俺に鍵と弁当を無理やり渡す。
「ちょっと、礼人?」
「とにかく、待ってろ!」
言うだけ言って、礼人はまたどこかに走り去っていった。
何なんだ、あいつ?
振り返って陸を見ると、彼も訝しそうに礼人の走り去って行った方を見ていた。
待つこと数分。
礼人は千佳に剛先輩まで連れて来ていた。
「待たせたな、行こうぜ」
俺にありがとうと言って、さっきの弁当と鍵を引き取った。
「なんなんだよ、礼人。俺は千佳と二人で昼飯食べたいんだけど」
剛先輩は千佳の肩を抱きながら、不機嫌さを隠そうともしない。
まあ、そうだよな。剛先輩は千佳にべたぼれだ。
それどころか、下手に千佳にちょっかいを出そうものなら、容赦しないという態度で威嚇にかかるものだから、密かに「番犬」とも呼ばれていたりする。
「もー。さっきからグチグチおんなじ事ばっか言わないで下さいよー。俺は先輩と二人ってのも凄く楽しくて好きですけど、たまにはみんなと一緒でも良いなって思いますよ?」
千佳はしっかり者の甘え上手だ。剛先輩の手綱をしっかり握っていて、コントロールするのが凄く上手いんだよな。
今だって彼は剛先輩に腕を絡ませて、上目づかいで先輩に甘え口調だ。
剛先輩はしばらく不本意な感じでぶちぶち言っていたけど、結局は千佳の"お願い"に負けて俺らと一緒に礼人の後を付いてきているんだから大したものだと思う。
だから俺らの間では、千佳は猛獣使いと呼ばれてたりするんだ。
「着いたよ。ここ」
俺らが通う私立聖徳学園は歴史は浅く、まだ開校してから今年で9年目だ。
この部屋は当初、茶道や日本舞踊のためにと設けられた部屋で、実際2年前までは日本舞踊部の部室として使われていたようなのだが、入部希望者が少なくて現在は廃部になっている。
その為現在この部屋は、換気や保全のために週一回の清掃だけは続けられている状態だ。
「ここを読書同好会の場所にさせてもらった。その代り清掃は俺らでやる事になったけど、それくらいは良いだろ?」
礼人は鍵を開けて、どうぞとみんなを促した。
「へえ…。始めて来たな。結構広いんだね、ここ」
「どうよ? 良い作りだろ。ちなみにあそこにドアがあるだろ。そこ、座布団とかがしまわれてるんだけど、いちゃつく分には差し障りの無い広さだから、剛先輩もクロも、相方といちゃつきたかったら思う存分にどうぞ…っ、てっ!」
礼人が足を抑えて痛そうに蹲る。
どうやら陸が、容赦なく蹴り飛ばしていたようだ。
「なんだよ、クロ! いてーだろうが!」
「お前が変な事を言うからだろ」
「あぁ? 何、まだ付き合って無いのかよ、お前ら」
呆れたような口調で言いながら、礼人が俺らを交互に見る。俺はそれに何も言えなくて、微妙に笑い返すにとどめた。
「…誰もそんなこと言ってないだろ」
うっかりすると聞き逃しそうな小さな声で、どこか気まずげに陸が呟いた。
その陸の言葉に、小さくコトンと心臓が揺れる。ぽつりとつぶやく言の音に、俺への気持ちが潜んでいるような気がしたから…。
俺は、祈るような気持ちでそっと陸を窺い見た。
少しでもその気持ちの片鱗を確かめたかったからだ。
だけど俺のそんな気持ちを知りもしない礼人は、更なる言葉で陸を怒らせてしまう。
「なんだよ、恥ずかしがってただけか。お前さー、剛先輩と同類なんだから、もうちょっと素直に開き直って…イデッ!」
また陸の足が礼人の腿を蹴飛ばした。
そしてさっきの、少しだけ動揺した陸の表情は完全に消えて、いつもの無表情な顔で弁当の包みを開け始める。
「お前っ!足癖悪すぎだろ!」
「今のは礼人が悪いよー。クロは剛先輩と違ってシャイなんだからさ、もうちょっと発言には気を付けないと」
涙目で、痛そうに足をさする礼人に千佳がのんびりと窘める。
甘え上手でしっかり者の千佳は、俺らのマスコット的存在で、こういう時、千佳の存在に本当に助けられてると思う。
「だけどさー」
もぐもぐと弁当を食べながら、場の空気をものともせずに(いや、もしかしたら考えての発言か?)剛先輩が、礼人に話しかけた。
「お前、何でわざわざ読書同好会なんて申請したんだ? お前ならサッカー部とかテニス部とか、もっと華やかな所が合ってるんじゃねーの? 何もこんなあっても無くても構わない同好会なんか作らなくてもさ」
剛先輩のもっともな質問に、礼人も自分の弁当の包みを開け、箸を手に持つ。
「面倒臭ぇんですよ、そんなトコ。体動かしたいんなら、ランニングメニューでも作りますか?」
「読書同好会がランニングかよ。別に俺は特にしたい事があるわけじゃないから、千佳がいるなら文句はないから別に良いんだけどよ」
「そうですか。じゃあ、止めときます。最初は図書館から本を借りてきて読んだり、自分なりのお薦めの本があったら紹介し合ったりしましょう。それと一応同好会費として五千円は支給されるようですから、図書館に無くて欲しい本があったら購入しても良いですし、小説ゆかりの地を訪ねるプチ旅費に使っても良いですね」
「プチ旅費!? そんな使い方もありなの?」
「ありなんじゃねーの? ただし、五千円しかないからな。ホントにプチのプチだぞ。後は自腹だ」
「ふうん。じゃあ、バイトでもして稼がないとだめだね」
ウインナーをぱくりと頬張り、千佳が思案顔を見せる。
「バイト? 千佳がそんなことをするな! 読書同好会なんてな、本を読んでいればいいんだよ!」
案の定、千佳に激甘の先輩は猛反対だ。
それから二人はなんだかんだと甘々タイムに突入した。
そんな二人を陸は冷やかに、礼人は微笑ましそうに見ている。
そしてとりあえず、今日からこの部屋で活動をする事を決めて、昼休みを終えたのだ。
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