近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

心も体も3

何度も、何度も、唇を押し当てるだけのキス。
まるで形を確認しているかのように、角度を変えて優しく強く押し当てられた。
陸とのキスはいつも性急で荒々しい物ばかりだったから、こんなキスはこそばゆいと同時にじれったかった。
強請るように、きゅっと陸を掴む腕に力を入れる。
すると陸も、俺の背を抱く腕の力を強めて、するりと舌を潜らせてきた。
歯列をなぞり頬の粘膜を確かめるように何度も何度もゆっくり撫でて、やがて俺の舌先にちょんと触れる。

あまりにも丁寧な愛撫に、陸の気持ちが伝わって来て泣きたくなる。

二人で――
陸がそう言ってくれてるようで、素直にうれしいと思った。

次第に絡めあう深度が増し、息継ぎも苦しくなる。堪らなくなってギュッとシャツを握りしめたら、それに気が付いたのか陸がゆっくりと唇を離した。

「り…く」

吐息交じりに名前を呼ぶと、それに応えるかのように、また唇を重ねてきた。
啄むように何度も何度も、角度を変えて…。

ボーッとして体の力が抜けてきたところで、陸の唇が俺の首筋に移った。ピクンと揺れる体。
陸はまるで俺の首筋を味わうようにぺろりと舐めた。

「…汗の味がする」

カーッと顔が熱くなった。

「な、舐めんなよ!汚いっ」

陸を押し離そうと腕に力を籠める。
だけどそれよりも更に強い力で、陸に抱きしめられた。

「汚くなんかないよ。水の味だろ?」
「バ…バカ言うなっ」

嬉しそうに俺を見つめる陸。あんなに俺に近づきすぎるのを躊躇していた今までとのギャップに、俺の頭がなかなかついてこれずにいた。

「り…く、あの…」
「抱きたい…。良いん…だよな? 水」

「あ…」

真剣な目で俺を見る陸に、心臓が忙しなくなる。
目を合わすのが恥ずかしくなった俺は、陸のシャツをギュッと握って、コクリと頷いた。

頷いた途端、体がふわりと宙に浮く。え!?と思ったら、陸の顔が目の前にあった。

…お、お姫様抱っこ!?

「り、陸…。ちょっと…!」

焦って呼び止める俺に、ベッドに向かって歩きかけていた陸の足が止まる。

「なに…?」

陸の表情に少し、不満の色が見て取れた。俺が「やっぱり怖いからやめろ」と言うとでも思ったんだろう。
そんなこと言うわけないのに。

「あ、汗流したい。シャワー先に浴びさせて?」
「……」

一瞬表情を固めた陸が、目をパシパシと瞬いた。
そして口角をゆっくりと上げる。

……何だよ?

今度はこっちが固まって、陸を見上げていると更に楽しそうに微笑んだ。

「分かった。連れてってやるよ」

そう言って、踵を返して陸は浴室へと方向を変えた。

「ちょ、ちょっと待て。歩けるからっ。下ろして陸」
「いいよ。一緒に入ろう。俺も汗流す」

い、一緒!?
ちょっと待て! 今までのあのストイックな陸はどこ行った!
いや、戻ってもらっても困るけど…っ!

焦ってアワアワしている俺を横目に、陸がポソッと呟いた。

「…我慢しないことにした。水が絶対に嫌な事はしないけど。…我慢して、後々爆発するんならなんの意味もないんだって、今頃だけど気づいたから」

そして俺の顔をじっと見る。

「いやか? 水」

「り、陸…」

じっと俺の顔を見つめて、その目を逸らさない陸。期待なのか緊張なのか、心臓がバクバクして来た。

「…そんな言い方ずるいよ陸」


ポツリと呟く俺に、陸が目を細めて笑った。俺の大好きな顔だけど……。


俺は、お姫様抱っこをされたままだったりする。 
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