近くにいるのに君が遠い

くるむ

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俺に触れて?

それから…1

陸も俺もシャワーから出て、朝食が済んだらすぐに出られるようにと荷物を整理した。
あらかた片付け終わって時計を見ると、皆で朝食に行こうと言っていた8時まで、まだ1時間以上時間があった。

「…眠くないか?」

「うん、そうだな…。少し」

エアコンが利いて心地いい温度の上、夕べさんざん啼かされていた俺は、やっぱり気怠くて布団がすごく恋しかった。

「だよな」

少し満足そうに、だけどちょっと照れたような顔をして、陸が頷いた。

可愛い…。

あ~、もう俺も末期だよな。
こんな状態の陸を見て、自分が色々された上での表情だって分かっていながら陸を可愛いと思うだなんて…。


「ほら、水」

一人で思いに浸っていると、陸がベッドをポンポンと叩いていた。
…て、いつの間にか陸はベッドに仰向けに寝転んでいる。

「起こしてやるから寝てろよ。腕枕…、してやるから」
「…え」

陸の頬は少し赤くなってはいるけど、真顔だ。昨日脱皮した陸は、そのまま羽化しようとしていた。
羽化して、そのまま俺を連れて羽ばたこうとしてくれている。


「うん」

もしかしたら気づいてくれていたのかな。

陸にこんな風にずっと甘えたいと思っていた。甘え上手な千佳を羨ましいと思っていた。
だけどそれが恥ずかしくて怖くて出来ない、そんな不器用で臆病な俺の気持ちを…。


陸の腕に頭を乗っけて寝転ぶと、抱きしめるようにもう片方の腕を俺の背に回してくれた。

恥ずかしいけど嬉しい俺は、陸のシャツをキュッと握ってしばしの眠りへと落ちて行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「…ても、……だから」
「だから、………だろ」

「う…ん」

遠くから聞こえていた声がだんだん近づき大きくなる。
寝返りを打って目を開けると、陸は俺を腕枕したまま千佳と剛先輩と喋っていた。

「あ、シロ起きた!」

「ああ…。起きちまったか。大丈夫か?眠くないか?」
「…ん、うん…?んー…、さっきよりは…」

陸の問いかけにぼんやりする頭で返事をしていたけど、覗き込む千佳と剛先輩の姿に一気に目が覚める。
…っ。い、今の状況!
慌ててガバリと身を起こして時計を見る。もうすでに8時を少し回っていた。

「ごめん! 寝坊しちゃった」

慌てて手櫛で髪を整えてベッドから降りようとする俺に、千佳が手で制した。

「シロ、そんな慌てなくてもいいよ。遅いから呼びに来たってのもあるんだけど…。ちょっと心配でもあったからさ」
「千佳…。……うん、ありがと」

千佳の柔らかい笑顔と優しい言葉に、胸がじんとなった。その隣で陸は、またいつものように無表情に戻っていた。

「…まあ、確かに気を遣わせて悪かったよ。だけど水を手放す気はないから、要らん心配はするな」
「陸…」

「うわー、可愛くないなぁ。まあ、クロらしいっちゃあ、そうなんだけど」

「さ、そろそろ行くぞ。要たちを待たせてるんだ。お前らもう、出れるんだろ?」

剛先輩の言葉で今の状況を思い出した俺たちは、カギを手に慌てて部屋を出た。 
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