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第四章

気になる二人

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教室に入ると笹山たちはすでに来ていて、真剣に教科書と睨めっこをしている。どうやら本気で成績を少しでも上げたいと思っているようだ。
まあ、笹山たちに限らず他のみんなも同じような状態なんだけどね。
だけど日暮だけは、やっぱりどこか雰囲気が違っていた。余裕しゃくしゃくというか、いつも通りというか……。日ごろから怠けている僕らとは違う人種なんだろう。


★★★★★★★★★★★★★★


怒涛の学年末考査が終わり、やっと一息ついた。みんなそれなりに頑張ったので、まずまずの結果が返って来てホッと一安心といったところだ。

もちろん僕もその中の一人だったりするんだけど、晴れ晴れとしたみんなと違いまだモヤモヤすることが残っている。
そう、使い魔の件だ。見えない不安という事もあるのだけどそれだけじゃなくて、少々欲求不満に陥っている。

ロベールは時々僕の様子を窺いに部屋にやってきてはくれるんだけど、泊っていくことはあれ以来無くって、僕としてはちょっぴり不満なんだ。
だってさ、キスすらもまともにしてくれないんだよ? 暗に僕が強請ったら、やっと可愛いバードキスを一回してくれてそれっきり。甘えて抱き着きたい気分になっても、「煽るな」の一言で却下。
これって酷くない?
ただ抱きしめてもらって、髪とか撫でてもらうだけで僕としては十分満足だし。キスだって、ほんのちょっとだけ甘いキスをしてくれたらそれだけで満足なのに……。

「はあっ」

……まあ、分かってはいるんだけどさ。
ロベールは僕と違ってそれだけで満足できるガラじゃないし、僕のフェロモンが溢れ出して止まらなくなるくらい僕にアレコレしたくなる奴なんだって事くらい、分かってはいるんだけど……。

窓際で頬杖を突きため息を吐いていると、視界の隅に廊下の奥の方にいる笹山と日暮の姿が見えた。

あれ?
二人でいるなんて珍しいな。なに話してんだろ?

ちょっぴり興味を引かれたので彼らの方を覗いてみると、なんだか揉めてるように見えた。珍しく不満そうな表情をした日暮が、笹山の腕を掴んでいる。

「……珍しいな」
「なに? 何が珍しいって?」

僕の独り言に気が付いた奏多が席を立って、僕が見ている方向に視線を向けた。

「あれ? 日暮じゃん。あっ」

笹山が掴んでいる日暮の手をパシッと振り払って、切れた表情で何かを言い返していた。だけど日暮はそんな笹山に臆することなく、さらに笹山の腕を掴んで強引に踊り場の方へと向かい、僕らの視界から消えてしまった。

「バカヤロウ!」

切れて叫んだ笹山の声が聞こえてきた。と同時に怒った表情で笹山がこちらに向かって歩いて来る。

「……ありえねえ! 何考えてんだ、あいつ!」

ドカドカと荒い足取りのその様子とは裏腹に、笹山の顔は赤くなっていた。
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