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018-025 正義の戦いとはズレがある
022 俺はこんな戦い望んでいない
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「あの姿は……まさか! 隊長!!」その仲間の声を聞き、空中戦で剣を振っていた隊長が降りてきた。頑丈そうな鎧を身につけていても、しなやかに動ける男だった。
「……この村に入る前、悪いものを感じていた。それを放っていたのがアレだ。今は女に成り済ましているが騙されるなよ。その実態はヘイト。ブラッドガローになって人々を襲う!!」
隊長の後ろでトリオも敵対姿勢を構えた。そこに俺の入れる場所は無いが、この戦いをどうにか止めたくて隊長の近くへ俺は駆け寄る。
「やめろ! 彼女は敵じゃない!」
俺が視界に現れると、隊長は「君が転生者か」と余裕のある表情を見せた。
「君も我々と一緒に戦ってくれ。ブラッドガローは強敵だ。味方はひとりでも多い方が助かる」
「ふんっ」と隊長が俺に手をかざすと、何も持っていなかった俺の手に鉄製の剣が握られた。それがあまりに重くて落としそうになり、その隙に彼らは揃って空中へ飛び出す。
「ま、待てって!」
俺は戦いのいろはを知らない。剣の握り方だって知らない。頭上ではルリアが五人の戦士に追われていた。これは俺が思っていた戦いと全然違う。
「一旦止まってくれ! 相手にお前らが懸念するような攻撃性は無いはずだ! 今だって逃げているだろう!?」
地面から叫ぶ俺の声が届いたのか、一時彼らは彼女を追うのをやめた。しかし理由はそうではなく、先に戦っていた副隊長が奇策を得たからだった。
「あの姿では逃げるだけだ。一度ブラッドガローになってもらおう。そうすれば嫌でも戦える」
その案を仲間の四人は了解する。副隊長は短い詠唱と共に唱えた。その魔法は太陽神の力を得る。
「レグネグド・ダ・ルミナス!!」
初めて目の当たりにした大きな魔法だった。オレンジ色の大魔法陣の上に、太陽神レグネグドが降臨した。
太陽神が四本の手で円を描く。そこから目を覆いたくなるほどの眩しい閃光が四方へと発射された。たちまち洞窟内は昼のように照らされた。
「うう……うああっ!!」
光が現れ、彼女は苦しみもがいている。
「ルリア!!」
光に焼かれるルリアはたちまち黒くなった。痩せ細って美しい髪もなくなった。爪や牙が鋭利になると、憎しみの獣声で大きく咆哮した。
「シャオオオオッッ!!」
あの時聞いた声と同じだ。
凶暴化したルリアは、逃げることをせず戦士たちに立ち向かう。素早い動きとタフさで一対一なら彼女が勝ちそうだ。だが、この場は一対五。太陽神だって戦士側に付いている。
だったら勝つ方はもう分かるだろ! 光の魔法が当てられ、二本の刃が切り裂いた。弓も片手剣も同時攻撃なら直撃だ。
「止めだああっ!!」
最後のひと突きは隊長の攻撃。当たらないでくれと願ったって当たる。
「う……うう……はあ。はあ」
ポタリポタリと血が滴った。隊長の剣は俺を刺していた。俺の首にはルリアが噛みついていた。どうしてかは分からない。俺はルリアの盾になり、隊長の盾にもなったのか。
まずはこの手から、使えず仕舞いだった剣が落ちる。それから俺自身が落ちる。どしゃりと高い空中から落ちた。なんでそんな高い場所へ俺が飛べたのかも思い出せない。
助けたい。殺さないでくれ。争わないでくれ。大事な人なんだ。戦わないでくれ。誤解している。あの君に戻ってくれ。
……いろんな思いが交錯した結果だな。
「……この村に入る前、悪いものを感じていた。それを放っていたのがアレだ。今は女に成り済ましているが騙されるなよ。その実態はヘイト。ブラッドガローになって人々を襲う!!」
隊長の後ろでトリオも敵対姿勢を構えた。そこに俺の入れる場所は無いが、この戦いをどうにか止めたくて隊長の近くへ俺は駆け寄る。
「やめろ! 彼女は敵じゃない!」
俺が視界に現れると、隊長は「君が転生者か」と余裕のある表情を見せた。
「君も我々と一緒に戦ってくれ。ブラッドガローは強敵だ。味方はひとりでも多い方が助かる」
「ふんっ」と隊長が俺に手をかざすと、何も持っていなかった俺の手に鉄製の剣が握られた。それがあまりに重くて落としそうになり、その隙に彼らは揃って空中へ飛び出す。
「ま、待てって!」
俺は戦いのいろはを知らない。剣の握り方だって知らない。頭上ではルリアが五人の戦士に追われていた。これは俺が思っていた戦いと全然違う。
「一旦止まってくれ! 相手にお前らが懸念するような攻撃性は無いはずだ! 今だって逃げているだろう!?」
地面から叫ぶ俺の声が届いたのか、一時彼らは彼女を追うのをやめた。しかし理由はそうではなく、先に戦っていた副隊長が奇策を得たからだった。
「あの姿では逃げるだけだ。一度ブラッドガローになってもらおう。そうすれば嫌でも戦える」
その案を仲間の四人は了解する。副隊長は短い詠唱と共に唱えた。その魔法は太陽神の力を得る。
「レグネグド・ダ・ルミナス!!」
初めて目の当たりにした大きな魔法だった。オレンジ色の大魔法陣の上に、太陽神レグネグドが降臨した。
太陽神が四本の手で円を描く。そこから目を覆いたくなるほどの眩しい閃光が四方へと発射された。たちまち洞窟内は昼のように照らされた。
「うう……うああっ!!」
光が現れ、彼女は苦しみもがいている。
「ルリア!!」
光に焼かれるルリアはたちまち黒くなった。痩せ細って美しい髪もなくなった。爪や牙が鋭利になると、憎しみの獣声で大きく咆哮した。
「シャオオオオッッ!!」
あの時聞いた声と同じだ。
凶暴化したルリアは、逃げることをせず戦士たちに立ち向かう。素早い動きとタフさで一対一なら彼女が勝ちそうだ。だが、この場は一対五。太陽神だって戦士側に付いている。
だったら勝つ方はもう分かるだろ! 光の魔法が当てられ、二本の刃が切り裂いた。弓も片手剣も同時攻撃なら直撃だ。
「止めだああっ!!」
最後のひと突きは隊長の攻撃。当たらないでくれと願ったって当たる。
「う……うう……はあ。はあ」
ポタリポタリと血が滴った。隊長の剣は俺を刺していた。俺の首にはルリアが噛みついていた。どうしてかは分からない。俺はルリアの盾になり、隊長の盾にもなったのか。
まずはこの手から、使えず仕舞いだった剣が落ちる。それから俺自身が落ちる。どしゃりと高い空中から落ちた。なんでそんな高い場所へ俺が飛べたのかも思い出せない。
助けたい。殺さないでくれ。争わないでくれ。大事な人なんだ。戦わないでくれ。誤解している。あの君に戻ってくれ。
……いろんな思いが交錯した結果だな。
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